Quantcast
Channel: 裏旋の超絶☆塩レビュー
Viewing all articles
Browse latest Browse all 997

【ネタバレ注意】刑事コロンボ『第12話・アリバイのダイヤル』の感想・伏線解説・考察

$
0
0

 

刑事コロンボ

#12『アリバイのダイヤル』

[THE MOST CRUCIAL GAME]

(1972年11月5日放送)アメリカ

(1973年6月24日放送)日本

 

 

 

<あらすじ>

フットボールチームのゼネラルマネージャー、ポール・ハンロン(ロバート・カルプ)は、2代目オーナー、エリック・ワーグナー(ディーン・ストックウェル)の殺害を計画。熱戦で沸くスタジアムを抜け出すと、自宅のプールで泳ぐ彼を氷塊で殴って溺死させ、足を滑らせて頭を打った事故死に偽装した。コロンボはハンロンに目をつけるが、彼には犯行時刻には専用ボックスで電話をかけていたという鉄壁のアリバイがあった――。

 

<スタッフ>

監督 ジェレミー・ケイガン

脚本 ジョン・T・デュガン

制作 ディーン・ハーグローヴ

ストーリー監修 ジャクソン・ギリス

音楽 ディック・デ・ベネディクティス

撮影 ハリー・ウォルフ

編集 テリー・ウィリアムズ

 

<キャスト>

ピーター・フォーク(コロンボ)ロサンゼルス市警警部

ロバート・カルプ(ポール・ハンロン)「ロサンゼルス・ロケッツ」ゼネラルマネージャー

ディーン・ストックウェル(エリック・ワーグナー)オーナー

スーザン・ハワード(シャーリー・ワーグナー)その妻

ディーン・ジャガー(ウォルター・キャネル)弁護士

ヴァル・アヴェリー(ラルフ・ダブス)探偵

ジェームズ・グレゴリー(リゾ)コーチ

ヴァレリー・ハーパー(イヴ・バブコック)元秘書

 

感想

今回の相手は

フットボールチームの

ゼネラルマネージャー。

さらなる企業拡大の野心がある彼は

無能な2代目オーナーを殺して

会社を乗っ取ろうとする。

そのために試合中に抜け出して

外からラジオをかけながら電話をして

スタジアムにいるような

アリバイ工作を使ってきます。

 

「オンエア殺人」

「一人二役」

「見えない人物」

「消える凶器」

「電話によるアリバイトリック」

「第三者によってアリバイが補強」と

面白い犯行トリックが

いくつも組み合わせてあり、

解決の決め手になったアレなんて

1回目の視聴では気づかないほど

さりげなく伏線として登場している。

 

「二枚のドガの絵」に続いて

決定的な証拠を

突きつけた瞬間に終わる

「鮮やかな結末」の2作目だが

その決め手がやや説得力に欠けるため

モヤっとした後味になってしまった感がある。

 

犯人役のロバート・カルプは

『指輪の爪あと』に続き2回目。

エリックの家は『構想の死角』の

フランクリン邸と同じ撮影場所らしい。

 

コロンボがプールの水を

平気でペロッと舐める姿に驚いたが

コナン君にも少しは

受け継がれているのだろうか。

 

姿の登場しない

コロンボのカミさんは

今回もコロンボにヒントを与えてる。

アイスクリーム売りが食事前に来るとか

ドライヤーを使ったらテレビにノイズが出て

電化製品に影響を与えることが

解決につながった。

 

☆☆☆☆☆ 犯人の意外性

★★★★★ 犯行トリック

★★★☆☆ 物語の面白さ

★★★★☆ 伏線の巧妙さ

★★☆☆☆ どんでん返し

 

笑える度 -

ホラー度 -

エッチ度 -

泣ける度 -

 

評価(10点満点)

 8点

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※ここからネタバレあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1分でわかるネタバレ

○被害者 ---●犯人 -----動機【凶器】

エリック・ワーグナー ---●ポール・ハンロン ---金銭欲・物欲【溺死:氷塊で気絶後、プールで】

 

