刑事コロンボ
#27『逆転の構図』
[NEGATIVE REACTION]
(1974年10月6日放送)アメリカ
(1975年12月20日放送)日本
<あらすじ>
写真家ポール・ガレスコ(ディック・ヴァン・ダイク)は、長年自分を押さえつけてきた妻フランシス・ガレスコ(アントワネット・バウアー)を町外れの空家に連れ出し、誘拐に偽装したうえで射殺した。次に、空家探しをさせていた元囚人のアルヴィン・ダシュラー(ドン・ゴードン)を廃車置場に呼び出し、自分の銃で射殺。さらに妻を殺した凶器の銃をダシュラーに握らせて自分の足を撃った。これで夫人を誘拐した犯人ダシュラーが妻を殺し、身代金の受け取りにきたところで襲ってきたので、ポールは正当防衛で犯人を撃ち返したという構図が完成した――。
<スタッフ>
監督 アルフ・チェリン
脚本 ピーター・S・フィッシャー
制作 エヴァレット・チェンバース
制作総指揮 ローランド・キビー&ディーン・ハーグローヴ
ストーリー監修 ピーター・S・フィッシャー
音楽 バーナード・セイガル
撮影 ウィリアム・クロンジャガー
<キャスト>
ピーター・フォーク(コロンボ)ロサンゼルス市警警部
ディック・ヴァン・ダイク(ポール・ガレスコ)写真家
アントワネット・バウアー(フランシス・ガレスコ)その妻
アルヴィン・ダシュラー(ドン・ゴードン)元囚人
ジョアンナ・キャメロン(ローナ)ポールの助手、愛人
マイケル・ストロング(ホフマン)巡査部長
ヴィト・スコッティ(トーマス・ドーラン)酔っ払い
ジョイス・ヴァン・パタン(シスター)教会のシスター
ジョン・アシュトン(マグルーダー)不動産屋
感想
著名な写真家のポールは
妻を誘拐されたように偽装して殺害し
その罪を着せた相手をも殺し
自ら足を負傷して
妻を殺した犯人を撃って仇を討った
悲劇の夫のような殺人計画を演出した。
今回の犯人はやたらムカついたな。
コロンボを馬鹿にした口調と態度に
こじつけが多くてうんざり。
しかも綺麗なお姉ちゃんはべらして
奥さん死んで間が無いのに女連れて
フィリピンに旅行するとか呆れるわ。
あの長い口ひげむしり取ってやりたいと思った。
思ったのが
最近の犯人は秘密を知った共同経営者や
自分を押さえつけてきた妻を殺しすぎ。
男性犯人が続いているから
ややワンパターンになりつつあるかもね。
犯人を逮捕した後、
コートを半分引っ掛けて
やれやれ疲れたというふうに
机に背を向けて
腰掛けるラストシーンは印象に残った。
※なぜコロンボがぐったりなのか?
その考察は「欠点と疑問」の項で。
クスッと笑えるコメディ要素もあって
教会に行ったらボロいコートを見て
物乞いかと思われて
シスターに優しくされたり、
運転免許の試験管ウィークリーに
危ない運転を注意されたりして面白かった。
残念なのは
今回の逆トリックの
「君、今の見たね?君も見た?」というやつを
実はコロンボのモノマネで
先に知ってしまったことです。
それ以前に『古畑任三郎』でも
同じ逆トリックを知っていたので
ちょっと衝撃が薄れてしまった。
ローナさんのセクシーな足は良かったけど……。
☆☆☆☆☆ 犯人の意外性
★★★☆☆ 犯行トリック
★★★★☆ 物語の面白さ
★★★☆☆ 伏線の巧妙さ
★★★☆☆ どんでん返し
笑える度 ○
ホラー度 -
エッチ度 △
泣ける度 -
評価(10点満点)
7.5点

※ここからネタバレあります。
1分でわかるネタバレ
○被害者 ---●犯人 -----動機【凶器】
①フランシス・ガレスコ ---●ポール・ガレスコ ---障害の除去【射殺:銃】
②アルヴィン・ダシュラー ---●ポール・ガレスコ ---口封じ【射殺:銃】
<結末>
コロンボはポールが刑務所で
ダシュラーと出会っていたことを詰めたが
ポールは彼を知らないと断固認めなかった。
それならとコロンボは
ダシュラーにはアリバイがあると主張する。
ダシュラーが午前中に路上テストで
免許を取る試験を受けていたという証言と
誘拐犯が写したという
午前10時のフランシスの写真をポールに見せた。
実際は午後2時だと知っているポールは
それはネガを裏焼きして
時計が反転してしまったんだ、
こんな偽の証拠で
俺をハメようとしたってそうはいかない、
このカメラの中に残ったネガを調べてみろと
棚から取ったカメラをコロンボに突き出した。
それを待っていましたとばかりに
コロンボは今の行動を見たかと
その場にいた刑事たちに確認する。
確かにそのカメラは
ダシュラーが使ったカメラだった。
だがこんなにたくさんあるカメラの中から
なぜそれを迷わず選んだのか?
