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【ネタバレ注意】刑事コロンボ『第20話・野望の果て』の感想・伏線解説・考察

 

刑事コロンボ

#20『野望の果て』

[CANDIDATE FOR CRIME]

(1973年11月4日放送)アメリカ

(1974年8月17日放送)日本

 

 

 

<あらすじ>

「組織犯罪撲滅」が公約の上院議員候補ネルソン・ヘイワード(ジャッキー・クーパー)の元に、犯罪組織からの脅迫状が届く。実は、脅迫は選挙参謀のハリー・ストーン(ケン・スウィフォード)が発案した票稼ぎのためのヤラセだったが、ヘイワードは、その筋書を利用し、公私ともに自分を支配するようになっていたストーンを抹殺。自分と間違えて殺されたように見せかけた――。

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<スタッフ>

監督 ボリス・セイガル

脚本 アーヴィング・パールバーグ

    アルヴィン・R・フルードマン

    ローランド・キビー

    ディーン・ハーグローヴ

原案 ラリー・コーエン

制作総指揮 R・キビー&D・ハーグローヴ

音楽 ディック・デ・ベネディクティス

 

<キャスト>

ピーター・フォーク(コロンボ)ロサンゼルス市警警部

ジャッキー・クーパー(ネルソン・ヘイワード)上院議員候補

ケン・スウィフォード(ハリー・ストーン)その選挙参謀

ジョアン・リンヴィル(ヴィクトリア・ヘイワード)ネルソンの妻

ティシャ・スターリング(リンダ・ジョンソン)その秘書

ロバート・カーチス(バーノン)刑事

 

感想

Season3の3話目となる今回は

上院議員に立候補したヘイワードが

選挙活動の真っ只中に

邪魔な選挙参謀を

自分と間違って殺されたように仕組む。

 

90分という長めの尺で

コロンボが犯人を問い詰める手数も多く

かなり対決色が強いエピソード。

犯人も言い訳が上手いというか

詭弁を使って立ち回るので

なかなか一筋縄ではいかない。

 

今回もカミさんは

ヘイワードのファンだという情報。

カミさんが犯人のファンになる確率すごない?

 

ヘイワードの奥さんが

胸元の開いたドレスで乳首が浮き出て

いかにもセレブのファッション。

エロかった。

 

お馴染みコロンボの「もう一つ」戦法。

今回は帰ろうとして

思い出して戻るというのを

3回くらいやっていたので

相手にする方も

さぞ面倒くさかったろうな。

 

この話はやっぱりラスト。

ヘイワードが最後に仕掛けた

蛇足みたいな偽装工作で

めっちゃ気持ちよくさせておいて

一気にぺしゃんこに

叩き潰すコロンボが痛快でした。

 

☆☆☆☆☆ 犯人の意外性

★★☆☆☆ 犯行トリック

★★★★☆ 物語の面白さ

★★★☆☆ 伏線の巧妙さ

★★☆☆☆ どんでん返し

 

笑える度 -

ホラー度 -

エッチ度 △

泣ける度 -

 

評価(10点満点)

 7.5点

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※ここからネタバレあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1分でわかるネタバレ

○被害者 ---●犯人 -----動機【凶器】

ハリー・ストーン ---●ネルソン・ヘイワード ---障害の除去【射殺:ピストル】

 

<結末>

上院議員選挙の投票日当日、

ヘイワードは最後の仕上げの

偽装工作をホテルの部屋につけて

証拠品の銃をリンダのカバンに隠し

リンダを帰らせてから

妻と投票に向かった。

 

投票を済ませた後、

部屋に戻ったヘイワードは

銃撃があったような狂言芝居をする。

撃った銃さえ見つからなければ

バレることはないと思っていたが

コロンボはすべて見破っていた。

 

あなたが投票に行った間に

この部屋の弾丸を掘り出して

鑑識からストーンを撃った銃と

線条痕が一致したとの報告を受けた。

そして今日この部屋に入った時に

ヘイワードは電話を掛けるふりをして

電話は掛けなかったと詰める。

偽装工作の理由は殺人犯に他ならない。

「あなたを逮捕します」

 

トリック解説

ヘイワードの使った

「犯行トリック」「二人一役」をして

命を狙われている自分の身代わりに

間違って犯罪組織に

殺されたと思わせるというもの。

 

