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【ネタバレ注意】刑事コロンボ『第21話・意識の下の映像』の感想・伏線解説・考察

 

刑事コロンボ

#21『意識の下の映像』

[DOUBLE EXPOSURE]

(1973年12月16日放送)アメリカ

(1974年8月10日放送)日本

 

 

 

<あらすじ>

心理研究所所長のバート・ケプル(ロバート・カルプ)は、長年強請ってきたクライアントのヴィクター・ノリス(ロバート・ミドルトン)氏に反撃され、彼の殺害を計画する。依頼作品の試写の晩、ケプルはフィルムの中に飲み物を写した1コマをつなぎこんでおき、上映中、客たちに気づかれず試写室を出る。そして<潜在意識のカット>に刺激され水を飲みに出て来たノリス氏を射殺した――。

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<スタッフ>

監督 リチャード・クワイン

脚本 スティーブン・J・キャネル

制作総指揮 ローランド・キビー&ディーン・ハーグローヴ

音楽 ディック・デ・ベネディクティス

撮影 ウィリアム・クロンジャガー

編集 ロナルド・ラ・ヴァイン

 

<キャスト>

ピーター・フォーク(コロンボ)ロサンゼルス市警警部

ロバート・カルプ(バート・ケプル)行動心理研究所所長

ロバート・ミドルトン(ヴィクター・ノリス)クライアント

チャック・マッキャン(ロジャー・ホワイト)映写技師

ルイーズ・ラザム(ノリス夫人)ノリス夫人

マニュエル・デビナ(フィッシャー刑事)刑事

デニス・ロバートソン(マーレイ刑事)刑事

 

感想

行動心理研究所を主宰する

ケプル博士はキャンペーンガールを

餌に強請っていたクライアントの

ノリスに反撃され殺害を計画。

「潜在意識のカット」を紛れ込ませた

映像を見せてノリスの行動を操り

水を飲みにロビーに出たところを射殺した。

 

トリック重視派の俺には

潜在意識のカット(サブリミナル効果)

殺人に利用するという

奇抜な殺人トリックがまず大好物なので

それだけで+0.5点の評価をあげたいです。

実際できるかどうか置いといて

トリックのネタとして面白い。

ゆさぶる手数も多く伏線回収も丁寧でした。

 

『指輪の爪あと』

『アリバイのダイヤル』に続き

ロバート・カルプが

3度目の犯人役で登場。

名前もバート・ケプルで似てる。

被害者を撃ち殺した横を

さっと素通りして

銃をクルっと回転させる動きが

やけにかっこよかった。

 

犯人とのやりとりの中で

スーパーでコロンボと別れる時に

「もう1つ」と言うんじゃないかと

ケプルが二度見して確認する。

戻って来ないから安心して歩いていると

案の定コロンボが回り込んで来て

「ケプル先生、忘れるところでした!」と

呼び止めるのが面白かった。

 

ノリスの奥さんがアリバイが無くて

自分が疑われてしまうのではと

怯えているところにコロンボが

「あなたが殺していないことはわかってます」

と言ってあげるのはいいですね。

本当に「わかってる」からこそ言える台詞。

 

「刑事コロンボ完全捜査ブック」によれば

今までの要素を組み合わせて

構成しているとのこと。

確かに似ているシチュエーションが

意図的に詰め込んである気がする。

 

☆☆☆☆☆ 犯人の意外性

★★★★★ 犯行トリック

★★★★☆ 物語の面白さ

★★★☆☆ 伏線の巧妙さ

★★★☆☆ どんでん返し

 

笑える度 -

ホラー度 -

エッチ度 -

泣ける度 -

 

評価(10点満点)

 8点

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※ここからネタバレあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1分でわかるネタバレ

○被害者 ---●犯人 -----動機【凶器】

ヴィクター・ノリス ---●バート・ケプル ---口封じ【射殺:銃(22口径)】

ロジャー・ホワイト ---●バート・ケプル ---障害の除去【射殺:銃】

 

<結末>

映写技師まで殺されて

コロンボは上映したフィルムに

「潜在意識のカット」を仕込んで

ノリスを操ったと確信していたが

繋いだフィルムは捨てられて証拠が無い。

 

なんとか凶器の秘密を

暴きたいコロンボは

自分がケプルの部屋を捜索しているカットを

何枚も紛れこませた映像をケプルに見せる。

するとケプルはアレが

見つかったのではないかと

気になってしまいアレを取り出した時

そこにコロンボが現れた。

 