なぜそのカメラが犯人の物だと知っていたのか?
犯人しか知らないカメラを選んでしまったポールは
自分で罪を認める形になってしまい、
反転写真もコロンボの罠だったと気づいた――。
トリック解説
ポールの使った
「犯行トリック」は
狂言誘拐と
自ら負傷して嫌疑をそらす
トリック2つの合わせ技です。
この計画の下準備として
誰かに協力してもらう必要があった。
そこで刑務所から出たばかりの
元囚人ダシュラーに目を付ける。
こっそり彼に接触して金を渡し
空家探しをさせてカメラを買わせる。
空家の契約が決まったら
モーテルのダシュラーの部屋に
泥棒が入ったように見せて
カメラを回収しておく。
そして計画の実行日の昼に
レンタカーを借りるように命令する。
ポールが殺したい相手は妻のフランシス。
長年押さえつけられたストレスと
助手ローナと愛人関係にあり
妻と縁を切りたかった彼は
空家にフランシスを連れていって
時計と一緒に
縛り付けたフランシスの写真を撮影。
そして撃ち殺す。
午後2時にセットした時計だが
実際は午後0時40分だった。
ポールは午後2時にローナに電話して
パームデールにいるというアリバイを作り、
ガソリンスタンドで時刻を確認して
店員に午後2時を印象付けた。
町外れの山中でダシュラーに会い、
明日は廃車場を見に行くため
午前10時に自宅に電話してくれと伝える。
帰宅後に妻が行方不明だと
(一応)警察に連絡を入れる。
警察は失踪から24時間経たないと
動けない規則があるので
この時点では介入してこない計算があった。
翌日の午前10時、
メイドのモイランがいる前で
ダシュラーからの電話を取り、
午後5時に会う約束をして
指で電話を切った後、
妻が無事か確認したり
脅迫電話のように演技する。
出版社で身代金2万ドルを用意し
引き渡しには1人で行くと伝える。
午後4時過ぎ。
モーテルを出たダシュラーを確認して
ポールが部屋に入り、
脅迫状に使った新聞の切り抜きと
のりとハサミを置いて、
妻を撮影したカメラ
(数日前に盗んだカメラ)を
タンスの引き出しに隠した。
廃車置場でダシュラーに会うと
妻が誘拐されたんだと脅迫状を触らせて
彼の指紋を付けた後、
自分の銃でダシュラーを射殺する。
そして妻を殺した銃をダシュラーに握らせて
自分の右足に銃弾を発射。
電話ボックスまで行って事件を知らせる。
偶然にも
廃車置場に酔っ払いの浮浪者がいたが
ポールは計画の成功を疑わなかった。
今回の目玉はコロンボの仕掛けた
「逆トリック」でしょう。
フランシスが誘拐された木曜日、
ダシュラーが午前中に
免許証交付の試験を
受けていたことを知ったコロンボは、
縛られたフランシスの写真を
現像して拡大する際に
裏焼きして左右を反転させた。
そうすることで
午後2時の写真が午前10時に見える。
これをポールに見せたら
すぐにこれは裏焼きだと指摘し
偽の証拠で俺を逮捕する気かと怒る。
オリジナルの写真も
現像中に溶かしてしまったらしい。
じゃあネガを調べてみろと
ポールがずらりと並んだカメラから
ダシュラーの使った
古いポラロイドカメラを取り、
コロンボの前に置く。
その行動が命取りだった。
「今の見たね?」と
周りの刑事たちに確認するコロンボ。
ダシュラーの使ったカメラの情報は
ポールにはまったく教えていない。
なのにどうしてそのポラロイドカメラが
ダシュラーのカメラだと知っているのか?
