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Channel: 裏旋の超絶☆塩レビュー
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【ネタバレ注意】映画『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』の伏線解説と考察。

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「あなたの未来がわかるって言ったら、どうする?」

 

こちらは映画版の

『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』の感想です。

小説版の感想はこちら

【ネタバレ注意】七月隆文『ぼくは明日、昨日の君とデートする』の感想。

 

 

『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』

(2016年)日本映画

 

 

<あらすじ>

京都の美大に通う20歳の学生・南山高寿(福士蒼汰)は、大学まで向かう電車の中で出会った女性・福寿愛美(小松菜奈)を一目見た瞬間、恋に落ちた。勇気を振り絞って声をかけ、「また会える?」と約束を取り付けようとした高寿だったが、それを聞いた彼女は、なぜか突然涙してしまう――。彼女のこの時の涙の理由を知る由もない高寿だったが、不器用な自分を受け入れてくれる愛美にますます惹かれてゆく。そして、親友・上山(東出昌大)からの後押しもあり、初めてのデートで告白をして、見事OKをもらい交際をスタートさせる。初めて手をつなぎ、初めて名前で呼び合う、そんな初めてのことがあるたびに泣く愛美のことを少し不思議に思いながらも、より愛美への愛情を深めていく高寿。そんな二人の関係は、誰もがうらやむ程に順調で、すべてがうまくいくものだと信じていた。しかし……
「わたし、あなたに隠していることがある」
ある日、高寿は愛美から想像もできなかった大きな秘密を明かされる。そして、二人の運命は“すれ違い"始める―――。

 

<スタッフ>

監督 三木孝浩

脚本 吉田智子

原作 七月隆文『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』

製作 川田尚広

    西野智也

製作総指揮 山内章弘

音楽 松谷卓

主題歌 back number「ハッピーエンド」

撮影 山田康介

編集 坂東直哉

 

<キャスト>

福士蒼汰(南山高寿)

小松菜奈(福寿愛美)

東出昌大(上山正一)

清原果耶(15歳の福寿愛美)

山田裕貴(林)

大鷹明良(南山たかのり)

宮崎美子(南山えいこ)

 

運命的な一目惚れをした主人公が
やがて明かされる彼女の秘密を知り、
奇跡のような時間を過ごす
悲しくも美しいSFラブストーリー。
 

小説版を読んだ時に

これは売れる!と確信したが

予想通りの大ヒットになった。

その大きな要因が

愛美の秘密の設定で

この設定があるために

2回目の観賞時に切なさが倍増する。

 

○○に似ているなどの批判は

小説版の時にもあったが

エンタメ作品として

面白く仕上がっていると思う。

小説の時、

図で説明があればよかったのにと思ったが

映画版では説明図があるので

わかりやすくなっている。

 

映画版のキャスティングを見た時、

美男美女すぎるかなと思ったが

実際に観てみると

これ以上ないピッタリのキャスティングで

ものすごく感情移入できた。

 

小松菜奈さん、カワイイ~。

ホクロがいいよね。

 

主題歌の「ハッピーエンド」も

すごく耳に残る良曲。

予告編が気になったら

ネタバレを見る前に映画を

ご覧になってください。

ちょっと気になったのは

この予告で電車が通った後、

福士蒼汰くんが泣いてるシーンが

本編でカットされていること。

なんで?

 

☆☆☆☆☆ 犯人の意外性

☆☆☆☆☆ 犯行トリック

★★★★☆ 物語の面白さ

★★★★☆ 伏線の巧妙さ

★★☆☆☆ どんでん返し

 

笑える度 -

ホラー度 -

エッチ度 △

泣ける度 ◎

 

評価(10点満点)

 8点

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

------------------------------

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※ここからネタバレあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-------------------------

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1分でわかるネタバレ

 

 

<結末>

福寿愛美は高寿とは別の世界の住人だった。

高寿とは逆の時間で生きている彼女は

この世界には30日間しかいられない。

高寿にとって30日目の3月16日から

愛美は過去に遡っていたので

高寿の未来がわかるのだ。

 

2人は運命で結ばれた存在で

5歳の高寿を助けたのが35歳の愛美、

5歳の愛美を助けたのが35歳の高寿。

そして2人は同じ20歳で

やっと恋人同士になれた。

 

しかし別れの時は来る。

高寿は恋人でいられる時間を大事に過ごし

愛美は台本通りに演じて

この歴史を壊さないように務めた。

そして最初の電車の中の

出会いの場面で物語は終わる。

 

 

愛美の正体は?

