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【ネタバレ注意】映画『ロスト・ボディ』の感想。

「『永遠のこどもたち』『ロスト・アイズ』の

製作チームが放つ死体失踪スリラー。」

 

 

 

『ロスト・ボディ』

[EL CUERPO]

(2012年)スペイン映画

 

<あらすじ>

ある男が恐怖のためにパニックに陥り、トラックに轢かれてしまう。警察が現場に到着し、轢かれた男性は近くの死体安置所の警備員であることが判明する。死体安置所では、3号室からマイカ・ビジャベルデ(ベレン・ルエダ)という女性の死体が忽然と姿を消していた。ペニャ・ハイメ(ホセ・コロナド)警部は、失踪した死体の夫であるアレックス・ウジョア(ウーゴ・シルバ)に連絡し、死体失踪事件の調査を開始する。実はアレックスは、金持ちで支配的な妻マイカの存在をかねてより疎ましく思っており、そんな中で知り合った大学生カルラ・ミレル(アウラ・ガリード)と愛し合うようになっていたことから、妻を毒殺していたのだ。しかし、遺体から証拠が出ないような特別な薬を使っていたので、そもそも遺体を盗む必要などなく、誰が遺体を盗んだのか、アレックスも分からない。密かにカルラと連絡を取り合いながら、アレックスも事件の真相を探ろうとするが、その一方で、マイカを殺害した薬をはじめ、次々と犯行を示す証拠が現れ、アレックスは追いつめられて行く……。

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<スタッフ>

監督・脚本 オリオル・パウロ

脚本 ララ・センディム

製作 ホアキン・パドロ

    マル・タルガローナ

    メルセデセ・ガメロ

    ミケル・レヤルサ

音楽 セルヒオ・モウレ・デ・オテイサ

撮影 オスカル・ファウラ

編集 ホアン・マネル・ビラセカ

 

<キャスト>

ホセ・コロナド(ペニャ・ハイメ警部)

ウーゴ・シルバ(アレックス・ウジョア)

ベレン・ルエダ(マイカ・ビジャベルデ)

アウラ・ガリード(カルラ・ミレル)

クリスティーナ・プラサス(シルビア・タピア)

ジョアン・パブロ・シュック(パブロ)

パトリシア・バーガロー(ノルマ)

シルビア・アランダ(ルート)

アイナ・プラナス(子供時代のエヴァ)

 

 

死体安置所から

今日死んだばかりの女性の死体が消えた。

警察は夫を呼んで事情を聴くうちに

彼が妻を殺害して

死体から証拠が出ないように

死体を隠したのではないかと疑う。

犯人である夫は

殺害計画が失敗したのではないかと不安になる。

妻を毒殺したはずなのに、

一時的に仮死状態になって

死んだふりをしていた可能性があったからだ。

復讐に怯える夫の周りで

次々と奇妙な現象が起き始める……。

というサスペンス・スリラー。

 

原題の「El Cuerpo」は『死体』のこと。

死んだ妻の死体が消失し、

まるで生き返ったかのような怪現象が発生。

果たして本当に妻は死んだのか?

生きていて仕返しをしているのか?

幽霊の仕業なのか?

第3者の仕業なのか?

物語は嵐の中の法医学研究所内で

夫の回想シーンを交えながら展開する。

先は読めそうで読めない。

 

これは掘り出し物。

あまり期待してなかった分楽しめた。

個人的には

「8時間」の伏線回収が秀逸。

 

ラストのどんでん返しは

予想を越えて来た。

しかしご都合主義すぎて

「そんなに上手くいかんやろ~」と

ツッコミたくなる場面も多い。

毒物の設定や

その復讐のきっかけや

騙す側がやり過ぎているラストが

納得できない原因だろう。

いくら○○のためとはいえ、

アイツと○○○するか?とか。

他に方法あるでしょ。

 

印象に残りまくるのが

便器の中の紙を食べるシーン。

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アレックスが証拠品の紙を破って

便器に捨てて流そうとするが

壊れていて水が流れない。

どうした?と警官が近づいてくるので

きったない便器の中の紙を拾って

無理矢理食べて飲み込もうとする。

ここはオエッと気持ち悪くなったが

すさまじい執念だと思った。

 

おっぱい情報。

アウラ・ガリードが脱いでます。

ほんの一瞬だけど。

この娘は美しいですね。

 