しかもカメラがたくさん並んだ棚から
選んで取り出している。
犯人しか知らない情報で
自分が犯人だと認めてしまったのだ。
カメラのプロだから
遠くからでも見ただけで
カメラがわかってしまったのも失敗だった。
犯人側が裏焼きで
自分のアリバイ工作するのかと思いきや
探偵側がそれで
嫌疑の掛かった人物のアリバイ工作をして
犯人を追い込むというのは珍しい。
『古畑任三郎』では
「赤か、青か」でキムタクが
逆トリックに引っかかり
「今の聞いた?」と古畑に詰められて、
「フェアな殺人者」のイチローが
ずらりと並んだ証拠品から
犯人しか知らない
○○○○○○を選んでしまうという
オマージュが見られる。
犯人がミスをしたり
些細な矛盾点から
コロンボが真相に近づいていく
「発覚トリック」をピックアップ。
①妻を誘拐されたポールが
身代金の取引現場で
誘拐犯が銃を向けてきたから
護身で銃を取り出して
そのまま犯人を撃ち殺したらしいと
ホフマン巡査部長から事情を聞くコロンボ。
まだ妻の無事も居場所も確認していないのに、いきなり急所を狙って撃つのはおかしいのではと言うコロンボ。ホフマン巡査部長はそんな余裕はなかったのでしょうと答える。ポールもそのことについては運が悪かった、狙いがそれていたら犯人の口から妻の居場所が聞けたのに……と後悔(のふりを)している。
②モーテルの主人によると
ダシュラーは2、3日前に
泥棒に部屋を荒らされて
カメラを盗まれたと文句を言っていた。
しかしタンスの中にカメラがあり
そのカメラの中には
縛られたフランシスのネガが残っていた。
後にコロンボの捜査でこのカメラを買ったのはダシュラー本人で、1週間前に部屋の写真を撮るために買ったことがわかる。そのカメラが数日前に無くなり、また戻って来たということは……盗んだ人間が犯人だったわけです。
③空き家の時計に
ほこりが積もってないし
時計の下にほこりがあった。
つい最近ここに
時計を置いたものとわかる。
それと契約したのはダシュラーだが
このような農家はそぐわない感じがしたと
不動産屋のマグルーダーが言う。
マグルーダーも時計は見たことないし知らないと答えた。部屋の写真を何枚も撮っていたと聞いたコロンボは、他に買い手がいてその相手に見せるために写真を撮ったのではと推理する。それと、農家を買うお金があるならモーテルで暮らす必要はないはずだが……。
④廃車置場で昼寝をしていた
酔っ払いドーランが聞いた2発の銃声。
1発目と2発目の間に10秒以上
時間が経っていたような供述をした。
翌日この供述を確認するためドーランを探して聞いてみたが、昨日のことは覚えてないと空振りに終わる。2発の銃声にしばらく間があったとすれば、相手が銃を撃ってきたから撃ち返したというポールの証言はあやしくなるが……。ポールはあの老人は正体もないほど酔っていたんだから証言はあてにならないと返す。
⑤ポールの受けた銃弾の傷、
弾丸周りのズボンに焦げた跡があった。
これは至近距離から撃たれた証拠。
ダシュラーの服には銃の焦げ跡がない。
ダシュラーが遠くから撃たれて
ポールは近くで撃たれた。
2発の銃が続けて撃たれたとすれば
距離が矛盾しているのでは?