上院議員選挙に立候補したヘイワードは

「犯罪組織撲滅」を公約として掲げ

そのために犯罪組織から脅迫され

命を狙われていた――

という筋書はまったくの作り話。

実はヘイワードの選挙参謀の

ストーンが考えた票稼ぎの「ヤラセ」で

自分で自分に脅迫状を送っていたのだった。

 

その脅迫のせいで警察が24時間体制で

しっかりと護衛につくのだが

ヘイワードはそれを利用して

邪魔なストーンの殺害を計画する。

ストーンのことは前から嫌っていたが

愛人のリンダと別れるように

選挙だけでなくプライベートにまで

口出ししてくるようになったからだ。

 

わかった、リンダと別れ話をしてくると

ストーンを説得し、

そのためには警察の目を盗んで

愛人のところに向かわなくてはならないが

警察がついて来るのはまずいから

ストーンに自分の帽子と上着を着て車に乗り

オトリになって別荘まで行ってくれないかと頼む。

 

ストーンはヘイワードのふりをして

ヘイワードの車に乗り

警察の護衛を連れてホテルを出発し、

後からヘイワードも車で出発する。

ストーンには護衛を撒いてから

別荘に行くように打ち合わせしていて、

警察を振り切って別荘に着いたストーンを

先回りしていたヘイワードが射殺した。

腕時計を華奢な物に替えて

時間を進めて9時20分で叩き壊す。

ヘイワードは車に乗り自宅へ。

 

自宅に戻るとその日は

妻の誕生日パーティーをしていて

殺害時刻の9時20分を過ぎたことを確認し

別室の電話を使って警察に

ヘイワードを殺したという

組織からの電話をかける。

(電話をかけた時刻は9時23分だった)

 

なぜストーンに自分の格好をさせたのか

聞かれた場合を想定して

妻の誕生日をサプライズで祝うために

ホテルを抜け出すためだったと説明。

警察について来られたら

サプライズにならないと

もっともらしい嘘をついた。

この殺人は決定的な証拠が出ず

ほぼ完全に警察を出し抜いた。

 

開票日には

狙撃された偽装工作を行った。

リンダにカバンを持ってくるように頼み

それを受け取った後、

個人的な電話をすると言って寝室に入り

サイレンサー(サプレッサー)付き銃で

ベランダから室内に向けて発射。

銃をカバンに隠して

リンダに持たせて帰らせ

事務所の金庫に隠してもらう。

 

投票に行った後、

ベランダで爆竹を鳴らして発砲音を出し

警護していた警察たちに

窓から撃たれた!と嘘をつく。

しかし、

これが彼の命取りとなった。

 


 

コロンボが仕掛ける

「逆トリック」だが

今回は無し。

 

ヘイワードが

狙撃の偽装工作をするのを待って

そのトリックを暴いて逮捕するんですが、

最後の追い詰め方が

とても痛快で印象に残る。

 

ヘイワードが長々と

自分を狙った仮想犯人の犯行を説明して

それにコロンボは

「はい」「はい」「はい」と全肯定していって

「じゃあ君の為すべき事は弾を掘り出し

線条痕の検査をすることだろう!」と

ヘイワードが怒鳴ると、

コロンボは「いいえ」と返して

それはもうやってますとばかりに

偽装工作をすべて説明して

「あなたを逮捕します」とぴしゃり。

その間、犯人は一言もしゃべらずに

そのままエンディングを迎えるという

とんでもなくエッジの効いた終わり方だった。

 


 

犯人がミスをしたり

些細な矛盾点から

コロンボが真相に近づいていく

「発覚トリック」をピックアップ。

 

①子供が街路灯に石を投げたらしく

別荘のガレージ前の街路灯が割れていた。
車のヘッドライトは道の形状的に

奥に回り込むと道を塞ぐ形になる。

それにヘイワードの車が邪魔で

奥の被害者を照らすことができない。

犯人はどうやって明かりもないのに

ストーンを射殺したのか?