<結末>

ハンロンを追い詰めるはずの

電話の録音記録が

逆にハンロンにとって

鉄壁のアリバイになってしまい

コロンボは頭を抱えた。

ハンロンが意図的に

ラジオを電話中に流して

スタジアムのボックス席にいるように

偽装しているに違いないのだが……。

 

しかし何度も録音を聞くうちに

ある違和感に気づく。

犯行直前の電話の録音に

ボックス席からの電話なら

あの音が入っていないのはおかしい。

 

それは時計のチャイム。

ボックス席には時計があり

2時半にはチャイムが鳴った。

しかし同じ時間にかけた

最後の録音には

その音が入っていなかったのだ。

勝利を確信したコロンボと

呆然とするハンロンの表情。

空回りする録音テープ――。

 

トリック解説

ハンロンが計画した

「犯行トリック」は多くて

かなり複雑なものです。

 

その前にいくつか条件や準備がいる。

①エリックの妻シャーリーがアカプルコにいる。

②エリックの家の使用人に暇を出す。

③前日に女をよこして朝まで騒ぎ、昼まで寝させる。

④チームの試合の日。

⑤電話に盗聴器が仕掛けられている。

⑥アイスクリーム売りの衣装を用意。

 

午後2時前にエリックを電話で起こす。

その時に6時半に飛行機に乗るから

しっかり目を覚ますために

「プールに入れ」と念を押す。

プールにいないと計画が狂う。

 

2時にコーチのリゾに電話して

「ハーフタイムにここ(ボックス席)に来い」

「作戦を変更する」と言い出して

神経質に怒鳴りつける。

これでしばらく遠ざけることができる。

 

アイスクリーム売りの変装をして

誰もが旗に注目している

国家斉唱中の隙に後ろを抜けて

アイスクリーム売りの車に乗り

エリックの家に向かう。

ここがさりげなく上手いテクニックで

変装の一人二役と

群衆の中の殺人的な面白みがある。

アイスクリーム売りになって

観客にアイス売ってくださいと

絶対に言われない瞬間が

国家斉唱中なのである。

(帰りは知らん)

 

エリックの家の近くの公衆電話で

ラジオをかけながらエリックと会話する。

この目的はエリックの電話に

盗聴器が仕掛けられていることを見越して

今もボックス席にいるように思わせる

アリバイ工作のための電話。

 

家に着いたら氷塊を取り出し

プールで泳いでいるエリックを殴りつける。

気絶した彼は水を飲んで溺死。

氷塊はプールに捨てる。

(消える凶器)

自分の足跡を消すために

ホースで水をまいて消しておく。

 

急いでボックス席に戻って着替えて

ハーフタイムにやって来た

コーチを出迎える、という計画です。

 


 

コロンボが犯人に仕掛ける

「逆トリック」の罠は

今回はありません。

 

犯行の同じ時刻に

ボックス席にやってきて

2時半に鳴る時計のチャイムが

録音に入っていないことを

決め手に逮捕しました。

 


 

犯人がミスをしたり

偶然や探偵の捜査で

真実が明るみ出る

「発覚トリック」をピックアップ。

 

①被害者のエリックが

追加で酒を注文したので

酒屋の配達がプールで溺れている

エリックを発見した。

犯人の想定よりも早く死体が発見されている。その原因は、酒好きの被害者が酒を注文したから。

 

②プールの降り口が

水で濡れていた。

日曜日にプールの清掃業者を入れたか

ハンロンに質問するとこう言った。

「日曜に掃除に来ているのは見たこと無い」

コロンボはその水を舐めてみて

カルキの入ったプールの水ではなく

どうやらホースで水をまいたと推理する。

何か理由があってプールの降り口に水をまいたことがわかる。ハンロンが自分の足跡を消すために水をまいたのだが、そこに気づくところが細かすぎる。死後1時間という早期の発見で水が乾かなかったのも原因。

 

③コートのリゾが言うには

キックオフ直前のリゾに

ボックスから電話してきて

作戦のことで文句を言ってきた。

ハーフタイムに来いと言われたので

ボックスまで上がって行くと

すっかり機嫌が直っていて

好きにやってくれと言われた。

チームは前半いいところが無かったのに?