ポールは簡単なことだと言う。最初に至近距離で相手が銃を出して来たので手を押さえてもみ合って銃が暴発し、その銃をはたき落として転がった。奴が銃を取ろうと離れた隙に、持っていた自分の銃で相手を撃った。相手はちょうど銃を拾い上げたところでそこに命中した。だから距離が違うんだと。この説明にはコロンボも納得するしかない。
⑥ダシュラーはカメラを買う時や
不動産屋に行った時には
タクシーで行っていたのに
死ぬ前日(20日)にレンタカーを借りていた。
なぜもっと早く借りなかったのか?
お金もかかるはずだが……。
ダシュラーは刑務所から出所したばかりで無職なのになぜか金を持っていた。保護司が就職を斡旋しようと持ちかけたら、いい仕事の心当たりがあると断ったらしい。脅迫状の文面が「我々」だったのもあり、ダシュラーは犯人グル-プの1人で共犯者がいるのではないかとポールに言う。もちろんコロンボはその共犯者はポールだと思って話しています。そしてレンタカーを20日になって借りたのは免許証の交付が20日で、それまで免許がなかったからだと判明。免許を取ってすぐ誘拐は無理をしすぎている。
⑦ポールとダシュラーは
午後5時に会う約束をしていたと
電話を聞いていた家政婦が証言した。
実際に警察に事件の通報があったのは
午後5時45分で
撃たれてから10分後に通報したと
ポールは証言している。
すると逆算してポールは
現場に午後5時30分頃に着いたわけで
奥さんが誘拐されているのに
遅れて行くのはおかしいのでは?
ポールは現場にまっすぐ行ったとは一度も話していないと言い返す。公衆電話を指定してきて、そこで警察の尾行がいないか待たされた。だから遅くなったんだと答えた。コロンボがどこの電話ボックスか訊ねたが、ポールは「よく覚えていない」「近くにガソリンスタンドがあった」と曖昧だったのでコロンボが「覚えてもいない公衆電話をよく待ち合わせにしましたね」と食い下がる。さらに電話の時にとったメモを取り出してそのメモに大事な公衆電話の場所も書かないのはおかしいじゃないですかと詰める。……確かに。
⑧縛られたフランシスを撮った写真が
暖炉にくしゃくしゃに丸めて捨ててあった
なぜダシュラーはこの写真を捨てたのか?
ポールに見せると
この写真は露出が足りなくて
フレーミング(構図)が悪いと言う。
この写真が気に入らないのならダシュラーのセンスも先生並みですねと皮肉を言うコロンボ。というか、この写真を他の写真に混ぜて見せられたのにポールの反応が冷静すぎる。うっかりでもこんな写真を入れられたら普通は怒るし、悲劇を思い出して悲しくならないとおかしい。
⑨ダシュラーの部屋に
新聞の切り抜いた跡やのりが
机の周りに散らかっていて
被害者を撮ったカメラも
タンスの中にあった。
脅迫状に指紋もベタベタ残して
自分が犯人ですと主張しすぎている。
これでダシュラーが犯人なら「ダシュラーは馬鹿だ」とコロンボ。実は脅迫状が届いてから警察が部屋に踏み込むまでの間にメイドが掃除に入っていた。メイドは切り抜きなど無かったと証言している。ポールはメイドが掃除を忘れて嘘をついているのではと笑って相手にしない。が、もし掃除をしなかったのだとしたらゴミ箱に捨てた新聞の切れ端がそのまま残っているはずだが片付いていた。メイドが掃除したのなら綺麗に片付いているのはわかるが、そうなると一度片付けた後でまた散らかしたというおかしなことをダシュラーがやったことになる。
⑩コロンボがフランシスの写真を拡大して
時計が午前10時だと証明したが、
それはネガを裏焼きしたからで
本当は午後2時だと主張するポール。
正しい写真はカメラのネガに残っていると
ダシュラーのカメラを手に取ったが……。