ケプルの探していたアレとは

電気スタンドの中に隠した

弾丸を22口径にする変換装置だった。

戸棚に飾っていた銃が凶器で

このコンバージョンキットを付けて

口径を誤魔化していたのだ。

自分の使った手に引っかかったケプルは

電気スタンドを見るコロンボの写真を手に

自嘲気味に笑うのだった。

 

トリック解説

ケプルの使った

「犯行トリック」を解説します。

 

まずはケプルが裏で行っている悪事。

タニア・ベーカーという女を

キャンペーンガールとしてノリスに近づけ

不倫関係にして写真を撮り

奥さんにバラすぞと脅して

金を強請っていた。

 

ところがノリスも我慢の限界に達し

地方検事局に調べさせると反撃。

ケプルは他にもやましいことがあるため

ノリスの殺害を決意する。

 

試写の時に上映する宣伝用のフィルムを

2本用意しておき片方のフィルムだけ

冷たいアイスティーのカットを数枚

フィルムに挟んでつなぎ合わせる。

肉眼では全く気づかないが

これを見た人間は潜在意識が刺激されて

冷たい飲み物が欲しくなってしまう。

「潜在意識のカット」

サブリミナル効果を利用するのだ。

 

会場にノリスの好物のキャビアを用意。

塩辛く味付けしてあるので

これを食べさせておけば

上映中に喉が渇きやすくなる狙いがあった。

試写室のクーラーを切り

蒸し暑さでさらに喉が渇くようにする。

映写室にはロジャーがいるので

ロビーのカメラに姿が映らないように

カメラの電源を落としておいた。

 

試写会が始まる。

あらかじめケプルは自分の声を録音した

テープレコーダーを用意し、

ノリスや重役には

まだナレーションが入ってないから

映像に合わせて自分が読み上げると話しておく。

 

舞台袖に隠れたケプルは映像に合わせて

テープのナレーション音声を再生する。

別室のカメラで

ノリスがロビーに出たことを確認して

素早くロビーに出てノリスを撃ち殺す。

この時の銃は45口径の銃に

22口径の変換装置を付けたものを使用した。

 

銃の口径変換装置をオフィスの

電気スタンドの中に隠す。

銃は棚に堂々と飾っておく。

口径が違うから凶器とは思われないだろう。

そうしてケプルは舞台袖に戻り

上映が終わるとノリスがどこに行ったか

白々しく聞いて

みんながロビーに出たら後を追い

テープレコーダーを録音して

用意したナレーションを上書きする。

 

映写技師のロジャーに

上映したサブリミナルのフィルムを

金庫に保管させて触らせない。

後からもう1本の

正常なフィルムとすり替えておく。

――というものだ。

 

第2の殺人は

ロジャーに殺害方法を知られて

強請られたために口封じをした。

これもノリス夫人の犯行と思わせるため

留守中の屋敷に侵入して

盗んだノリスの銃を凶器に使う。

 

マグノリア劇場に行き、

1巻目の上映中に射殺したが

自分で2巻目のフィルムをかけて

その時にはまだ生きていたと思わせる。

自分はコロンボに

取り調べを受けていたから

アリバイがあると主張した。

 


 

コロンボが犯人に仕掛ける

「逆トリック」ですが

犯人の使った潜在意識のカットで

やり返しています。

 

コロンボのしつこい捜査で

ケプルを精神的に追い詰めたが

物的証拠が見つからない。

凶器の銃さえ見つかればと探したが

どこにも見つからなかった。

棚に飾ってあるのは45口径だ。

 

そこでコロンボは

ケプルの宣伝用のフィルムに

自分が部屋で捜し物をしているカットを

何枚も挿入しておいた。

それを見たケプルは急に不安に駆られる。

まさかアレが見つけられたのでは?