ゲーム開始前と前半終了の間、ハンロンはボックスにいたはず。試合も見ていたはずだが、機嫌が直る要素は試合の中には無かった。おかしい。

 

④近所の女の子が

2時半頃にアイスクリーム売りの車が

通ったのを見たと言うが

アイス会社に聞いてもその時間も

その場所にも車は通っていないはずと返答。

そのアイスクリーム売りの人物が容疑者とコロンボに推理される。アイスクリーム売りの車で行ったのは目立ちすぎた。アイス会社の販売区域はスタジアムも入っている。

 

⑤エリックの家に

盗聴器が仕掛けてあるため、

電話のたびにラジオに雑音が入っていた。

エリックの個人的な電話を聞きたがった人物がいる。それはハンロンだろうとコロンボは思った。コロンボはカミさんがドライヤーを使うとテレビがおかしくなるから電気屋に聞いてやっとわかったと言う。

 

⑥エリックの弁護士のウォルターが

エリックの電話やハンロンのオフィスに

探偵を使って盗聴器を仕掛けていた。

そのため2週間分の録音が残っていた。

ウォルターはハンロンがエリックを堕落させて夫婦仲を裂こうとしているんじゃないかと疑い、ダブス探偵を雇って盗聴させた。その盗聴内容が裏目になり、逆にハンロンに鉄壁のアリバイを作ってしまう。ボックスからかけた(と思われる)最後の電話の記録が2時29分で、死亡推定時刻前後2時30分の現場に行くことは不可能だ。ちなみに盗聴器を仕掛けたのはクビになった秘書バブコック。彼女はダブス探偵に雇われていた。

 

⑦ハンロンは試合の中継中に

話しかけられたら

ラジオや中継の音を切らずに

ボリュームを下げていた。

プールでエリックが事故死したと

聞いた時は驚きながらも

ボリュームを下げたままだったが

降り口に水がまいてあったから

殺しかもしれないと言われた時は

中継の音を嫌って切った。

ボリュームを下げたのは予想していた話だったから試合と同時に聞けるくらい心に余裕がある。しかし他殺の疑いを持っていると聞いて動揺したハンロンはラジオを完全に切ってしまう。実はコロンボがハンロンに目をつけたのはこの行動からでした。

 

⑧ハンロンはオフィスの電話を使わず

わざわざ空港の電話から

誰かに電話していた姿を

コロンボに見られている。

オフィスの電話に盗聴器が仕掛けてあることを知っていたから、あえて外で電話をかけた。その相手はバブコックで、警察に聞かれても盗聴器のことは言うなと口止めしていた。

 

⑨最後の録音に

ボックス席から電話したら

入っていなければおかしい音が

入っていなかった。

これが今回の決め手になった。コロンボは何かおかしい音が入っていないかと何度も録音を聞いたが入ってなくてがっかりしていたが、発想を逆転して「あの音が入っていないのはおかしい」ことに気づく。それはボックス席にある時計のチャイムで、2時29分にかけたなら電話中に2時半のチャイムが鳴ったはず。それが聞こえないということはボックス席からの電話ではないことになるのだ。

ただし、このチャイムの音は「決め手」にしては弱い。その時は電池切れで時計は止まっていたんだとか、試合中は集中したいからチャイムを切ることもあるだとか言い逃れできる。そもそも時計が変なチャイムを鳴らす説明も、その時計にこだわる理由も無かった。広報時代に前オーナーから頂いた大事な時計とか説明があれば受け入れやすいが……。それに、決め手が時計である必要すら感じない。ドアチャイム、火災報知器、別の電話の着信音などいくらでも代用が利きます。

同じシチュエーションのこのトリックを上手くアレンジしたのが、『古畑任三郎』の「しゃべりすぎた男」。秘書が業務用電話にかけたが留守電になり、個人用電話にかけた時に、後ろで「ツー、ツー」と音が入っていなければいけないのに入っていなかったというもの。こちらの方が説得力がある。

 

伏線解説(★は巧妙なもの)