今回の「逆トリック」です。
伏線解説(★は巧妙なもの)
①【文字盤の無い時計】
ポールが空家の暖炉の上に置いた
アリバイ工作のための時計。
文字盤が無く、
針は午後2時前を指している。
- 実はこの時計の「文字盤が無い」ことが後に重要な伏線だった。文字盤があるとコロンボの仕掛けた逆トリックの裏焼きが文字で反転していることがわかってしまうからです。追い詰める段階でコロンボの意図が視聴者にバレてしまうのは困るので、あえて文字盤の無い時計を使ったのだと思われる。動画だと針の回転でわかってしまうが、静止した写真なら針の動きはわからないですから。逆になぜポールがこの時計にしたのか疑問ですが……。
②【裏焼きした写真】
写真屋に飾ってあった
左右が反転した写真。
コロンボがやり方を聞くと
ネガを裏返しに焼くと
左右が逆になると教えてもらう。
- 後の逆トリックのための伏線だが、聞き方があからさまなのでわかりやすい。
③【カメラの素人】
コロンボが義兄の
結婚20周年パーティーのために
カメラを練習中で
葬式中も撮影していたが
どれもピンボケのひどい写真ばかりだった。
- これも逆トリックのための伏線。写真屋で裏焼きのことを聞いた後、急にカメラで葬式の写真を撮っていたのは、カメラの素人だと印象付けることで逆トリックで使う裏焼きを作為的に思わせないための下準備だった。実際、引き伸ばした写真を見たポールは「これだから素人は」といった感じで小馬鹿にしている。
④【NEGATIVE REACTION】
原題の「NEGATIVE REACTION」は
「拒絶反応」という意味だが
ネガのトリックにリアクションしてしまう
ラストシーンの伏線にもなっている。
- つまり、原題タイトルからして、逆トリックで犯人を引っ掛けることが示唆してあったわけです。プロの写真家が「拒絶反応」で口を出さずにはいられないように追い込んでいったコロンボの勝ち。
欠点や疑問など
- ダシュラーの拳銃の出所が不明。妻を殺した銃はダシュラーの銃ということになっているが、当然ポールが登録したものは使えないし、未登録の銃だろうか。
- 写真を暖炉に捨てて燃やさないのは杜撰。
- 誘拐犯の写真、時計を画角に入れたうえに、時刻の数字が入っていないので作為的すぎる。
- 新聞の切り抜き、のり、ハサミにダシュラーの指紋がついていない。
- ダシュラーが部屋を撮るのに使ったカメラをわざわざ留守中に侵入して盗まなくても普通にもらったらいいのに。泥棒に入られたら警戒して鍵を厳重に掛けてしまう。そういえば、モーテルから出たダシュラーを見てポールが部屋に侵入した時、ドアがすんなり開いていた。早業でこじ開けたのか?この前泥棒が入ったのに鍵を掛けないのはおかしい。泥棒に鍵を壊されたのなら管理人に言って修理してもらうはずだが?合鍵を持っていたとしたらどこで手に入れたのか?これがどうにもわからないんだなぁ~。
- 廃車置場で脅迫状を見せてダシュラーに指紋を付けさせたが、脅迫状に指紋を残す馬鹿はいない。
- モーテルに入った時は黒い鞄だったのに、廃車置場では茶色の鞄に替わっている。黒い鞄に銃があったし、茶色の鞄から銃を取り出した。どういうこと?
- 刑務所の囚人を写した写真集なんて出版できるのか?
- 最後の詰め方が「犯人に犯行に使ったカメラを選ばせる」というもの。しかし、カメラを取るかどうか博打すぎる。カメラを取らなかったらどうするつもりだったのか。それにあのモノクロしか写せない旧型ポラロイドカメラならポラロイド社の「Polaroid Land Camera 150/800」だと写真家のポールなら特定できてもおかしくないのでは?