 

部屋に戻ったケプルは

電気スタンドの中に隠してあった

銃の口径変換装置を取り出し

よかったと安堵したその時、

カメラのフラッシュが光り

コロンボが出て来た。

それを見せてください、

口径の変換装置とは気づかなかった、と。

ケプルはサブリミナルを

逆に利用されたことに気づいて

愕然となるのだった。

 


 

犯人がミスをしたり

些細な矛盾点から

コロンボが真相に近づいていく

「発覚トリック」をピックアップ。

 

①ケプルは映写中に

ノリスが席を立ったことに

気がついたというのだが

姿を見たわけではない。

他の人が立ったかどうか聞かれて

「いや」と否定した。

コロンボは席を立ったのが誰か見えてないのに、なぜそれがノリスだとわかったのかと追及。ケプルは「誰も出なかったというのは推理にすぎない」と弁護し、ノリスは大変なワンマンだったから自分以外が席を立つことは許さない、席を立つならケプルだろうと言った。

 

②ケプルは映写技師ロジャーに

上映したフィルムを

金庫にしまうように指示したが

たいていの人は殺人があったら驚いて

フィルムにまで気がまわらないと

コロンボが指摘する。

ケプルは「僕はたいていの人とは違う。極めて冷静で論理的な男ですから。どんな時も仕事は忘れない」と答えるが、答えになってない。コロンボは感心して「あたしの観察とぴったり。素晴らしい自制力をお持ちですな」と褒め称える。

 

③ケプルは試写の後

みんなの感想を聞くために

テープレコーダーを回している。

それはいつも

ロビーでやっているのだが、

あの日はロビーに出たら

死体があって大騒ぎだった。

とても感想を言い合う状況では

なかったはずだが

それでもいつも通り

録音を回していたのはなぜか?

ケプルは「よく覚えてないがロビーに出る前に録音ボタンを押したかもしれない」と言う。その目的は、テープを上書きしてアリバイに使ったナレーションの音声を消しておきたかったからです。この件について、試写の終わった直後に同席した重役の話では、ノリスの姿が見えないと言ったことや蒸し暑いという会話の後でロビーに出たと証言。そこでテープレコーダーを聞き直すと、死体発見直後の騒ぎから録音が始まっている。ケプルが言ったロビーに出る前なら、重役達の会話が入っていないとおかしいし、ロビーに出てからだと騒ぎを録音しようと思うこと自体がおかしい。それについてケプルは「人は緊急事態には異常な行動をとることがある」と弁解すると、コロンボは待ってましたとばかりに「でも先生はフィルムをしまうことは忘れなかった。極めて冷静で論理的な方だ」と矛盾を突いてくる。つよつよじゃん……。ケプルは「君は何を立証したいんだ?」とキレ気味にくってかかる。

 

④ノリスの秘書から

殺人の翌日の会議の議題を聞いたら

ケプルとの取引をやめるという

話をする予定だった。

何らかの理由でノリスはケプルをクビにするつもりだった。こうなるとケプルの動機は十分だが、ケプルは「今回の販売促進フィルムが完成したから次の企画まで関係を断つというだけでしょう」と苦しい言い逃れ。「ああ~なるほど。それじゃあわかりますなぁ~」と素直に納得するコロンボが逆に怖い。


⑤上映中のフィルムの1コマだけ

ハンバーガーのカットを入れると

それを見た観客は

無性にハンバーガーが食べたくなる。

「潜在意識のカット(サブリミナル効果)」

ケプルの本の中では

1コマだけポップコーンの映像を入れて

ポップコーンの売り上げを

伸ばしたことが紹介されていた。

ただし現在は禁止されている手法。

コロンボは潜在意識のカットとは面白いですなぁと感心。どうしてノリスが水を飲みに席を立つ正確な時間がわかったのか、ケプルに助けを求めるがケプルはわからないとはぐらかす。もうわかってるっしょ。

 

⑥コロンボの食べたキャビアが

おいしかったけどかなり塩辛い。

そのため

後から喉が渇いてしまった。

このキャビアをノリスが食べていれば喉が渇いて席を立つことが予想できる。解剖結果、ノリスはキャビアを大量に食べていた。

 

⑦映写技師のロジャーが

ノリス殺しのトリックを見破り

5万ドル欲しいとケプルを強請ってきた。

ロジャーは2つの劇場を掛け持ちで

働くほど生活に困っていた。

ケプルはロジャーが夜に働く

マグノリア劇場に押しかけ

そこでロジャーを射殺した。

コロンボがケプルを訪ねている時に

その事件を聞いて

是非ケプルも一緒に

劇場に来てほしいと頼む。

ケプルは車を走らせるが分かれ道で停まり

コロンボにどっちの劇場が質問した。

あえて「劇場」とだけ伝えて、ケプルがロジャーの殺された劇場がどこか知っているか引っかけるつもりだったコロンボ。その手に乗るものかと寸前で気づく犯人とのやりあいが面白いです。「古畑任三郎」の「しゃべりすぎた男」で古畑が道を教えずに明石家さんまがうっかり知っている現場に行くか引っかける場面はここのオマージュ。