★①【時計のチャイム】

ハンロンがアイスクリーム売りの

衣装に着替えている時、

時計のチャイムが鳴る。

「キーンコーンカーンコーン」

ちょうど午後2時だった。

  • ボックス席の時計は30分ごとにチャイムが鳴る仕組み。音からして一瞬ドアのチャイムかと思った人もいるはず(俺はそう思った)。しかしドアの外に来客はいない。やがてハンロンは着替えて何事も無く出て行ってしまうが、あの時計のチャイムに感じた違和感を最後まで覚えている人がいるのだろうか……。

 ↓

この時計は1度だけでなく

もう1回鳴っている。

コロンボがボックス席にやって来て

ハンロンにエリックが

亡くなったことを知らせた後、

日曜日に清掃業者が来るか聞いて

降り口に水がまいてあったことを

話す場面の背後で

「キーンコーン」と音が鳴っている。

  • ここの音の違和感を誤魔化すため、それまで小さく実況を流していたハンロンが音を切り、代わりに不穏なBGMが流れだす。視聴者は犯人とコロンボの対決ムードの方に集中するので時計の音に気づかない。
  • コロンボが時計の音につっこまないのがおかしいと言う人もいるかもしれない。それは同感。「何ですこの音?」「ああ時計だよ。先代から置いてある。話を続けたまえ」くらいのやり取りは欲しい。鳴った瞬間、コロンボが時計の方を向いても伏線になるのに気にした様子は無かった。その後、実況を切るハンロンの姿からコロンボに切り替わった時、一瞬右の方(時計の方)を見てたから、好意的にみればそれを伏線と捉えることもできるがちょっと弱い。チャイムの音自体はハッキリ聞こえているけど、それ以上の手掛かりは与えたくないようにもみえる。

 

★②【元秘書バブコック】

エリックの弁護士ウォルターが

新しい秘書ジョンソンに自己紹介する。

「私はエリックの弁護士だ。亡き父上の40年来の親友でもあった」

「どうも失礼いたしました。私は新任の秘書ですの。前任のバブコックさんも2日くらいで辞めて、引き継ぎが出来ておりませんの」

「いいんですよ。心配せんでも」

  • ここで盗聴器を仕掛けた人物バブコックの名前がさりげなく登場。バブコックは盗聴器を仕掛けたがハンロンに発見されて、盗聴器の録音を利用しようと考えたハンロンに金で買収され、3日でクビにされたことにして行方をくらました。

 ↓

そのバブコックだが

直後に登場している。

しかも電話で。

ハンロンがやって来た時に

秘書がかかってきた電話を取った。

「ロゴージー様?」と聞き返し

ハンロンに取り次ごうとするが

ハンロンはそれに応じずに

「今日は無理だ」と秘書に伝えた。

  • 実はこの電話の相手がバブコック(ミス・ロゴージー)。ここで会話をすると盗聴器があるためハンロンは会話したくなかった。しかも刑事も弁護士もいる。翌日、空港にシャーリーを迎えに行ったが、空港の電話ボックスからバブコックにかけ直して口止めをしている。
  • このロゴージーの電話の時、コロンボはラジオのノイズを気にしていたが、その裏で“ミス・ロゴージー”という名前をちゃんと覚えていて、バブコックに会った帰り際に「君も本名はハンガリー系の名前?“ロゴージー”とか?」とカマをかけて帰っていく。実に抜け目ない男。

 

【バスケ選手との大事な契約】

バスケットボールの有名選手と

契約に来ていたハンロンのところに

コロンボがやってくる。

ハンロンは怒って

マークとの契約は今日しか空いていないんだ!何しに来た」

あからさまに追い返そうとしていたが

コロンボが

「実はエリックの電話が盗聴されていた」と

ハンロンに話したら

盗聴していた人物に会おうという流れになる。

  • 警察が盗聴器のことに気づいてくれるのを待っていたハンロンにとって、契約の話を捨てるほどの価値がある。

 

【コロンボのガッツボーズ】

コロンボはロケッツが贔屓のチームで

現場のプールでもラジオの実況に耳を傾け

ナイスパスが通ったと聞いて

ガッツポーズして手を叩いた。

ハンロンのボックス席を訪れて

ハンロンに会った時も

実況がナイスプレイを伝えると

「やった!」と右の拳を握りしめた。

  • 最後の大詰めで録音テープを聞きながら時計のチャイムが鳴った時にコロンボが珍しくガッツポーズをしたのは、煽りたいとかじゃなく「時計のチャイムのナイスプレイ」を称えてのガッツポーズだったわけです。いいパスを通して“決め手”くれた時計選手に感謝。