明かりは普通にガレージの電気を点けて殺したのだが、コロンボが触れないのでヘイワードは黙っている。街路灯が割れていたことには気づかなかった。車のヘッドライトでも片方だけなら奥を照らせる可能性があるとコロンボに指摘する。ぴったりその位置に持って行くのは大変そうだが、ヘイワードは「だが可能だろ?」と圧をかける。

 

②弾道検査でストーンは

左側から撃たれていることがわかった。

犯人はガレージの

入口左側にいたと思われる。

ヘイワードの言うように

車を無理矢理に片方ズラして停めて

左のヘッドライトで奥を照らしたとしたら

犯人の位置は

車の左側になり(左ハンドルのため)

そこから撃つと真っ直ぐか

もしくはやや右から撃たれたことになり

弾道検査の結果と矛盾することになる。

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ヘイワードの詭弁を論破するコロンボ。答えに窮したヘイワードは「うん、面白い。非常に面白い」と言い、別荘で待ち伏せしていた説を持ち出してさらに墓穴。犯人は尾行して警察がいないから殺しを実行したはずで、待ち伏せていたら警護がついているかどうかわからないのに実行したことになるからだ。

※ここに実は裏の意味がある。それは伏線解説で。

 

③命を狙われたのはストーンの方ではと

コロンボが言うと

ヘイワードは「それは暴論だ」と怒り出す。

「私の帽子と服と車で

私の別荘に行って殺されたのに

人違いの殺人とはとうてい信じられん!」

それを聞いたコロンボは

意外そうな顔でヘイワードに

あなたが狙われたんじゃないとすれば

ほっとするかと思ったのに……と話した。

「人違いの殺人」で捜査を進めて欲しいあまり、当然するべき反応が出て来なかった。

 

④日程表を取りに部屋に入ったリンダ。

後からヘイワードも部屋に入った。

打ち合わせと称してキスしていた2人。

その後、リンダが出て行った。

リンダが日程表を持たず、手ぶらで部屋を出て来たのをコロンボは見逃さなかった。選挙運動中はストレスで不思議な行動をするもんですなぁ~とフォローしつつ、すでに2人の関係は見破っている。

 

⑤コロンボが実際にホテルから

別荘に車をゆっくり走らせてみて

停車してからエンジンが冷えるまで

1時間50分かかった。

ストーンの時計は9時20分で

壊れて止まっている。

しかしコロンボが現場に行った10時に

車のエンジンを触ったら冷えていた。

たった45分なのに?

実際はもっと前に犯行があったということ。ヘイワードは「で、君の結論は?」と尋ねたら、コロンボは「結論なんてないです。ただ納得がいかないので」と言葉を濁した。

 

⑥ストーンが着ていた上着と

同じ物がヘイワードのところに届いた。

オーダーメイドなので

上着だけで200ドルもするキャメルの素材。

ビバリーヒルズのチャドウィックで購入した。

コロンボが実際にその店に行ってオーダーメイドで上着を作ろうとしたら、10日はかかると言われた。今日ヘイワードのところに2着目の上着が届いたが、なぜもう1着同じ物を作ったのか?それも10日も前(殺人の6日前)に。……つまり、ストーンに着せたもう1着は銃で駄目になることがわかっていたからだ、と推理するコロンボ。その指摘にヘイワードは、前の上着は袖がたるんでいて、左袖にはタバコの焼け跡があるため新しい上着を注文したんだとスラスラ答える。これにはコロンボも納得せざるを得ない。予想して答えを用意していたようだ。

 

⑦事件の日、ヴィクトリアの

誕生日パーティーが行われたが

選挙参謀のストーンは知らなかった。

彼は有能でヘイワードの予定は

細大漏らさず知っているはずなのに

日程表にパーティーのことは

書いていなかった。

では誰がパーティーを手配したのか?

リンダは手配していませんと言うが……。

妻の誕生パーティーをストーンに隠しておく必要はまったく無いし、ストーンが呼ぶ呼ばれないは関係なく、ヘイワードは隠し事をしている。そのパーティーを手配した手際は、忙しいヘイワードではなく彼の親しい誰かだろう。

※実際にパーティーの手配は誰がしたのか明らかになっていません。ヘイワードが1人で友人たちに連絡してサプライズパーティーを進めていたと受け取ることも可能。もう1つの解釈としては、コロンボが「手配したのはリンダさんでしょ」と当たりをつけたので、リンダ自身は否定しましたが実はそれが正解で、ヘイワードの良さについて饒舌にしゃべる姿を見て2人がデキていることも確信したと考えることもできる。

