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Channel: 裏旋の超絶☆塩レビュー
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【ネタバレ注意】刑事コロンボ『第8話・死の方程式』の感想・伏線解説・考察

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刑事コロンボ

#8『死の方程式』

[SHORT FUSE]

(1972年1月19日放送)アメリカ

(1973年3月18日放送)日本

 

 

 

<あらすじ>

スタンフォード科学工業創始者の息子ロジャー・スタンフォード(ロディ・マクドウォール)は、自分の追放と会社の身売りを画策する現社長で叔父のバックナー(ジェームズ・グレゴリー)の殺害を計画する。社長愛用の葉巻のケースに、ふたを開くとタイマーで爆発する仕掛けを施し、彼のリムジンに置かれたケースとすり替えた。やがて、車はロス郊外の山荘へ出発し、嵐の山道で爆発炎上した――。

 

<スタッフ>

監督 エドワード・M・エイブロムズ

脚本・原案 ジャック・ギリス

原案 レスター&ティナ・バイン

制作 リチャード・レヴィンソン&ウィリアム・リンク

ストーリー監修 スティーヴン・ボチコ

音楽 ギル・メレ

 

<キャスト>

ピーター・フォーク(コロンボ)ロサンゼルス市警警部

ロディ・マクドウォール(ロジャー・スタンフォード)スタンフォード科学工業創始者の息子

ジェームズ・グレゴリー(バックナー)スタンフォード科学工業社長、ロジャーの叔父

アイダ・ルピノ(ドリス・バックナー)その妻、ロジャーの叔母

アン・フランシス(ヴァレリー・ビショップ)秘書

ローレンス・クック(クインシー)社長の運転手

ウィリアム・ウィンダム(ローガン)副社長

エディ・クィラン(ファーガソン)車両係

 

感想

今回の犯人は科学者で

葉巻のケースに仕掛けた爆弾で

遠隔殺人を行うという話。

 

ロジャーの吹替えの声優が

野沢那智さん。

明るくチャラい感じで

叔父を殺すことに罪悪感を

全く感じてなさそうさが良かった。

笑顔で爆弾入りの葉巻ケースを

すり替えるシーンなんかとくにそうだ。

 

クライマックスの

ロープウェイという空中の密室で

繰り広げられる心理戦が印象的。

あの状況なので

犯人を追及する会話が

なぜか頭に入ってこない(笑)

犯人の笑い声で締めるというのも

かなり異色な終わり方だった。

 

そういえば殺人の場面も

ノリのいいジャズのBGMにのせて

犯人が陽気に楽しんでいる姿と

被害者が爆弾を開ける場面を

交互に描くという

一風変わった演出に挑戦している。

 

しかしながら

トリックが少なくて物足りないし

最後の追い詰め方もイマイチ。

1シーズンの好評を受けて

追加制作された1本ということで

プロットに粗も多いし

科学的にもご都合主義すぎて

俺はあまり好みじゃ無かったかな。

 

☆☆☆☆☆ 犯人の意外性

★★★☆☆ 犯行トリック

★★☆☆☆ 物語の面白さ

☆☆☆☆ 伏線の巧妙さ

☆☆☆☆ どんでん返し

 

笑える度 -

ホラー度 -

エッチ度 -

泣ける度 -

 

評価(10点満点)

 6点

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※ここからネタバレあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

犯行方法

○被害者 ---●犯人 -----動機【凶器】

①バックナー ---●ロジャー・スタンフォード ---障害の除去【爆殺:葉巻のケースに仕掛けた爆弾】

②クインシー ---●ロジャー・スタンフォード ---口封じ【爆殺:葉巻のケースに仕掛けた爆弾】

※①②は同時

 

トリック解説

科学が得意なロジャーは

爆弾をタイマーでセットして

犯人が現場にいない遠隔殺人の

「犯行トリック」を使っている。

 

まずは前準備として、

バックナーと同じ葉巻を吸う

ローガン副社長に嫌疑をかけるため

ローガンの部屋の葉巻ケースを1箱盗み

それに爆弾をセット。

 

葉巻のケースのふたを開けたら

1分後に爆発する仕掛けを作る。

冒頭でその実験シーンが映るが

はっきり言ってよくわからない(笑)

葉巻の1本1本が

カプセルの容器に入っていて

その中に爆発する液体(何かは不明)を

注いで針金のような導線を

ふたの裏に連動させていた。

 

時計の描写があって

時間にして1分後にパチッと火花が出た。

これで1分後に爆発するように

調整したということだろう。

 

この葉巻ケースをすり替えておくのだが

予定より早くバックナーが

パインワイルドの別荘に行くため

計画が前倒しになった。

社長のスーツケースと

コートを見たロジャーは

コートから葉巻入れを抜き取る。

(これは爆弾のケースを開けさせるため)

秘書のビショップの気をそらして

素早くこの作業を行った。

抜いた葉巻入れは後で机の下に落とす。

 