印象に残るテーマソングも良い。

どんでん返しの後

エンディングでこのBGMが流れると

絶望感を与えてくれます。

 

Wikipediaにネタバレがあるので

これから観ようと思う人は

Wikiもこの下の解説も読まないでください。

 

★★★★★ 犯人の意外性

★★☆☆☆ 犯行トリック

★★★★☆ 物語の面白さ

★★☆☆☆ 伏線の巧妙さ

★★★★☆ どんでん返し

 

笑える度 -

ホラー度 ◎

エッチ度 ○

泣ける度 -

 

評価(10点満点)

 8点

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

------------------------------

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※ここからネタバレあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-------------------------

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1分でわかるネタバレ

 

○被害者 ---●犯人 -----動機【凶器】

マイカ・ビジャベルデ ---●アレックス・ウジョア ---障害の除去【毒殺:TH-16】

アレックス・ウジョア ---●カルラ・ミレル(エヴァ)黒幕 ペニャ・ハイメ警部> ---憎悪【毒殺:TH-16】

 

<結末>

妻マイカは生きていて

カルラを殺して復讐しようと

しているのだと思いこむアレックス。

しかし林の中で

マイカの死体を見つけた時、

アレックスは完全にパニックに陥る。

それでは自分の罪を知って

告発してきたのはいったい誰だ?

 

カルラという女はいない、

妻を殺す動機として作った幻だと警部は言う。

アレックスは恐ろしくなって逃げ出すが

身体が急にいうことを聞かなくなり倒れる。

そのアレックスを見下ろしながら警部は語る。

 

10年前、

私たちの車に

信号無視をした1台の車が衝突して来た。

その時の事故で妻は死亡したが、

幼い娘が逃げた犯人の顔を覚えていた。

その犯人とはアレックス、お前だ。

娘はカルラとしてアレックスに近づき

妻を殺すように仕掛けた。

 

マイカの死体を隠して

アレックスを追いつめたのは復讐の為。

そしてエヴァは

マイカの殺害に使った毒薬を

密かにアレックスに飲ませていた。

それがようやく効いて来て

アレックスはペニャ警部に

見下ろされたまま息絶えるのだった。

 

 

どんでん返し

 

この映画の

どんでん返しは2回。

 

まずは最初のどんでん返し。

愛人カルラが消えて

林の中で死体袋が発見される。

カルラが殺されたのかと思って

アレックスが死体袋を確認する。

その中身は……マイカの死体だった。

つまりマイカは本当に死んでいたのだ。

 

ここで今まで恐れていた

マイカ幽霊説が消える。

そしてペニャ警部が

アレックスに不思議な台詞を言い放つ。

「お前は弱いから

カルラという妄想を生み出したんだ」

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カルラという女は存在しない。

大学にもアパートにも彼女の痕跡がなかった。

警部が言うにはカルラは

前から妻を殺したかったのに

勇気が出ない自分が生みだした幻

架空の愛人を作ることで

殺人を実行に移したんだ、と。

頭が混乱したアレックスは逃げ出した。

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ここで一瞬、

妄想オチかと思わせておいて

第2のどんでん返し。

 

ペニャ警部は

8時間も演技をするのは

辛いだろうと同情する。

そして今日は妻の命日だと語り出す。

10年前、

信号待ちをしていたペニャ警部の車に

1台の車が信号無視して突っ込んで来て

助手席の妻ルートは死亡した。

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加害車両は逃げたが

後部座席に同乗していた娘が

相手のナンバープレートを覚えていた。

 

ペニャ警部は

1人の女性の写真を見せる。

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この顔は……カルラ!?

カルラは架空の女性だが実在していた。

ペニャ警部の娘エヴァとして。

娘がカルラとして

アレックスに近づいたのである。

ここで全ては

ペニャ警部とエヴァによる

アレックス夫婦に対する

復讐計画だったことが明かされる。

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水色はミスリード紫色は伏線です。

 

 

マイカの「冗談を言ってからかう癖」

実は生きているんじゃないかというミスリード。

結婚式で結婚するのが嫌だと言い出したり、

嘘の電話をしてアレックスを焦らせたり

全く本心がつかめないキャラ。

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こういうイラッとさせる癖が殺害の動機でもある。

 

