※このレビューは
2015年の単行本読了時のものです。
文庫版が発売されたので修正投稿しました。
文庫の解説はつんく♂さんが書いています。
アイドル業界を描いた小説として
今すごく取り上げられている小説。
「王様のブランチ」でも
紹介されたこの本。
『武道館』
朝井リョウ(単行本2015年/文庫2018年)
![]() | 武道館 (文春文庫) 724円 Amazon |
まず作者の朝井リョウ氏の言葉を紹介。
“「【アイドル】という職業が背負う十字架を、一度すべて言葉にしようと思いました。
すると、不思議と、今の時代そのものを書き表すような作品になりました」”
(単行本の)帯にはつんく♂氏の言葉。
“「アイドルって作るものでなく、楽しむものである方が良いに決まってる。
なのに、著者はこうやってアイドルを生み出す側にチャレンジした。
それも文学の世界で……。なんたる野望。なんたるマニアック。なんたる妄想力」”
そして本の紹介文がこれ。
“【正しい選択】なんて、この世にない。
結成当時から、「武道館ライブ」を合言葉に活動してきた女性アイドルグループ「NEXT YOU」。
独自のスタイルで行う握手会や、売上ランキングに入るための販売戦略、一曲につき二つのパターンがある振付など、さまざまな手段で人気と知名度をあげ、一歩ずつ目標に近づいていく。
しかし、注目が集まるにしたがって、望まない種類の視線も彼女たちに向けられる。
「人って、人の幸せな姿を見たいのか、不幸を見たいのか、どっちなんだろう」
「アイドルを応援してくれてる人って、多分、どっちもあるんだろうね」
恋愛禁止、スルースキル、炎上、特典商法、握手会、卒業……
発生し、あっという間に市民権を得たアイドルを取り巻く言葉たち。
それらを突き詰めるうちに見えてくるものとは――。
「現代のアイドル」を見つめつづけてきた著者が、満を持して放つ傑作長編!!”
この紹介文だけで「読みたい」と思ったら
是非読んでください。
アイドルファンでもアンチでも構いません。
きっと明日から
アイドルに対する見方が変わりますよ。
あらすじ
小さい頃から
歌って踊ることが大好きな少女。
日高愛子。
同じマンションの上の階に住んでいる
剣道一筋の同級生・大地とは
幼馴染で家族ぐるみの付き合いだった。
数年後
愛子の両親は離婚して、
出て行く母の方ではなく
愛子は父のもとに残る。
そして中学生最後の年に
昔から憧れていた
アイドルのオーディションに合格し、
「NEXT YOU(ネクストユー)」 の
一期生メンバーとしてデビューした。
1年後、
「NEXT YOU」はWセンターの一人、
尾見谷杏佳(おみたにきょうか)が卒業を発表し、
6人から5人になる。
みんなで武道館へ行こうと言ったのは
杏佳だったのに・・・
残されたセンターの
堂垣内碧(どうがきうちあおい)は
クールな美少女で
杏佳の卒業時も泣かなかった。
歌もダンスも上手く、
女優としてもテレビに出て
エースへと成長していく。
メンバーの中でもぽっちゃりした
安達真由は
ネット上で体型に対する批判があり、
いつもそれを気にしていた。
水着グラビアだと特にそれが顕著になり、
「デブまゆ」と容赦ない声が。
真由はそれをバネにバラエティで
活路を見出すことになる。
リーダーの坂本波奈は
最年長のまとめ役。
アニメ好きという趣味があり、
テレビに「アニメが好きすぎるアイドル」
として出演するが
違法アップロードのアニメを見ていた証拠が
そこに映ってしまったため、
炎上してしまう。
芸歴の長い波奈は
上手くスルーしているが
内心は傷ついていた。
最年少の鶴井るりかは
泣き虫で元気いっぱいの14歳。
ダンス歴が長く
握手会も釣り師の対応で
アイドルとしてストイックに
成長していく。
「NEXT YOU」は
「席替え」という
教室の隣の席を再現した握手会で
一躍、話題を集め、
水曜発売ではなく月曜にCDを発売し、
オリコンデイリーのトップテン入りする
やり方で知名度を上げた。
曲の振り付けを
「歌詞に沿った」振りから
「音に沿った」振りに変え、
ひとつの曲に2種類の振り付けにして、
積極的にミニライブを行い、
徐々に人気を獲得していった。
高校三年になった愛子。
彼女の中で
大地の存在が大きくなっていく。
18歳になった夜、
愛子はついにアイドルとしての
自分ではなく
一人の人間として
過ちを犯してしまう。
自分は将来どうなりたいのか?