- ネガの裏焼きも強引で、でっちあげの証拠で逮捕しようとしているのも印象がよくなかった。妙な正義感を持っている方はコロンボが証拠を捏造したと批判するでしょうなぁ。
- 奥の刑事に「今の目撃したね?」と確認した時に左手で指差していたのが、カメラが引いた画になった時にコロンボが右手で指差している編集繋ぎミス。第19話『別れのワイン』でも挙げている手が画面切り替えで逆になるという同じようなミスがあった。
- コロンボが最後のポールの問いかけに答えず、後をホフマンに任せて、自分はコートを半分引っ掛けてテーブルに座る場面の謎を考察します。――⑤コロンボが教会に行く途中にあくびをしていたことを覚えているでしょうか?⑥警察署でホフマンに「少し眠ったらどうです?」と言われ、⑦サンプソン警部との会話でも「頭がいっぱいで夜も眠れんのですよ」と睡眠不足だと3回もアピールしている。――もうおわかりですよね?答えは「寝不足で疲れていてすぐにでも寝たかったから」という簡単なことでした。それだけコロンボが寝る時間も惜しんで戦わないといけないほど、いっぱいいっぱいになるくらいの強敵だったわけです。
名場面・名台詞
ポールがダシュラーに
脅迫状を見せて
妻が誘拐されたことを教える。
ダシュラー「奥さんさらわれた……。それで、だ、誰がやったのかはわかりませんか?」
ポールが懐から銃を取り出す。
ポール「気の毒だが、君だということになっている」
ポールがダシュラーに銃を発射する。
コロンボが葬儀中、
カメラで参列者を撮影していた。
なんのつもりかねと訊ねるポール。
コロンボ「とにかく撮りたかったんです。大勢集まってましたからね」
ポール「ああ、家内は付き合いが広かったからね」
コロンボ「ですからねぇ、ここでうまく写真を撮っとけば、共犯が割れるんじゃないかと思ったものでね」
ポール「……共犯だって?」
コロンボ「はい。犯人が犯行現場に現れるアレと同じでね、よくあるんです。それに備えてパチパチ撮りまくったわけです」
ポール「君は共犯と言うが共犯などいないはずだろ。ダシュラーが家内を殺した。裏付けの証拠はいくらでもある」
コロンボ「ダシュラーが一味であることは明らかです。大方の人は一件落着にしてもいいと思ってるんでしょうが、でも確かに共犯者がいるんです」
ポール「自信たっぷりだね」
コロンボ「引っかかることがありましてねぇ。脅迫状覚えてます?」
ポール「ああ」
コロンボ「こうありましたよねぇ。“我々”は奥さんを預かったと」
ポール「それは単なる言葉のあやだろう」
コロンボ「……かもしれません。でも、金の件がおかしい。ダシュラーは刑務所から出たばかりだった。就職した形跡はない。しかも紙入れには2、300ドル持ってたんです。モーテルの部屋代もすんなり払ってますしね」
ポール「それは何の証拠にもならん」
コロンボが写真集をベタ褒めするので
気分がいいポールが饒舌になる。
ポール「カメラとは画家のいわばパレットだ。芸術性あっての道具なんだ」
コロンボがポールを疑っている。
気分が悪くなるポール。
ポール「君はどういうわけか家内の死は僕の責任のように思ってる。いや、否定しなくていいぞ。君は人のズボンに食いついたら離れない、小うるさくて生意気なスピッツと同じだ。僕がどっちを向こうとその度に、君はいかにも無邪気そうな顔をして僕を見上げている」
コロンボ「この事件に不審を抱いていることは否定しませんが……」
ローナ「刑事さん……。お願いです。先生をこれ以上、苦しめないで」
ポール「いいんだよローナ」
コロンボ「申し訳ありません」
ポール「そう思うなら僕の後をつけ回すのはもうやめたらどうだ?2日後には僕は(ローナ)マグラスさんと一緒にフィリピンへ旅立つ。そう、フィリピンだ。あそこならうるさい刑事が付きまとうことなく仕事ができる。それとも付いて来るかね?」