マイカの死体を死亡診断した

シルビア・タピア医師が

「強硬症(カタレプシー)」ではないかと疑うので

何らかの薬で仮死状態になっていたと思わされる。

マイカが製薬研究会社の社長夫人なのも

神経弛緩剤に詳しそうなことに一役買っている。

 

 

ペニャ警部の復讐計画だという伏線は

まず家族構成を理解する必要がある。

 

ペニャはルートという妻を亡くし

心に大きな傷を負っている。

娘エヴァはベルリンに住んでいて

休暇中に2年半ぶりに会って

戻って来たところだという。

ここで大事なのは娘がいるという事実。

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この娘とはカルラのことだった。

彼女は普段はベルリンに住んでいて

必要な時だけアレックスに近づき、

できるだけ痕跡を残さないようにしている。

 

黒幕がペニャ警部だと推理するのは

はっきり言って難しい。

彼が妻の死を後悔していることは出てくるが

妻の死とアレックスとの接点が

終盤まで出て来ないからだ。

 

カルラ=エヴァもヒントが無い。

カルラにベルリンなまりのようなものがあれば

エヴァに繋がる伏線になるだろうが

日本人にはよくわからなかった。

エヴァの年齢も出て来ないし。

 

ペニャ警部自身が

死体を盗んだ犯人の動機の1つに

「個人的な恨み」と指摘するのが面白い。

ここでやっと本音が出た。

 

ペニャ警部が

何度もタバコを吸いに外に出る

その後でアレックスの周りに

証拠品が置かれるのも暗示的。

 

アレックスが社長になる前、

大学の講師だったという話は

マイカとの会話の中に出てくる。

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警部の事情聴取でも

大学で科学を教えていた話が出る。

エヴァとアレックスの出会った場所が大学ですから

この経歴は重要。

 

それ以外の伏線では

タバコを吸いたいアレックスが

トイレでタバコを吸っていたので

破いた紙を飲み込む時に

個室に閉じこもっても不審に思われずにすんだこと。

煙にスプリンクラーが反応して

建物の中が水浸しになって混乱する。

 

そして

毒薬の効果で

8時間後に死にいたるという伏線は

カルラがアレックスに毒を飲ませてから

8時間後に決着することで

綺麗に回収されている。

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アレックスは

マイカが心臓発作で死んだことに対して

誰にでも起こり得ることだと

疑われないようにするために

自分も2年前に

軽く心臓発作になったことがあると話したが

自分が同じ心臓発作で死亡しても

「以前にもあった」と思われてしまうから

殺されても疑われないようになってしまった。

 

 

よくある疑問

 

Q,毒薬「TH-16」とはどんな薬?

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飲みものに混ぜるだけで

心臓発作を誘発する毒薬。

爬虫類から抽出した液体で

血中に入ると投与から8時間後で

心停止を起こす。

死体に痕跡は残らない。

 

Q,「強硬症」と言い出したシルビアは

ペニャ警部と長い付き合いがあるから

グルでミスリードしたのか?

 

おそらくグルではないでしょう。

エヴァがベルリンにいると信じているようですし

復讐計画のことは聞かされていないと思います。

 

Q,死体安置所の監視カメラを壊したり

遺品が入ったロッカーをこじ開けたり

トイレにビジネスクラブの紙を置いたのは誰?

 

死体安置所内の行動はペニャ警部。

死体を運んだり、

警備員を脅したり、

携帯や証拠品を残したり大忙しだった。

外部の行動はエヴァ。

アラベスクやアレックスの家の中に

建物の見取り図や車に証拠品を残した。

 

これは2人の復讐計画なのだから

2人以外の協力者はおそらくいないはず。

しかし一歩間違えば

警部自身の痕跡も残って疑われかねない

危ない計画だったように思う。

 

わざとスプリンクラーを作動させて

館内の証拠を消そうとしたのは

ペニャ警部だったのかもしれない。

 

Q、スプリンクラーが作動した時、

アレックスがカルラに電話をしたら、

後ろの車に

何度もクラクション鳴らされてましたが

あの時カルラはどこにいたのか?

 

話の流れからすると

「アラベスク」のトイレに

携帯電話を置いてきた後。

彼女は警察車両の回転灯を持っていたので

移動もスムーズにできたのだろう。

 

Q,マイカはアレックスの浮気に気づいていたか?