みんなの夢だった武道館。
夢の舞台を目前に
バラバラになっていくメンバーの心。
本当の幸せとは?
正しい選択とは?
そして、
愛子の決断は……
解説
新人アイドルグループ「NEXT YOU」が
夢である日本武道館に立つために
悩みながら葛藤していく姿を
主人公・愛子の視点で描く、
アイドル界を舞台にした青春物語。
作者の朝井リョウ氏は
2009年『桐島、部活やめるってよ』で
第22回小説すばる新人賞を受賞してデビュー。
2013年に『何者』で
第148回直木三十五賞受賞した
今注目の若手作家。
自身がハロプロの大ファンと言うだけあって
現代のアイドル界の問題点や
恋愛などのタブーもしっかり描かれている。
愛子というヒロインは
特別綺麗ともダンスが上手いとも描写がなく
いたって普通であり、
素人の女の子が
アイドルになったという印象。
その彼女が幼馴染の男の子を
昔から好きだったという
ありがちなシチュエーションで
アイドルとの両立で悩む姿が印象的だ。
アイドルファンなら
思わずニヤリとしてしまう言葉が
いくつもあるのでご紹介します。
●卒業発表の舞台裏をドキュメンタリー用のカメラが回っている。
●解析班にメンバーの通う学校の制服を特定されないようにダミーの制服に着替えさせられる。
●YouTubeの公式チャンネル「ネクステ」
●アイドルは前髪が動かない、帽子が落ちない。
●週刊誌に熱愛をスクープされた某アイドルが丸刈りで謝罪して話題になる。
●歌割の順番でメンバー内の序列がわかる。
●パワフルなダンスでも止まるところで止まれなかったら台無し。
●ちょっと太ったら「完全終了のお知らせ」とネットで叩かれる。
●「カメラの向こうにいるお客さんを意識しなさい。そうすれば目から光線が出る」と言うダンスの先生。
●大人数アイドルグループの本当に本人たちが歌っているのかさえわからない合唱のような歌声。
●本人たちは絶対食べないような油っこい食べ物のCMを笑顔でする。
●エゴサーチするアイドルたち。
●水曜日ではなく発売日をずらして、オリコンデイリー1位を狙う戦略。
●「NEXT YOU」はランダム握手券商法。
●「NEXT YOU」の握手会は「席替え」風。隣の席に座って手をつなぐスタイル。
●「NEXT YOU」のファンを「ネクス中毒」という。
●「NEXT YOU」はライブを「授業参観」という。
●ささいなことですぐ炎上する。
●情報源は2ちゃんのまとめサイト。
●某アイドルの握手会に刃物を振り回す男が現われ、メンバーとスタッフの3名が負傷する事件。
●アイドルの自己紹介。キャッチフレーズに訓練された合いの手。
●ダンスの路線変更やフォーメーションが話題になる。
●生放送の有名な歌番組に出ることがステータス。
●ライブ中にサプライズ発表がある。
●過呼吸になるメンバー。
●一般人のSNSからスキャンダル発覚。
●候補生となって名前が出た瞬間に、SNSやインスタのアカウントが発見され、学校や彼氏などまで特定される。
これらのキーワードにピンときたら、
もうアイドルファンの仲間入り。
全部この話の中に出てきます。
作者の朝井リョウ氏が
この作品で描きたかったことは
「アイドルが恋愛してもいいじゃないか」
この一言に尽きる。
恋愛擁護派らしい
この結末に賛否両論あるだろう。
それも織り込み済みで
読者に問題提起していると言える。
本編の構成にも
ちょっとした仕掛けがあり
希望のあるエンディングへの
サプライズが読者を驚かせる。
欠点としては・・・
●恋愛肯定派のための物語。
結末は人を選ぶかも。
●AKBがディスられてる。