 

小説版で解説しているのと重複するが

主人公の高寿の住む「高寿の世界
その世界にとてもよく似た隣の世界がある。
仮に「愛美の世界」としておく。

そのパラレルワールドの
愛美の世界」は時間の流れが逆転している。
こちらでは未来に進んで行くが
あちらの世界の住人は過去に遡って行く。
実際にはどちらも未来に進んでいるのだが

逆転しているからそのように見える。

例えるなら
上りと下りの電車。
上りの電車に乗っていると
下りの電車は逆に進んでいる。
2つの世界はそれと同じ関係。
 

この世界間の旅行にはルールがあって
愛美の世界からしか行けない。
しかも深く干渉しないように、
30日間しか滞在できず、
5年ごとに区切られている。
または一度旅行すると、
5年後まで旅行できないか、
あるいは
2つの世界は5年周期で
最も近づくから
その時しか行き来できない
という設定かもしれない。

 

福寿愛美はその隣の世界の住人で、
5歳の時に家族と「高寿の世界」に旅行に来た。
そこで高寿に命を助けられ、
彼を慕うようになった。

2人の時間軸はこうなる。

(時間の流れ)→→→→→→→→→
愛美- 5歳-10歳-15歳-20歳-25歳-30歳-35歳 

高寿-35歳-30歳25歳-20歳-15歳-10歳- 5歳

(時間の流れ)←←←←←←←←←

最大40年の時間差があって、
20歳の時に
2人の時間が交差している。
それが2017年のこと。
この話の舞台である。

 

 

愛美に秘密があるという設定の
伏線はわかりやすく張ってある。

 

愛美がキリンの絵を見て、

「これ、教室に張り出されるやつだ」と言う。

高寿16日目(3/2)の学校で秘密を話した時に

教室に展示してあったから知っている。

「お尻のラインがいいね」とも言うが

こちらは高寿が愛美を見て

「いい曲線だな」と絵描きとしての目線で

見たことがあるから真似をしている。

 

連絡先を尋ねられた時、

後で忘れ物をする

メモ帳をわざと見せて

「こっちじゃなかった」と言っている。

 

愛美が「薬缶がないからお湯はこれで沸かす」と

片手鍋を出し「マグカップはそこ」と指示をする。

実は後に高寿が愛美に教えたことと

同じことをやっている。

 

 

ビーフシチューの隠し味に

チョコレートを入れたこと。

高寿はうちの家も同じ味だと不思議に思うが

高寿29日目(3/15)の南山家におじゃました時に

隠し味にチョコレートを入れる話が出る。

この時に聞いた。

 

その他、

5歳の愛美が屋台の爆発事故で

かばってくれた男性は35歳の高寿。

5歳の高寿が宝ヶ池で溺れた時に

助けてくれた女性は35歳の愛美。

10歳の高寿に

鍵付きの箱を預けた女性は30歳の愛美である。

 

 

愛美の泣くシーンまとめ

 

2回目に観た時に

愛美の視点で見ると泣けてくる。

 

「高寿にとっての初めて」は

「愛美にとっての最後」だったから。

 

愛美は一番つらい状況にいる。
何も知らない高寿は
デートを重ねて
最後は愛し合って別れたが、
愛美は恋人から
他人に戻っていく過程を
経験しないといけない
という残酷さ。

それでいて彼女は
高寿に何ひとつ文句を言わず
ひたすら彼のために尽くした。

 

 

高寿と初めて結ばれた夜。

布団をかぶって泣く。

明日からは

抱きしめあうことすらできない。

 

高寿が初めて「愛美」と呼ぶ。

また泣きそうになっていると

高寿にからかわれる。

明日からは

「愛美ちゃん」になる。

 

高寿が初めて手をつないだ日。

愛美は思わず涙ぐむ。

明日からは

手をつなぐこともできない。

 

初めて「高寿くん」「愛美ちゃん」と

下の名前で呼びあった日。

愛美はほこりが目に入ったと言って

後ろを向いて泣く。

明日からは

「南山くん」と苗字で呼ばなくてはいけない。

 

高寿から「付き合ってください」と言われ

「よろしくお願いします」と言いながら

涙を浮かべる愛美。

明日からは

恋人同士じゃなくなってしまう。


高寿にとっての最初の日。
高寿はこれから始まる幸せに
期待を膨らませながら別れる。

しかしそれは

愛美にとって最後の日。


涙をこらえながら振り返り、

精一杯の笑顔で
「また明日ねっ!」と答える愛美。

この時の愛美の胸中を考えると
切なくて泣けてくる。
愛美にとっての明日はもうないから……。

 

 

よくある疑問

 

Q,21日目(3/7)に駅で抱きしめた時、

愛美が「聞いてないよ、これは」と泣くが

高寿から聞いてなかったということなの?