 

電話中にラジオにノイズが入るのは

伏線というほど

隠れたものではないため割愛します。

 

欠点や疑問など

  • 被害者の性格や行動を完璧に操らないと厳しい。確実にプールに入っていないと犯行が成立しないし、前夜は酒で酔い潰れていないと駄目。
  • あの大きさの氷塊を振り上げたらすっぽ抜けたり空振りするはず。仮に頭を殴れても致命傷にはならないと思う。どうせなら特性の氷のハンマーを用意するとかさ。
  • 30分ごとにチャイムが鳴る意味がわからない。音もドアチャイムっぽくて変だし何度もキンコン鳴るのは生理的にウザイと思う。
  • アイスの車が30分間無くなったことを証言されたら決定的なのでは?
  • 行きは国家斉唱中で盲点をついたが、犯行後にスタジアムに戻った時にアイスクリーム売りの格好だと声をかけられる危険が多いが何も描写が無かった。
  • アイスクリーム売りの衣装はどこに処分した?
  • みんなで録音を聞いてる時、「お前がよこした女」の話が出て、ウォルター弁護士が「ハンロンは夫婦仲を裂こうとしてるんだ」とハンロンに詰め寄ったが、ハンロンは「それはメイドのことだ」と話をすり替えた。それを聞いたコロンボがだんまりだったのが解せない。「昨夜、エリックさんが乱痴気騒ぎをしていたのは間違いなく、ハンロンさんがすぐヤレると紹介した女性にも聞き込みましたけど、彼女メイドだったんですか?」とかわざとらしく惚けながら嘘をつついて欲しかった。
  • 「刑事コロンボ 完全捜査ブック」の指摘で、「多くの出来事が画面の外で起こっていて、登場人物の行動が何をしているかわからない瞬間がいくつもある」のが今回の異色な部分。その通りで、ハンロンが空港から電話する理由、ラジオを持ってエリックに電話する理由など、電話に「盗聴器」が仕掛けてあるのを伏せて物語を進めているためにややわかりにくくなってしまっている。

 

名場面・名台詞

現場のプールで

刑事と会話。

配達人と隣人の供述をとって

プール周辺の指紋もとれと命令し

どこかへ向かおうとする。

クレメンス刑事「わかりました。あなたはどちらに?」

コロンボ「フットボール行って来るよ」

 

エリックの自宅を訪れたコロンボ。

そこにいたウォルター弁護士に質問する。

コロンボ「恐縮ですが……」

ウォルター「何です?」

コロンボ「立ち入った質問してもよろしいでしょうか?」

ウォルター「どうぞ」

コロンボ「その靴いくらでした?」

ウォルター「たしか……60ドルかな」

コロンボ「うっかり水に入って靴ダメにしちゃったんですが、そんな感じのやつ20ドルで売ってるとこ知りませんかねえ?」

ウォルター「20ドルくらい?そうねえ……心当たりありませんな」

コロンボ「どうも」

 

 ※ここの会話は原文だと「16ドルか17ドルで買えるところありませんか?」と言っている。

 

コロンボに犯行当時

あなたがボックス席にいた証拠は?

と詰められるハンロンが反論する。

ハンロン「関係者全員を一応疑ってみるのが君の仕事でしょうからな」

コロンボ「ありがとうございます。いやぁ肩の荷が下りました。多分リゾコーチに聞けばわかるでしょう。たしか彼の話じゃあ負けてた前半は1度もあなたから電話がなかったそうですが、開始前は大変不機嫌……」

ハンロン「あの時も言ったように開始直前ボックスからエリックに電話し、その後もう1度ボックスから前半の真ん中辺りでかけた」

コロンボ「しかしあいにくダイヤル即時だとその記録が無いんで」

ハンロン「私の知ったことじゃないね」

コロンボ「おっしゃるとおり。あたしの仕事で。それにエリックを殺す動機を持った人物を見つけるのもあたしの仕事なんで」

 