 

⑧事件の前日に姿を消した

タニア・ベーカーと

ケプルとの関係を調べたが

繋がりは見つからない。

ケプルもタニアは知らないとシラを切るが

コロンボがケプルの名を使って

料金持ちの国際電話をかけたら

タニアが出てくれた。

コロンボが「やあタニア」と話しかけたら

「あなたケプルじゃないわ」と

電話を切られてしまった。

ケプルの声を知っているため、2人が繋がっていると確信。コロンボが問い詰めるとケプルはタニアを知っていることを認めたが、あの手の女とのいざこざに巻き込まれたくないのは僕にも妻がいるからと躱した。

 

⑨ロジャー殺しのケプルのアリバイは

2巻目のフィルムがかけてあったから

その時点までロジャーは生きていて

同じ頃にケプルは7時半からずっと

コロンボと一緒にいたから

犯行不可能というもの。

しかし殺人は7時半より前の

1巻目のフィルムの時に行われた。

ロジャーはフィルムの最後に小銭を挟んで

それが落下する音で終わりを知り

次の映写機を回すということを

コロンボはロジャー本人から聞いている。

しかし、事件の日、

2巻目の映写機の下に

小銭は落ちていなかった。

つまり1巻目の最中にロジャーは殺されており、2巻目を回したのが犯人。その際に小銭を挟むことをしなかったことからロジャーではあり得ないとわかったのだ。

 

⑩コロンボの仕掛けた

「潜在意識のカット」で

ケプル自ら凶器の秘密を暴露してしまう。

事務室の電気スタンドの中に

22口径の銃の変換装置を隠していた。

今回の決め手となった物的証拠。普通に捜索して変換装置を見つけて逮捕するのではなく、コロンボが犯人が使った手と同じ手を使ってやり返すのが面白いと思う。#1『殺人処方箋』もそうだった。

 

 

伏線解説(★は巧妙なもの)

★①【傾いたランプシェードを直すケプル】

開始15秒。

銃の手入れをしているケプルが

電気スタンドの

ランプシェードが傾いているのを直す。

そして銃を棚に飾る。

  • いきなり今回の決め手の「銃の口径の変換装置」の隠し場所である電気スタンドのランプシェードをケプルが触っているのが巧妙です。銃に関係なければランプシェードが傾くことがない、つまり銃に関係があることを示唆している。そして、殺人の後で銃から「何」かを外して電気スタンドの中に隠す場面もしっかり出ているのだが、それが「何」かはミステリに詳しくないと気づかないだろう。

 

【キャビアとアイスティー】

腹ぺこで現場に駆けつけたコロンボが

キャビアをつまみ食いする。

1ビン80ドルもする高級キャビアで

「15ドルは食べたかな。逃げよう、逮捕される」

その後の聞き込みで

喉が渇いたため映写技師のロジャーから

アイスティーを飲ませてもらう。

  • この2つが繋がっているとは初見だと気づかないかも。キャビアを「うまい」としか表現しなかったから塩加減がわからないし、水を飲んだのもさりげなく話を聞き出すための口実にも見える。

 

【フィルムと小銭】

コロンボが小銭が落ちていることに

気づいて拾おうとしたら

ロジャーがそこに置いておいてくれと言う。

フィルムの終わりにコインを挟んで

落下してチャリンと音が鳴ったら

リールを交換する合図に使っている。

  • これがロジャー殺しの時のアリバイ崩しに役立つ。

 

★④【ロジャーの険しい表情】

コロンボがロジャーに聞き込みをして

帰った後のロジャーの表情が意味深。

まずロビーを映すカメラを見上げて

アイスティーのカップを見つめる。

何か気になることがあったらしい。

  • この時点でケプルの使ったトリックをほぼ見破っているんでしょうね。実はこの男、かなり頭がいい。何気なくコロンボが手に取った「不動産のハンドブック」だが、不動産で儲けるためにはかなり知識を必要とする。そして、勘が鋭い。コロンボが同じ映画を5回は観るというとそれを「西部劇」だと当てたりしている。そんな男が「すぐ片付けたフィルム」と「消してあったロビーのカメラ」と「喉がかわくこと」から、ケプルが犯人だという結論を導き出すのは難しくないだろう。それを知ったロジャーがどうするかは、「僕も金持ちになりたい」と言っているため、この後の強請の展開に繋がっていく。

 