コロンボ「いやぁとんでもない」
ポール「もし付いて来るつもりなら、人権侵害で訴えてやるからな!」
コロンボ「そんな必要ありません。しつこいのは心得てます。これも仕事でしてね。もうお邪魔しません」
コロンボが現像した
誘拐されたフランシスの拡大写真。
時計は午前10時を指している。
……が、何か違和感がある。
コロンボ「ここに時計が写ってるでしょ。間違いなく10時を指してます。はっきりとね。10時ですよ。あんたが奥さんと2人っきりで自宅にいたと申し立てた時間です」
ポールは小馬鹿にしたように笑う。
ポール「フフフッ……。いやぁ君は傑作だよ。見事だ。その顔、その目。まったく、言いようがないな」
コロンボ「これこそ決定的な動かぬ証拠だと思います」
ポール「ハッハッハ、証拠?まだわかってないのかね?君は引き伸ばす時、裏焼きさせてしまったのさ。つまり引き伸ばしのプロセスで逆に焼いたので逆さまになってしまったんだ。時計は10時ではない。本当は2時を指している」
コロンボ「……でも、そんなことってあるでしょうか」
ポール「ああ、素人にはよくあることさ」
コロンボ「あたしにはよくわからないな……」
ポール「オリジナルの物と比べてみたまえ。なんなら実験してやろう。そうすりゃ君のミスがわかる」
コロンボ「オリジナル?」
ポール「ああ、オリジナルのスナップだよもちろん」
コロンボ「……そいつは困りましたなぁ。実は暗室で作業手伝ってた時にですねぇ、うかつな話でオリジナルの写真をうっかり塩酸の入れ物に落っことしちゃったんですよ」
ポール「なんだって!?」
コロンボ「そうなんです。元の写真は無いんです。溶けちゃったんで」
ポール「……すると何か?こんな子供だましの証拠で僕を罪に落とそうってのか!?」
コロンボ「とんでもない!そんなつもりありませんよ。しかし、とにかくこれは証拠です。作業にもミスは無かった。そうあたしは確信してます。(ホフマンに向かって)ホフマン刑事、権利の説明してあげて」
ポール「待った!そんなことをしたら傷つくのは君の方だぞ。がっかりさせて気の毒だが、君は依然として僕の無実の証拠を握っている」
コロンボ「は?」
ポール「写真は無くなっても心配ない。(そう言って証拠品の棚からダシュラーのポラロイドカメラを取り、裏蓋を開けて見せる)そら!このカメラのネガを見てみたまえ。僕の言うとおりのはずだ」
コロンボがホフマンに訊ねる。
コロンボ「君、今の目撃したね?」
ホフマン「ええ、しました」
コロンボ「(隣の刑事にも訊ねる)今の行動、ちゃんと目撃したね?」
隣の刑事「はい」
コロンボ「(その奥の刑事にも訊ねる)君も今の彼の行動、目撃したね?」
奥の刑事「はい、しました」
ポール「何を目撃したんだって!?」
ホフマン「あんた自分で罪を認めたんですよ。カメラを確認したんです」
コロンボ「そう、ダシュラーのカメラ。あんたいくつかある中で、これもこれも取らなかった。他のカメラには手も触れないで問題のそれを取り上げた」
ポール「……」
コロンボ「そう、奥さんの写真を撮ったのは確かにこのカメラです。どうしてそれがわかったんでしょうねえ。あんた自身が撮影したんじゃない限り、このカメラに奥さんのネガがあるとはわからないはずですよ」
ポール「……」
コロンボ「残念でしたね」
ポール「……もし、そのカメラさえ手に取らなかったら」
何も言わないコロンボに、ポールが察する。
ポール「取ると確信してたのか?逆に焼いたのもミスじゃなかったんだ。……わざとやったんだ」
好事家のためのトリックノート(トリック分類表)
準備中です。