 

⑧犯人から警察に

「ヘイワードを片付けた」と

電話があったのは9時23分。

壊れた時計が正しいならば

9時20分にストーンは殺されたはずだが

別荘のガレージから車を走らせても

辺りには電話どころか

店もガソリンスタンドも民家さえも無い。

犯行現場から

3分後に電話することは不可能だ。

あの電話はパーティー中に自室に入ったヘイワードが掛けたものだ。早く事件を知らせてアリバイを作りたいと焦ったのか、電話に行くまでの時間を計算に入れていなかった。ガレージから最速だと7分でガソリンスタンドに行けるとコロンボが言うと、ヘイワードは「実はストーンは約束の時間に遅れないよう5分早く時計を進めていた」と嘘を教えて8分まで可能性を広げて乗り切ろうとする。が、実はあの夜はガソリンスタンドが8時には店を閉めてしまったことを教えるとヘイワードは黙り込んでしまった。店を閉めていたことをあえて教えずに情報を小出しにして泳がせてボロを出させるとは……恐るべし。さらにそのガソリンスタンドの電話を使っても市外局番なので、実際に掛かったのは市内だったから違うという追い打ちまで決める。えげつない。


⑨ストーンの好む服や靴は

ブランド物よりも「丈夫なこと」だが、

壊れた時計だけちぐはぐな印象。

華奢で壊れやすい時計だった。

時計だけが浮いていて似つかわしくない。犯人が壊れやすい時計に付け替えたのだということ。その目的は犯行時刻の誤認だ。

 

⑩ヘイワードは

個人的な電話をかけたいと言って

ホテルの「615」の寝室に入った。

「615」の部屋で電話をかけたら

その隣の記者ルーム「616」にいると

電話のライトが光るのが

見える仕組みになっている。

(当時のボタン式電話の仕様で

受信側が光ったボタンを押して

電話回線を切り替える)

コロンボが「616」の部屋で

「615」のライトが光るか

見ていたが光らなかった。

そのままヘイワードは部屋を出て投票に行った。

ヘイワードは電話を掛けると言って入ったのに電話をかけなかった。では、何のために部屋に入ったか?気になって部屋を調べて、弾丸を発見してヘイワードの偽装工作を見破った。

 

伏線解説(★は巧妙なもの)

【リンダと日程表】

ヘイワードに日程表のコピーを

取ってきなさいと言われたリンダ。

そのまま奥の個室に入った。

後からヘイワードも入って

数分後にリンダが出て来たが

手ぶらで出て来た。

  • その間、部屋の出入口にずっといたコロンボはこの違和感を見逃さず2人が逢い引きしていたと推理する。――というのが手掛かりの1つだったが、よく見るとリンダはハンドバッグを肩にかけている。日程表なら折りたためばハンドバッグに入るから、疑問に思った人もいるでしょう。ここは字幕も吹替えも“手ぶら”という言い方だから、「手に持っていなかった」という意味の手ぶらだと勘違いしやすい。コロンボは日程表が机に残っているのを見ておかしいと気づいているので、「何も持っていなかった」という意味の“手ぶら”です。
  • ちなみにコロンボがこの机の上の日程表に気づいたと思われる伏線は、字を書こうとして鉛筆を取り出したが折れて書けない、②そこのペンを貸してくださいというやり取りが、実はもう机の上を隅々まで見ていたということを示唆しています。そこにペンがあることも日程表があることも知っていたわけですね。

 

★③【ヘイワードの反応】

コロンボはストーンが

左側から撃たれたという

弾道検査の結果を持ち出し

ヘイワードが言うように

車をずらして撃たれたら

弾道が矛盾していることを突きつける。

それに対してヘイワードは

「うん、面白い。非常に面白い」と納得した。

  • この弾道検査の図解のやりとりは面白くて、見ている視聴者も「なるほど」と納得することでしょう。しかし、ここには見過ごしがちなポイントが潜んでいます。それは、ヘイワードが犯人が1人だと知っていることです。確かに運転手が撃つなら実際の位置と矛盾しますが、なぜ“犯人が運転手1人”ということに固執するのか?運転手が身を乗り出して撃つよりも複数人が車を降りて、実際の弾丸が発射された位置から撃たれたという推理が、ヘイワードから出て来ないのがそもそも変なんです。相手は犯罪組織なんですから。それを聞いて「うん、面白い」と納得している。ということは犯人が1人で撃ったことを認めているのも同じで、彼が犯人ならば単独犯だということもコロンボには見抜かれてしまった――というわけです。