欠点や疑問など

  • 正直、サブリミナル効果は作り話です。有名なポップコーンの売り上げが上がった話とか別の要因もあるため信じていません。幽霊と同じで人間は不思議な現象に惹かれるもの。ちなみに幽霊も存在しませんよ。信じてる人には申し訳ないけど。とはいえ、フィクションとして“面白い”ものは評価します。
  • ロビーだと銃声が響いて誰かに聞こえそう。それを防ぐための22口径?
  • 飾ってある銃を調べたが問題無かったという。それは口径が違うからというだけだったが、硝煙反応は検査したのだろうか?
  • サブリミナルのフィルムはどこにどう処分したのか?
  • 決め手になった口径変換器をいつまでもランプシェードに隠しておく必要が無い。
  • ロジャー殺しの2巻のフィルムのトリックが難解。なんとなく理解はできるが映写機に詳しくないため間違って理解しているかもしれない……。整理してみます。1巻目のフィルムが終わったのが午後7時30分、2巻目が終わったのが午後8時5分前。だから死亡時刻は午後7時30分~7時55分と思われていて、ケプルは7時30分以後はコロンボと一緒だったからアリバイがあるというトリックだった。しかしロジャーは7時30分より前に殺されていた。それは2巻目の映写機の下にコインが落ちていなかったから、ロジャー以外の誰か、つまり犯人が2巻目をかけたからだ。ケプルは1巻目の途中にロジャーを殺して2巻目をかけて戻ったからアリバイを作ることができた――ということでいいんですよね?ここで疑問。これ2巻目をセットしておいたら自動で切り替わるんでしょうか?7時30分の2巻目スタートを犯人が手動でやるんだったら7時30分までに戻るのは時間的に無理ですよね。コインが落ちたら交換するわけで、そこから2巻目を動かしたら、7時30分からのアリバイは厳しい……。ん?なんかおかしい。そこまで厳密に時間差を考えなくてもよいのだろうか。ケプルも「7時30分からコロンボと一緒にいた」とは一言も言ってなくて、「死亡時刻は7時半以後だろう。その時間は君と一緒にいた」というアバウトな表現をしていました。もっと簡単に、「ケプルがアリバイがあると主張した時間よりも前にロジャーが殺されていたことがわかってアリバイが崩れた」と考えればいいだけの話かもしれません。ウ~ン、難しく考えすぎか?

 

名場面・名台詞

ケプルからノリス夫人が

夫の浮気を知って

殺したのではないかと言われ

ノリス夫人にアリバイを聞くと

マグノリア劇場の角で

タニアの彼氏という男と

待ち合わせをしていたが

いつまで待っても誰も現れなかった。

結果的に夫人にアリバイは無いが……。

ノリス夫人「あたし、主人を殺してはいません」

コロンボ「……わかってます」

ノリス夫人「本当に?」

コロンボ「はい」

ノリス夫人「どうして?」

コロンボ「うちのカミさんは犯罪オンチでしてね、推理映画見てても犯人当てたためしが無いんです。でもね奥さん。そのカミさんでもあたしを殺す気になれば、もうちっとマシなアリバイ考えますよ」

ノリス夫人「……ありがとう」

 

ノリスがキャビアを食べて

潜在意識のカットで喉が渇いて

ロビーに出たところを射殺した。

ケロンボは心理研究の専門家に

意見を求める。

ケプル「つまりある人物が喉が渇き、そこに冷たい飲み物の潜在意識に訴えるカットを与えれば、多分、席を立って試写室を出るだろう。そして水飲み場へ行くだろうと言うんですか?」

コロンボ「ええ。そうじゃないかと思ったんです。可能性はありますよね?」

ケプル「ああ、もちろんです」

コロンボ「どうもありがとう。大助かりです」

ケプル「どういたしまして。あんた、面白い人ですな。たいへん面白い」

コロンボ「褒めてくだすったんでしょうな?」

ケプル「ええ、そうです。しかしながら、まだこれでは不十分でしょう。何か有力な裏付けがなくてはねえ」

コロンボ「裏付けっていうと?」

ケプル「フィルムに編集した痕があるかを調べることです。そうだ、あんたならもう調べたはずだ」

コロンボ「ええ、まあ」

ケプル「で、結果は?」

コロンボ「痕は無いんです」

ケプル「ん~そりゃ残念でしたなぁ。アイディアはよかったのに」

コロンボ「だがプリントが2本あったかも?」

ケプル「プリントが2本?それは、よい着眼だ。僕だったら第2のプリントを探すでしょうなあ。もしあれば事件は解決だ」

コロンボ「でも第2のプリントは出ないと思うんですよ」

ケプル「ほう、理由は?」

コロンボ「この件の犯人の知能からみて、そんなあからさまな証拠を残しとくはずが無いんです。もちろんあらゆる現像はチェックしてますが、犯人は自分で現像してるんだと思いますね」