(口パク、峯岸ネタなど)
●主人公の影が薄い。
登場人物すべて
内面の心理がよくわからない。
とくに碧は最初は
クールなストイックキャラで
出てきたのに……。
●アイドルの現実を通して
恋愛禁止を主題にした内容なので、
アイドルの成長物語的なドラマを
期待していると肩すかし。
俺の感想は・・・
俺はアイドルの恋愛を
肯定したくないので
ちょっと受け入れられなかった。
俺は恋愛否定派。
男と付き合うなら
バレないようにやってくれと
言う奴はいるが
それも俺は違うと思っている。
バレなきゃいいは通用しない。
アイドルという職業を選んだのなら
恋愛禁止は当たり前のこと。
それが嫌なら辞めればいい。
普通の人にできない世界にいるんだから
普通の人と同じことを
望んでも難しいよそれは。
とは言っても、
仕方がない部分はある。
この本はそこの心の脆さを
表現したかったのだろう。
朝井氏はこう語っている。
“ファンの人たちがアイドルに対していろんなことにすごく怒っているのを見て、なんでだろうと思ったのがきっかけのひとつですね。アイドルになる前に彼氏と撮ったプリクラが出てきたとか、そういうことでなぜそんなに怒るの?自覚が足りないとか言ってるけど、その自覚って何?生まれたときから必要なの?アイドルが何をしたって自分の生活は脅かされないのに、なんで?なんで?という疑問がありました。”
握手会などで
アイドルとの距離が縮まりすぎた結果、
疑似恋愛してしまうファンが増えたから
アイドルが誰か一人のモノに
なってしまうのが嫌なんだろう。
あるいは俺のように
ひとつの仕事に集中してほしい
という気持ちかな。
野球選手(アイドル)なんだから
サッカー(恋愛)するなよ、
という感じの。
話変わって・・・
この作品には
名言が結構あった。
“「入り口はなんだっていいわけじゃないよね」「自分が恥ずかしいって思いながらしたことって、絶対、相手にも伝わるの。あいつ恥ずかしがってる、だから笑ってやろうって」「そんな入り口は、絶対に与えてやらない」”(単P.76)
“「自分が恥ずかしいって思いながらしたことで生まれた入り口があるとして、その入り口から入ってきた人と、これからもずっとうまくやっていく自信はないかも」「でも、その入り口を開けたのは私たちでもあるんだから、せっかくならもっともっとステージをがんばって、どの入り口から入ってきた人たちもつかんで離さないようにしたいよね」(文P.91)
これは水着グラビアの
撮影の時の碧のセリフ。
自分が恥ずかしいって思っていたらそれは
見ている読者にも伝わるってこと。
次は、
波奈の炎上を叩くまとめサイトの記事。
それに便乗して
CDにランダム握手券をつけて売る方法を
忌み嫌う人たちのひどいコメントに
愛子が腹を立てる場面。
“読み終えたあと、愛子は、全身の毛穴すべてが噴火口となったように怒ることができた。みんなでこんなにもがんばっているのに、何も知らない人にどうしてこんなことを言われなければいけないのか。こんなふうにあるグループの足を引っ張ることにどんな意味があるのか。(中略)当日買いに興じている人たちの声は、すごく楽しそうだ。それなのに、その現象を外から見ている人たちは、怒る。CDに、CDではないものを付けて売ることに対して、怒る。同じ音楽が入っているCDを何枚も「買わせている」と、まるで大量に買っている人の代表のような顔をして、主張する。ついさっきまで手にしていなかった正義感を、急に手に取り振りまわし始める。”(単P.107/文P.127)
それな。
すげーよくわかる。
CDに握手券がついて
お前は何か困るのかよ?