ボックス席に押しかけ

ハンロンの犯行を暴いて

追い詰めるコロンボ。

コロンボ「問題はです。あなたが盗聴を知ってたとすると、それを逆手にとってアリバイ作りに利用できるってことなんです」

ハンロン「いいか。私のアリバイは真実なんだ。はっきりしてることじゃないか」

コロンボ「そのアリバイを崩したんですよ」

 

 動揺を隠そうとハンロンが双眼鏡を覗いているが……。

 

コロンボ「方向が違いますよ」

 

 慌てて双眼鏡の向きを変えるハンロン。

 

コロンボ「わかってみりゃ実になんてことないトリックなんですがね。ところが……お、いいとこ行きましたよ」

ハンロン「ところが何だ?」

コロンボ「最後のテープをもう一度聞いてください」

ハンロン「なぜだ?」

コロンボ「その、偶然ですがね。今ちょうどあんたが2度目の電話をかけた時間と同じなんです。さぁこれです。正確に2時29分。殺しのあった1分か2分前です。あたしはこのテープ繰り返し繰り返し聞いたもんですよ。何か場違いな音が入ってないか?犬の声とか自動車の音とかこのボックスに居ちゃ絶対聞こえない音がね」

ハンロン「そんな音が入ってるはずがないんだ。私はこのボックスからかけたんだ。この電話でな!」

コロンボ「ところが閃いたんだ。そう、逆だったんですよ。ここに居たなら当然入ってる音が入ってない」

ハンロン「どんな音だ?」

コロンボ「ハッキリした音が」

ハンロン「どんな音だね?」

コロンボ「……よし」

 

キーンコーンカーンコーン。それは時計のチャイムの音だった。

 

好事家のためのトリックノート

1-A、人間「一人二役トリック」

●犯人が架空の人物に化ける

○架空で犯行したうえで本人として残る

【アイスクリーム売り】

フットボールチームのゼネラルマネージャーの犯人が、試合開始前にボックス席からアイスクリーム売りに変装して、国家斉唱中の隙に後ろを通って抜け出し、被害者の家に行き殺害してハーフタイムまでに戻って来る。

 

2-B、痕跡「足跡トリック」

●足跡を消す

【水をまく】

犯行現場がプールで、降り口まで歩いた犯人が自分の足跡を水道のホースで水をまいて消す。

 

3-C、不在証明「音によるアリバイトリック」

●電話・携帯電話

【携帯ラジオの実況】

フットボールの試合中にボックス席から抜け出した犯人が、携帯ラジオを持って外の公衆電話から被害者に電話をしてスタジアムにいるように思わせる。被害者の電話に盗聴器が仕掛けてあり、その録音テープから犯人のアリバイが補強される。

 

3-C、不在証明「音によるアリバイトリック」

●レコード、CD、テープ

【第三者の仕掛けた盗聴器を利用】

第三者が被害者の自宅の電話に盗聴器を仕掛けたことを知っていた犯人が、携帯ラジオの実況を流しながら外から電話してスタジアムにいるように思わせる。その録音テープの記録時間をアリバイとして利用する。

 

4-A、凶器トリック

●犯行後に消える凶器

【氷塊】

アイスクリーム売りに変装してアイスの車で被害者の家に行き、積んであった氷塊でプールから上がった被害者を殴り、プールに投げ捨てる。

 

5-B、隠し方「生きた人間の隠れ方トリック」

●心理的に見えない隠れ方

【アイスクリーム売り】

スタジアムのアイスクリーム売りに変装し、試合前の国家斉唱中に観客の後ろをすり抜けて外に出る。

 

8-A、発覚「物質的手掛かりの機智」

●犯人の失敗

【時計のチャイム】

2時半にボックス席から電話をかけたというアリバイだが、30分ごとにチャイムが鳴るボックス席の時計の音が電話の録音テープに入っていなくて、別の場所から電話したことが発覚する。

 

 

『刑事コロンボ』各話レビューまとめ


Viewing all articles
Browse latest Browse all 997

Trending Articles