 

★④【電話を見つめるコロンボ】

ヘイワードが個室に入ったら

電話してくれと

バーノン刑事に頼むコロンボ。

ヘイワードが個室に入って

記者室の電話が鳴ったのだが

コロンボは動こうとせず

たいくつそうに電話を眺めている。

  • バーノン刑事から電話が入ってコロンボが何か動き出すかと思いきや、寝そうなくらいのんびりしているのでいったい何をしてるんだ?と不思議に思った人もいるはず。伏線というものは、2回目に見た時に本当の意味がわかる。あの時は電話を見つめることが仕事だったんだ、と。

 

欠点や疑問など

  • 犯罪組織からの電話をヘイワードが自宅から警察に掛けていたがあれは大丈夫なの?ロサンゼルスの市内電話は履歴に残らないの?
  • 動機が弱くみえてしまうのは、殺すほどでもないと思えてしまうからだろう。確かにストーンとの確執は動機としては弱いが、選挙の票稼ぎで「脅迫されているヤラセ」を行っていて、それが世間にバレると彼の人生は終わってしまう。ここを考慮すれば、ストーンをクビにした後の報復を恐れての犯行というのも納得度が上がりそう。
  • ストーンが太りすぎなので、さすがに犯罪組織の人間も人違いに気づくと思う。
  • 逮捕に繋がった狙撃の偽装。わざわざ時間を空けて投票に行った後に自演したのは銃を発見させない目的なのだろうが、音を出すための爆竹の残りカスを外に投げ捨てたとしてもベランダに火薬と匂いは残るし、得策とは言い難い。やる必要あった?ヘイワードはやたらと銃を持ってないアピールしていたが、窓越しに狙撃されてるんだから、元から銃は部屋の中には無いやろ……。
  • コロンボと歯科医のマフィアの話や、検問の件も長く、車の整備に繋げるにしてもあまり必要のないシーンが多く感じた。上着も仕立てるのに10日かかることだけ聞ければいいのに、長めの無駄な会話を挟みすぎている。
  • ガレージの電気を点けたことを追及するかと思ったがしなかった。あの薄暗い闇の中でもスイッチの場所がわかるのはヘイワードしかいない――という追い詰め方をすると思ったのに。

 

名場面・名台詞

コロンボに事件の進展を

聞きたがるヘイワード。

コロンボは公式には何もないと話す。

コロンボ「今のところは何もないんです」

ヘイワード「ああ残念だねえ」

コロンボ「公式にはです」

ヘイワード「非公式には?」

コロンボ「非公式にも何もないんです」

ヘイワード「それじゃあいったい……」

コロンボ「いやいやつまり……当局としては、です。でもあたし個人には、つまり徹底的に非公式には、です。ここ誤解のないように」

ヘイワード「要点を言ってくれないか?」

コロンボ「はい。え~……(ポスターを見つける)これに書いていいですか?表にじゃなく裏にですが」

ヘイワード「ああどうぞ」

コロンボ「たくさんあるんでしょ。でももったいないですよね。うちは節約第一で」

ヘイワード「お好きなように。とにかくコロンボさん、要点をどうぞ」

コロンボ「弟は38ですが、子供の時の半ズボンまだ履いてますよ。え~……(ポケットから鉛筆が出てくるが折れて書けない)弱ったな。珍しく鉛筆が出て来たが役に立たないときてる。そこのペン、拝借していいですか?」

ヘイワード「どうぞ。大変失礼だが怒らんでくださいよ。君はいい人だしお会いするのは楽しいが、とにかく私は時間に追われてる体なんでね」

コロンボ「女房がこう言うんですよ……」

ヘイワード「ああわかっています。要点をどうぞ」

 

2着目の上着を

10日前に仕立てたことを質問されて

ヘイワードがそれをうまくやりすごしたが、

コロンボは続けて疑問を口にしてくる。

コロンボ「実は、その~……上着なんかよりもっと頭が痛いのは、です。これこそほんとのミステリーでして。どうにも答えが出ないんです」

ヘイワード「私でもわからないか?」

コロンボ「わかるといいんですが」

ヘイワード「多分わかると思うよ」

 