何が嫌なんだ?
オリコンランキングの記録は
お前らには関係ないことだし、
上手い商売やりやがってという
ただ自分が「気にいらない」ことを
さも正しいことのように
理由をつけて
叩いているだけじゃないのか。
実際CDを大量に買っている人は、
それで自分が納得してる。
無理やり買わせたわけでもない。
俺も握手券は
間違っているとは思わないから
ここは納得できた。
この握手券の話は
大地も同じ意見だった。
“「お金を払うって、自分が何を欲しがっているのか、自分が何だったら満足するのか、すげえ考えるしすげえ選ぶってことじゃん。金も払わないで、何でもある中から手に取り続けてたらさ、そりゃ、自分がどんなヤツかってわかんなくなるよ。金払ってなかったら、期待はずれのモンでも、まあいいかってなっちゃうし、めっちゃ良かったモンでも、ラッキー、くらいだし。どっちも同じくらいの距離にあるっつうか。愛子は、CD売って、いろんな人たちを悩ませてる。自分はCDだけが欲しいのか、握手だけしたいのか、どっちもいらなかったのか、どっちもほしかったのか、何回握手すれば満足するのか、どれだけ握手しても満足しないのか、音楽が好きなのか、アイドルが好きなのか、どんな売り方だと許せないのか・・・自分がどんなヤツかって、いろんな人に考えさせてるだろ。それってすげえなって俺は思うよ」”(単P.124/文P.145~146))
迷っている愛子に
大地なりの励ましの言葉だ。
次は碧のセリフ。
武道館に立つという目標の話。
その後が大事だと碧は言う。
“「だけど、私たちって、武道館に立ったあとも生きていかなくちゃいけないんだよね。武道館に立ったあとも、ハタチになったあとも。アイドルじゃなくなったあとも、生きていくんだよ、私たちって」”(単P.164/文P.193)
碧は先を見据えたしっかりした娘、
というイメージだったんですが……。
“「私、これまで、正しい選択をしようってずっと考えてた。アイドルとして間違ってないかとか、ネットで叩かれないかとか、マネージャーに怒られないかとか、とにかく正しい選択をしなきゃっていっつも思ってたの。でも、正しい選択って、この世にあるのかな?」「正しい選択、あるよ、ある」愛子は碧にだけ届くように話す。「私はそうは思わない。正しい選択なんてこの世にない。たぶん、正しかった選択、しか、ないんだよ。何かを選んで選んで選び続けて、それを一個ずつ、正しかった選択にしていくしかないんだよ」”(単P.276/文P.324~325)
「正しい選択ってこの世にあるのかな?」は
とても深い台詞。
どのような選択肢を選んだとしても
それを「正しかった選択」に
していくしかないんですよね。
他には
アイドルのスキャンダルに関して
こんなセリフもあった。
“「人って、人の幸せな姿を見たいのか、不幸を見たいのか、どっちなんだろうって」「そうだね。アイドルを応援してくれてる人って、多分、どっちもあるんだろうね」”(単P.166/文P.195)
これは俺にグサリと刺さった。
確かに俺はアイドルを応援している。
しかしゴシップ記事が出たら、
それを楽しんで見ている自分もいる。
好きなメンバーが
干されたら応援するくせに
激推しされると
掌を返したように叩く。
そんな人が何人もいるはず。
幸せになって欲しいのか
不幸が見たいのか、
「どちらもあるんだろう」
まさにその通りだ。
あの子より幸せになるのは許せない。
そんな醜い気持ちが
そうさせるのかもしれない。
この他にも
心に響くセリフはあるんですが、
それは実際に読まれた方が
わかりやすいでしょう。
この本、
アイドルファンは読むべきだし、
アンチでもアイドルに興味がなくても
楽しめる内容になっています。
ちなみに現実のアイドルに
キャスティングして