バックナーの車に近づき

車両係に自分の車を点検させている間に

車内の葉巻ケースと

爆弾葉巻ケースをすり替えた。

あとは事件が起きるのを待つだけだ。

 

ちなみに

叔母に取り入るために

クインシーのタイプライターで

ローガン副社長の嘘の報告書と

バックナーとビショップが浮気している

合成写真を用意しておいた。

 

この殺しに至る動機は

会社の身売りでクビになり

海外へ飛ばされること。

前からあったバックナーへの憎悪と

叔母の名前で金を使い込んだことが

バレることの口封じ。

すべて含めて障害の除去とした。

 

爆弾を仕掛けた遠隔殺人では

福山雅治が犯人役の

古畑任三郎の『頭でっかちの殺人』を

思い出す人も多いだろう。

 


 

コロンボが犯人を捕まえるために

犯人に仕掛ける「逆トリック」

今回はかなり印象に残った。

 

舞台はロープウェイという空中の密室。

コロンボはロジャーと

ローガン副社長を連れて

事件現場から発見された

「ある物」を持って

3人でロープウェイに乗り込む。

 

「ある物」とは現場で発見された

葉巻のケースだった。

奇跡的に箱は無事で

開封もされていなかった。

開封されてないことで

ロジャーは戸惑う。

では爆発は本当に事故で

エンジンが爆発したのか?

 

コロンボが葉巻のケースを

無造作に開けてしまい

ロジャーは落ち着きを失う。

それを開けたら

1分後には爆発するぞと

言いたいが言えない。

しきりに時計を気にして

最後はドアを開けて

葉巻ケースを捨てようとしたが……。

あれ1分以上たっても爆発しない?

そこでやっと自分が

踊らされていることに気づく。

 

すべてはコロンボの罠だった。

ロジャーのこの反応を引き出すために

もう1つ別の葉巻ケースを用意して、

誰の目にもわかるように

葉巻ケースに爆弾を仕掛けたのが

ロジャーであることを証明したのだ。

 

これが遠隔殺人の穴ですね。

視聴者は葉巻のケースを開けて

爆発しているのを知っているが

当の犯人は現場を見ていないから

最後まで爆弾が本当に爆発したのか

わからないところが面白いと思う。

 

これは逆もしかり。

視聴者はふたの裏に

針金が導線のようになって

葉巻に繋がっていることを知っているが

コロンボは実際の

爆破装置を見たわけじゃないから、

どんな装置なのかを知りません。

だからケースを

ロジャーにじっくり見られると

「あれ?これは俺の作ったやつじゃないぞ」

と気づかれてしまう危険があります。

 

そこでコロンボはふたを開けた後で

すぐ自分とローガンの隣に置いて

反対のロジャーから葉巻のケースが

見えにくいように移動させていました。

このテクニックに気づく方が

他にいるかどうか知らんけど

俺は上手いわーと思ったなぁ。

 


 

犯人がミスをしたり

偶然が重なって犯行が露見する

「発覚トリック」の紹介。

――が、今回は少ない。

 

①叔父の電話の録音を聞いている時に

ロジャーがやけに時計を気にする。

葉巻ケースにセットしたタイマー型爆弾がそろそろ爆発するから、いつ爆発するか不安になっていた。コロンボに「時計が狂うんですか?」と聞かれて、時計なんて誰でも見るでしょと誤魔化した。

 

②車は転落前に爆発した形跡が有り

車両係の証言では

直前に車を掃除していたから

車に爆弾を仕掛けるのは無理。

コロンボは車内にあった

葉巻のケースが爆発したとにらむ。

電話の録音でも葉巻が手元にないから、すぐにでも新しい葉巻のケースを開封しそうだった。つまり誰かが葉巻を隠して、ケースを開けさせようとしていたということ。

 

 

伏線解説

【ロジャーのカメラ趣味】

ロジャーは

カメラで写真を撮るのが趣味。

ビショップと会ったときに

「まさかあの写真を現像してたんじゃないでしょう?」

と心配された。

  • カメラ趣味はバックナーと秘書のビショップが浮気をしている合成写真を作るために必要な設定。なので、ロジャーにいつもカメラを持たせている。
  • ここでビショップが言う「あの写真」とはおそらくビショップの裸の写真のこと。ロジャーはビショップと寝ていたはずで、その時にエッチな写真を撮られた可能性が高い。ドリスに写真を見せる場面で一瞬合成写真が写るが上の方は2人の親密な様子、下の写真は裸で寝ているビショップのように見えた。この写真を見たドリスが烈火の如く怒って「こんな汚らわしいもの」と言ったことも裏付けているように思う。

 

【録音に爆発音が入っていない】

バックナーの電話の録音に

クインシーから葉巻のケースを

受け取ったらしい様子があったが

それを開ける様子も爆発音も

最後まで入っていなかった。

  • 結局「仕掛けた爆弾が爆発したかどうかわからない」のがポイントである。だから最終段階でロジャーは自白も同然の醜態をさらしてしまった。あれでもしも、録音にドカーンという音が入っていたらもう爆発しているから騙されたりはしない。「爆発音が入っていなかった」ということが後の展開の伏線になったと考えるのは深読みしすぎだろうか。