 

高寿は前日に喧嘩をして

翌日に愛美の気持ちを知って謝るのだが、

この日駅で待っていることを

30日目で言わなかったようです。

おそらく直接謝りたいのと

驚かせたい気持ちがあったのだと思う。

 

Q,夜12時になったら、急に愛美の姿が消えたが

あれはいったいどうなってんの?

 

映画では詳しい説明が無かったが、

原作では異世界から

こちらに来ている旅行者を

強制的に時間調整するシステムがあるらしい。

そのため、

どこにいても夜12時を過ぎると

愛美の身体は宿泊している家に戻り

(高寿にとって)1日前に遡る。

 

Q,鍵付きの箱に写真が入っていたけど

あれはどういう経緯をたどったのか?

 

この箱の中に入っていた家族一緒の写真は

3月15日に撮った写真で、

愛美が自分の世界に持って帰る。

10年後にこの世界に来た時に

鍵付きの箱に入れて

10歳の高寿に渡した、と考えられる。

 

この世界に来る時に

携帯電話などが持ち込みできないらしいが

写真は可能なのかどうかは不明。

この世界のどこかに

10年間も保管しておくこともできそうだが、

愛美にとっては

唯一の高寿の写真なので

手放さないだろうと思う。

 

Q,高寿は将来、作家になったの?

 

原作でも映画でも高寿は「作家」

愛美は原作は「女優」ですが

映画ではとくに説明はありませんでした。

 

Q,彼女にとっての最終日、

彼女は朝高寿のアパートから出発して

京阪に乗り込みます。

なぜわざわざアパートまで行ったのでしょう?

 

あの日、

まだ「入居者募集中」の

高寿のアパートを訪ねたのは

これが最後だからという思いから。

2人にとって忘れられない時間を過ごした

大切な場所だから。

 

原作小説との違い

 

映画化する際に

原作から改変やアレンジがあるかと思ったが

ほぼ原作通りです。

 

改変としては

5歳の高寿が35歳の愛美に助けられたのが

原作では阪神淡路大震災だったのが

宝ヶ池で溺れたことになっている。

これは地震に対して

デリケートになっているのかもしれない。

 

原作では15歳の愛美が

25歳の高寿から5年後のことを

たくさん聞いて台本を作った話は、

会話の中で出てくるだけだった。

映画では15歳の愛美が出てきて

25歳の高寿が

愛美のスケッチをプレゼントしている。

 

最後の終わり方は原作通り。

エピローグがプロローグにつながっている。

 

印象的な台詞はやっぱりこれ。

この作品を代表する名台詞です。

「私、これから少しずつあなたの過去に戻って行って、あなたと恋人じゃなくなっていくんだね。すれ違って行くんだね」

「すれ違ってなんかない。僕たちはすれ違ってない。端と端を結んだ輪になって、ひとつにつながっているんだ。2人でひとつの命なんだ」

 

どうしてそこまでして

2人は愛し合うのか?

 

やっぱり恋愛は

理屈じゃねーんだよなぁ。

どれだけ距離が離れていようと

住んでいる世界が違っていようと

好きになったもんはしょうがない。

こんな愛のかたちがあっても

良いんじゃないかと思う。

 

 

エンディングで

back numberの「ハッピーエンド」が流れるが

果たしてこのエンディングは

ハッピーエンドなのか?

 

「今すぐに抱きしめて 私がいれば何もいらないと

そう言ってもう離さないで なんてね嘘だよ さよなら」

 

俺はハッピーエンドだと思います。

この世界のルールを壊さず、

自分たちのできる範囲で愛し合った。

だからハッピーエンドなんだという思いと、

この曲がタイトルで「嘘」をついてまで

気持ちを抑えている歌詞が

愛美の姿と重なるから……

たとえ嘘でも

たとえ一瞬の夢でも

「ハッピーエンド」であってほしい。

 

「青いまま枯れていく あなたを好きなままで消えていく

私をずっと覚えていて なんてね嘘だよ 元気でいてね」

 

 

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