 

浮気していることは気付いていた。

その原因は自分に魅力(若さ)が

無いからだと思っている。

2人でベッドで眠っている時

カルラからのメールを見るアレックスの後ろで

カッと目を開く演出も

浮気に気づいていることを示唆している。

 

ハビエル・アロンソは

マイカが雇った探偵だが

まだ何も掴んでいなかった(無能)。

旅行で留守にしていて、

警部にとって都合のいいことから利用される。

写真も盗聴もエヴァが自分でやったことだ。

 

ちなみにレストランで会ったこの男が

アロンソだったかどうかは不明。

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探偵が調査する相手の前に

堂々と出てくるとは思えないが……

 

Q,マイカは毒入りワインをすり替えたの?

 

いいえ。すり替えはありません。

だから毒を飲んで死亡した。

あの映像はアレックスの想像で

視聴者を騙すためのイメージ映像です。

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Q,カルラ(エヴァ)は

本気でアレックスを好きになったのか?

 

そうだと思います。

復讐計画のために近づいたが

彼を愛してしまっていたのだと思います。

だからアレックスのグラスに毒薬を入れる時に

入れるかどうか迷ってしまった。

アレックスに「どうした?」と聞かれると

「考え事……」と元気なく答えた様子からも

彼女が本当に彼を

好きになってしまったことが伺えます。

 

最後の仕事を終えた後で

泣いていたのも、

これで復讐を果たした安堵と

好きになってはいけない人を

好きになってしまった苦しさ、

自分も人を殺してしまった罪悪感から

ではないでしょうか。

 

Q,「2012年3月20日」が

アレックスとカルラが出会った記念日で、

その8ヶ月後というから

この物語は2012年11月。

ちょうど妻の命日に計画が実行されたが

8か月も待った理由は?

 

素直に考えればペニャ警部は

妻の命日に復讐を果たしたかったから

この日を選んだ、ということになります。

 

実際はアレックスとカルラの関係を築き、

奥さんを殺すにいたるまで

綿密に計画していたら

偶然この日になったという感じじゃないかな。

 

夜警が抵抗せず逃げて車に轢かれたり

大雨で道路が封鎖して

護送車が来れなくなり

邪魔が入らなかったのも幸運だったし、

ちょうど探偵が旅行に行っていたり、

偶然に助けられた部分も多い。

 

 

ヒントが少ない

 

このラストのどんでん返しを

予想できた方はいるのだろうか?

おそらく少数だと思うし、

「こいつが黒幕じゃね?」くらいに思っていたら

当たってしまったという感じじゃないかな。

それくらい真犯人は意外性がある。

 

しかし、

現実的にあの夜の大仕事を

警部1人でできるのだろうか?

死体を運ぶのはそうとう力がいるし、

警察の同僚の目を盗んで

動き回れるとは思えないのだが。

酒を止めたんなら

タバコも止めなさいよ。

最近トレーニングをしてるとか

体力をつけないと説得力が無い。

 

アレックスのスニーカーで足跡をつけたのなら

自分で履いたはずだが

足のサイズは合っているのか?

アレックスが「靴のサイズは42」と言った時に

「私もだが」くらいの台詞は欲しい。

そうしないと繋がらない。

靴のサイズが違うなら

「足が痛い」とか「途中で脱げた痕」とか

伏線があればよかったと思う

 

上にも指摘したが

エヴァ=カルラの伏線も無いし。

この映画のレビューで

「伏線をしっかり回収してる」と思ってる人は

大きな勘違いをしてる。

肝心な部分の伏線が足りません。

 

確かにラストは意外だが

どんでん返しを読まれたくないために

ヒントを隠し過ぎているのがマイナス点です。

 

ご都合主義な展開も冷める原因で、

憎い相手に抱かれる娘の心情が理解できないし

それを黙ってやらせ続ける父親もおかしい。

不倫して別れる展開になっても

殺害にまで及ぶ確信がどこにもない。

わざわざ奥さんを生き返らせてまで

旦那を怯えさせる必要がどこにあるのか?

その毒でさっさと毒殺しなさいよ。

 

初見はかなり驚けたのに

伏線を調べようと2回目を観たら

納得いかない粗が目立って

評価が下がってしまった。

 

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……余談ですが、

この奥さん最初は嫌な女だと思っていたが

愛情表現が不器用だっただけの

可哀想な女性でしたね。

 

 

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