読む人もいると思うが、
誰をキャスティングするか
考えるのも面白い。
『武道館』は
明らかにハロプロを意識していますが
ハロ系はあまり知らないので
自然とAKBG系にキャスティング
してしまいます。
俺の場合、
主人公の愛子は
AKB系ではないが
広瀬すずのイメージだった。
アイドルじゃないけど。
やっぱりジャニのMとの
ラブホお泊り疑惑があったし
バレンタインに手作りチョコ渡して
両想いになった話とか聞くと
リア充すぎて
ぴったりだと思う。
※2016年に
Juice=Juice主演でドラマ化されました。
キャストは
●日高愛子---宮本佳林
●堂垣内碧---植村あかり
●安達真由---高木紗友希
●坂本波奈---金澤朋子
●鶴井るりか---宮崎由加
宮本佳林さんは
ザ・アイドルのるりか役の方が
いいと思ってたので意外。
グラビアで活躍中の植村あかりさんが
エースの碧役なのは妥当。
るりか役の宮崎由加さんは
原作の設定を逆にして
大人びたイメージになっています。
>フジテレビ「武道館」公式サイトヘ
FODで配信されていたので
何話か見ましたが
★★☆☆☆ 伏線の巧妙さ
★★★☆☆ どんでん返し
笑える度 △
ホラー度 -
エッチ度 △
泣ける度 △
総合評価
7点
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※ここからネタバレあります。
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●叙述トリックについて
「NEXT YOU」の話の中で
突然、武道館の営業や
CDの封入チラシについての
エピソードが入ってくる。
これは一見、
3周年記念の
武道館ライブのことかと思わせているが
実は12年後の
武道館ライブの話だった。
時系列を入れ替える叙述トリック。
これで作者は何をやりたかったのか?
碧と愛子のスキャンダルで
3周年ライブは中止になる。
やっぱり中止かと落胆させておいて
実は12年後の話だった
という驚きを与えるためと予想。
朝井氏いわく、
“アイドルにまったく興味のない人たちの視点も入れておきたかったんです。あの騒ぎはなんだったんだろうね、ま、どうでもいいんだけど、と冷静に見るような人たちの目が欲しかった。そういう視点が連なって、ラストに書いたような価値観の反転が起きるといいなあと感じています。”
●「NEXT YOU」の振付師は誰?
デビュー当時から
振り付けを担当しているコリオグラファー。
「目から光線」という一言で
「目からビーム、手からパワー、毛穴からオーラ」
という名言を残した人を
想像したことでしょう。
それは「夏まゆみ」先生。
実在の人物を連想させて
ニヤリとさせる企みだと思います。
朝井氏のインタビューより。
“もしも『武道館』が実写化されたら、ダンスの先生はコリオグラファーの夏まゆみ先生にやってほしいです。「毛穴からオーラ、目からビーム!」をやってほしい!”
●12年後には恋愛解禁?
本編の12年後は
考え方や物が大きく変わっている。
まずCDがほぼ廃棄状態。
そしてアイドルの恋愛が
認められている。
そんな馬鹿な。
どういう経緯でそうなった?
なんか納得いかない設定ですが
これが作者の理想のアイドル像
ということらしい。
再び朝井氏のインタビューより。
“ライブのMCで「ユカリが最近彼氏と別れちゃったんで、みんなでカラオケ行ってモーニング娘。の『シャボン玉』歌いましたよ!」とか普通に言ってほしい。”
ええ~。
●ヘアメイクさんに恋するアイドル。
別に誰と恋しようが勝手だが、
ヘアメイクさんとは・・・
このメイクもクズだな。
よりによって
アイドルに手を出すとは
けしからん奴だ!