 

欠点や疑問など

  • ロジャーと秘書ビショップとの関係はビショップが尋問されたら絶対に口を割ると思う。クビにされたら真実を語ることに抵抗もなくなる。というか2人が付き合ってそうな雰囲気は周りも感じていそう。
  • 元警官のクインシーがロジャーの放蕩ぶりを調べていたが、その過程でビショップとの関係や叔父を亡き者にしようと企んでいそうなことに気づいても不思議は無いはず。
  • 爆発した薬品が何かとか細かい科学的な説明一切無し(おそらくはニトログリセリン)。リモコンで爆発させるならともかく、タイマーで爆発させるなら時計のような時間を計測するものをケースに仕込まないといけないのでは?
  • 留守電の最中にやたらと葉巻はどこだ、ダッシュボードにないとか状況を説明しすぎている。普通は電話中にそこまで葉巻を気にせんやろ。もしや叔父さん、ロジャーの罠を見破ってわざと葉巻のことを言ってるのかとすら疑っていた。
  • ドリスが「ロープウェイで行けばよかったのに」と言うが、あの夜の嵐の中でロープウェイは怖い。そもそもロープウェイで行く山荘で合併先の会社と話をするという設定自体がおかしすぎる。ヤバイ取引ならまだしも合法な契約と思えないんだが。
  • ロープウェイに乗ったコロンボが高所恐怖症な様子だったが、第2話でヘリコプターを操縦させられたときはそんな様子は無かった。もしやあれが原因で?
  • 最後ロジャーが笑いながら飛び降り自殺するんじゃないかと思った。もしもそうなったらコロンボどうするつもりだったの?前回も1人で対峙して銃を向けられたし、なんか危なっかしい。

 

名場面・名台詞

バックナー社長が行方不明になり

家に来たコロンボが帰り際に

ロジャーに質問する。

コロンボ「時計が狂うんですか?」

ロジャー「ん?」

コロンボ「時計」

ロジャー「いや、狂ってないよ。どうして?」

コロンボ「どうしてってこともないけど、さっき気にしてたでしょ?」

ロジャー「……何かと思えば。癖ですよ、よくあるでしょ」

コロンボ「それもそうですな。どうも、おやすみ」

 

コロンボがロジャーを訪ねて

爆弾が仕掛けてあった

可能性があると言い出す。

コロンボ「事件の解決は意外に近いかもしれませんよ。社長の電話はあんたにも聞いてもらいましたね。録音テープで。あたしあれから何回も聞き直してみたんです。あれにすべての鍵がある。……それからもう1つは、葉巻です。社長の葉巻について調べたいんですがね」

 

ロープウェイでコロンボが

ロジャーに犯行の動機があったが

葉巻には爆弾が

仕掛けられていなかったから

それは勘違いだったと言いつつ

爆弾の葉巻ケースを開けてしまう。

ロジャーは1分後には爆発すると思い

落ち着かなくて苛立つ。

ロジャー「ローガン、こいつのおしゃべりを今すぐ止めてくれないか。イライラしてくるんだ!」

ローガン「面白いじゃないか。数学みたいに明解で」

ロジャー「どいつもこいつも人を馬鹿にしやがって!」

コロンボ「そう数学だよ。こいつは死の方程式だ」

ロジャー「やかましい!黙れったら!!」

 立ち上がってドアが開かないか調べるロジャー。

コロンボ「ロジャーどうした、気分が悪いのか?」

ロジャー「うるさいな!……爆発する。早くそいつを放り出すんだよ!」

 ついには葉巻をよこせとつかみかかってケースから葉巻が散乱する。

 それを見ていたローガンがコロンボに質問。

ローガン「どうもわからんな。このケースはどこで手に入れたんだね?」

コロンボ「あなたの秘書です」

ローガン「私の秘書?」

コロンボ「3箱のうち1箱をお借りしました」

 この瞬間、ロジャーは騙されたことに気づいた。

 

好事家のためのトリックノート

4-A、凶器トリック

●爆殺

【爆薬入り葉巻ケース】

葉巻ケースのふたを開けると1分後に爆発する仕掛けを作り、移動中の車内で爆発が起こるように画策する。

 

8-C、犯人自白・告発トリック

●心理的

【犯人しか知らない情報】

爆薬入り葉巻ケースで死んだ被害者の事故現場からほぼ無傷の葉巻ケースが出て来て、犯人の見ている前でそれを開封して反応を見る。時間を気にしたり慌てて葉巻を奪おうとしてくるのは、自分が葉巻ケースに爆薬を仕掛けて殺そうとしていた証拠。

 

 

『刑事コロンボ』各話レビューまとめ


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