ケプル「せっかくの推理が惜しいことですなぁ」

 

ロジャーが殺されたと知らせを受け

コロンボが是非ケプルも

現場に来てほしいと頼む。

ケプルは自分が疑われていると知り

警戒しながらも一緒に行くことにした。

劇場に向かう途中で

ケプルが車を止めてコロンボに質問する。

ケプル「どっちだね?」

コロンボ「え?」

ケプル「右?左?現場がどこかまだ聞いてないんでね。どの道を通っていいかわからないんだな」

コロンボ「右折してください」

ケプル「へへ……、知ってたら大変だ」

コロンボ「そう、その通り」

 

※ここのやりとり、吹替えと字幕で違う。字幕だと、「右へ曲がってください」の後、ケプルが「いい手だ(Nice try, though.)」と褒め、コロンボが「負けた(Can't win 'em all.)」と肩を落とす。

 

ゴルフのプレー中、

ずっとコロンボが付いてくるので

ケプルがはっきり言ったらどうだと

しびれを切らせる。

ケプル「どうだね、そろそろ要点を言ったらどうかね?」

コロンボ「確信をですか?」

ケプル「ああ、本当の狙いをさ、言ってみたまえ」

コロンボ「先生が犯人だと思うんです。先生がノリスさんを殺し、映写技師を殺したんです」

 (中略)

ケプル「素晴らしいな。君のその想像力には心から敬服するが、僕の知る限りでは我が国の法律では何らかの物的証拠が無い以上どうにもならんはずだと思うがね」

コロンボ「……そうなんですよ。その証拠がねえ」

ケプル「無いと思うが、あるかね?」

コロンボ「決定的な物は無い」

ケプル「あるはずが無いからね。つまり、今の君は打つ手が無いんだから当分は静観するほかないだろう。そして僕は、安心してゲームと取り組める」

 

 ケプルがゴルフに戻り、スイングしてボールを飛ばす。

 

コロンボ「ナイスショット!先生、勝つには最後までゲームを捨てないことだって」

ケプル「その通りだ、コロンボ君」

 

好事家のためのトリックノートトリック分類表

3-C、不在証明「音によるアリバイトリック」

●レコード、CD、テープ

【テープ】

試写会で流す映像にナレーションが入っていないから犯人が台本を読むと言って舞台袖に隠れ、あらかじめ録音しておいた自分のナレーションを流している間に抜け出して殺人を犯し、上映中ずっと舞台袖にいたように思わせる。殺害後その証拠のテープは、上映後に感想を録音するためと称して録音スイッチを押し、上書きして消去する。

 

5-C、隠し方「物の隠し方トリック」

●その他

【銃の口径変換装置(コンバージョンキット)】

45口径を22口径に変換するコンバージョンキットを外して電気スタンドの支柱の中に隠す。45口径の銃は堂々と飾っておく。

 

8-A、発覚「物質的な手掛りの機智」

●探偵、被害者、第三者が仕掛けた発覚

【映写機のコイン】

映写技師の被害者は上映中のリールが終了するタイミングがわかるようにフィルムの最後にコインを挟んでおく習慣があった。しかし2巻目の映写機の下にコインが落ちてなかったことから、2巻目をセットしたのは被害者では無く犯人で、被害者は1巻目の途中に殺されたとわかる。

 

8-C、発覚「犯人自白、告発トリック」

●犯人逮捕直前の自白強要トリック

【逆サブリミナル効果】

探偵が犯人のオフィスの中を探し回っているカットを映像の間に1コマだけ何度も挿入したものを上映する。それを見た犯人が物的証拠の隠し場所が気になり始めて、急いでオフィスに戻って証拠品を取り出したところを捕まえる。

 

9-A、その他「特殊トリック」

●催眠術など

【サブリミナル効果】

上映するフィルムに1コマだけ冷たい飲み物のカットを入れて、被害者が水を飲みにロビーに出たところを殺す。その前準備で塩辛いキャビアを食べさせて喉が渇くようにしておく。

 

 

『刑事コロンボ』各話レビューまとめ


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