でもこういうケースって
本当にあるんでしょうか?
よくアイドルがTwitterやブログに
「〇〇の店でヘアカットしてもらいました」
という写真を載せるが
それ以上の関係も?
何か深読みしてしまう。
●ドリームモーニング娘「シャイニングバラフライ」
ラストにOGの一期生が揃って
当時の曲を歌う同窓会ライブ。
まるでドリームモーニング娘。
「シャイニングバラフライ」
ドリームモーニング娘。「シャイニングバタフライ」MV
作者もそれを
文章で表現したかったと
語っています。
“あの曲を聴いて、物語の結末を決めました。当時のファンはみんな、恋愛スキャンダルで脱退したメンバーのことを「アイドルとしての自覚がない」と怒っていた。でも、ドリームモーニング娘。のコンサートでは、ステージ上のOGたちがみんなスポットライトを浴びてキラキラしていて、OGというよりは現役アイドルみたいで。結婚して子どもがいるメンバーも多い、つまり「人間」としての欲望を叶えながら「アイドル」としての欲望も叶えている、この人たちは「人間」と「アイドル」を両立していると思って。その姿から、アイドルでいる時期はとても短い、アイドルでなくなったあとの人生のほうが長い、つまり人生はトータルなんだ、という当たり前のことを強烈に感じたんですよね。「アイドル」の解放を見た気がしたんです。その感動を文章にして残しておきたいと思いました。
客席の人たちが声援を送っているのを見て、あの頃プンプンしていた人たちはどこへ行ったんだろう、とも思いました。あの時言われた「アイドルとしての自覚がない」の「自覚」って何? アイドルをアイドルたらしめているものって何? と思いました。”
●元ネタ(小ネタ)をいくつか。
広島出身の元センター尾見谷杏佳
→尾見谷杏奈。
上田梨夏子の脱退のモデルでもある。
ぽっちゃりしてしまう真由
→鈴木香音。
香音をディスってるわけではなく、
成長期だから気にするなというメッセージもある。
坂本波奈
→名前はチームしゃちほこ坂本遥奈のもじり。
中身は飯窪春菜がモデル。
卒業ライブできず脱退した碧と愛子
→藤本美貴、矢口真里
画像流出で辞退した上田梨夏子
→佐々木莉佳子
13期候補生の矢吹美久。
→HKT48・矢吹奈子と田中美久のミックス。
「Fruits=Fruits」
→「Juice=Juice」
「ネクス中毒」有名ヲタのサムライ
→ハロプロヲタのサムライさん。
週刊誌に熱愛を報じられ丸刈りしたアイドル。
→AKB48・峯岸みなみ。
握手会に刃物を持った男が乱入
→AKB握手会襲撃事件。
ライブのことを別名で呼ぶ。「授業参観」
→私立恵比寿中学の「学芸会」
杏佳が卒業して5人になる
→早見あかりが抜けたももいろクローバー。
YouTubeの公式チャンネル「ネクステ」
→ハロプロ公式チャンネル「ハロステ」
「目から光線」のダンスの先生
→「目からビーム」の夏まゆみ。
名前が出た瞬間に、
SNSのアカウントが発見され、
彼氏持ちなのが特定される。
→NMB48の植村梓。
ポスト山田菜々として
お披露目された直後に
彼氏とのキス写真流出。
など。
●朝井リョウ×高橋みなみの対談
この本を描き上げた朝井リョウ氏に
今一番会って話したい人は?
「ダ・ヴィンチ」編集部が
そう問いかけると
「高橋みなみ」と答えたという。
「ダ・ヴィンチ」2015年6月号に
朝井リョウと
AKB48の総監督・高橋みなみの
対談が載っている。
その中から
印象に残った言葉をいくつか紹介。
![]() | ダ・ヴィンチ 2015年 6月号 Amazon |
高橋「本をいただいてすぐ、一気に読んじゃいました」
朝井「本に折り目がめっちゃついてる!嬉しすぎて眩暈が!」
高橋「線もいっぱい引いちゃいました(笑)最初はくすくす笑いながら「あるわ、あるわー」と、“アイドルあるある”を楽しんでいたんです。でも、後半はあまりに自分たちの真髄すぎて、本を持つ手がプルプルしてきました。「なんでこんなにアイドルの心の中がわかるんだろう?」と思ったんです」
朝井「よかった。「全然違う!」って言われたらどうしようかと思ってたんです」
高橋「本の中でちょこちょこAKBらしきことに触れていただき、ありがとうございます(笑)」
朝井「AKBグループはあまりにも現代の象徴なので、自然と出て来ました。ちなみにグループのリーダー的存在・坂本波奈の卒業が決まり、ステージ上でメンバーだけに話しをするシーンがあるんですが、あそこは高橋さんのことをだいぶ意識しました」
高橋「本当ですか!?私あの挨拶、自分が卒業する時に、絶対マネしようと思ってたんです!私っぽいな、と思ったんです(笑)」
朝井「アイドルがアイドルのまま、人間として生きられる時代が来るべきだと強く思います。その反対に「ファンの夢を守らなきゃ」ってことに固執しているのが、るりかというキャラクター。確かに守るべき夢もあるかもしれないけど、「それだけじゃないよ」と思いながら書きました」
高橋「るりかは全部が全部似ているわけじゃないけど、私は読みながら、珠理奈のイメージが重なる感じがしたんです。ドキュメンタリー映画の3作目で、監督から「恋愛してみたい?」みたいな質問をされて、珠理奈は別にいいですって。「恋愛は大人になればいつでもできるけど、アイドルは今しかできないんで」。それを観た時に私は「若いな」って思ったんです。そっか、まだ自分の知らない感情に出会ったことがないんだなって」
高橋「私、影響を受けた言葉はすぐ自分の引き出しに入れちゃうんです。『武道館』の言葉も使っちゃうかもしれないです(笑)「正しい選択なんてないんです。自分のした選択を、正しいものにするしかない by朝井リョウさん」(笑)」
朝井「ホントにいいと思ってくださったなら、そこだけ著作権放棄するので自分のものとして言っちゃってください(笑)ていうか今、その台詞が、高橋さんの頭の中にあったことがめちゃくちゃ嬉しかったです。その台詞のためにずっと助走を続けていたようなものなんですよ、この小説って」
高橋「あの言葉は響きました。AKB名物のサプライズ発表が来た時は、私がメンバーを代表して最後にコメントをするんですけど、そのコメントが正解かどうかは誰もわからないんですよね。だからこそ、なるべくポジティブなことを言おうとしているんです。そうやって言った言葉に、現実のほうを近付けていくしかないと思っています」
朝井「年末の卒業後も、アイドルじゃなくなった高橋みなみさんの人生も、どちらも猛烈に応援します!ちなみに、高橋さんにとって、武道館とはどういう場所ですか?」
高橋「実は・・・w-indsさんのライブを武道館で観て、「このステージに立ちたい!」と思ったのがきっかけで、AKBに入ったんです。この本に出てくるアイドルの女の子と同じように、武道館は自分にとっての夢の場所だったんです」
この話にはまだ続きがあります。
対談の五日後、さいたまスーパーアリーナで開催されたAKB48のコンサートで、多くのメンバーの人事異動が発表され、人気メンバー(川栄李奈)がサプライズで卒業発表を行った。総監督の高橋みなみは締めのスピーチで、「選んだ道を正解にするしかない」という言葉を選んだ。
「正直、いいこと言ったなって手ごたえがあります(笑)これね、本からいただいたんです。本から抜粋させていただいた言葉でございます!」(4月8日の初ソロコンサートでの開演前ナレーションより)