 上機嫌のヘイワードにコロンボが質問する。

 

コロンボ「今お話したとおり、この謎、答えが出ないんです。さっきおたくの別荘行ってみました。ガレージから車出して、時速100kmで3分間すっとばした後止めたんですが、何もありませんでした。バーもレストランもなければスタンドもない。個人の住宅さえもないんです。ただの原っぱと道と鳥がいるだけ」

ヘイワード「何を探してたんだい?」

コロンボ「電話ですよ」

ヘイワード「電話?」

コロンボ「そうです。ストーンさんの時計によれば死亡時間は9時20分。犯人から警察に電話が入ったのは正確に、9時23分です。……犯人どっから電話かけたのか?これがわからないんです」

ヘイワード「……」

コロンボ「1番近い公衆電話は7分間走ったスタンドなんですがね。……お手上げです。あらゆる可能性考えたんだが」

ヘイワード「あらゆる?」

コロンボ「考えられる限りは」

ヘイワード「それじゃあ聞くがね。あのストーンは約束の時間に遅れないよう、いつも時計を5分進めていたことを知っていたかね?5分だよ」

コロンボ「いや、初耳です」

ヘイワード「みんな知ってることさ。つまり死亡時刻は9時20分ではなく9時15分だったんだ。ガソリンスタンドまで車で7分かかる。そう言ったね?9時15分の7分後は9時22分。車を降りて小銭を出し、電話するには1分もあれば十分だろ。これで謎は解けたろ?」

コロンボ「いいえ。スタンドはガソリン切れで8時に早仕舞してるんです」

 

 ヘイワードの顔から笑顔が消える。

 

ヘイワードが狙撃されたと聞いて

コロンボが遅れて

ホテルの部屋にやってくる。

バーノン「ああ警部、今ヘイワードさんが狙撃されました」

コロンボ「聞いたよ。しかしホテルを包囲する必要はないって言っておいた。狙撃した人物はまだこの部屋の中にいる」

バーノン「はあ?」

ヴィクトリア「何言ってるの、あの人」

ヘイワード「私にはわかってるよ。私だと言うのさ」

ヴィクトリア「あなた?」

ヘイワード「そうだろ?」

コロンボ「……そうです」

ヘイワード「思った通りだ。そう言うと思っていたよ。私が撃ったと言うのか?」

コロンボ「……」

ヘイワード「じゃあ聞くがここに拳銃はあるか!?」

コロンボ「いやぁ~おそらく無いでしょうなぁ」

ヘイワード「すると拳銃が無いことは認めるのか?」

コロンボ「はい」

ヘイワード「よろしい。これを見てもらおう。これは弾の通った痕だ」

コロンボ「はい」

ヘイワード「この角度で狙ったとすれば……この部屋のこの椅子に掛けていた人物を狙ったものと考えていいんじゃないか?」

コロンボ「はい」

ヘイワード「そして、その1発は目的の人物を撃ち損じた。この壁の、この弾痕がその外れた1発であることは君も同意するか?」

コロンボ「はい」

ヘイワード「さらにこれはハリー・ストーンを殺した、その同じ拳銃から発射されたものであるということも、犯人は同一人であることも認めるか?」

コロンボ「はい」

ヘイワード「じゃあ君の為すべき事は弾を掘り出し、警察で線条痕の検査をすることだろう!」

コロンボ「いいえ」

 

 驚いて振り向くヘイワード。

 

コロンボ「弾はとっくに掘り出してあります。同じ拳銃であることはすでに検査で立証されました。(ポケットからハンカチの包みをとりだす)これです。で、これが鑑識報告です。弾はもう残ってません。ここにあるんです、ハンカチの中に。(ハンカチを開いて弾丸を見せる)……ね、あるでしょう?今日の午後、あなたはバーノン刑事に個人的な電話を掛けるからと言ってこの部屋に入りましたね?あたしは記者ルームにいました。この部屋は615で、記者ルームは616。こっから電話掛ける時は、あっちの電話のライトも点く。ここにはあなたがボタン電話を入れさせてますからねえ。あたしは616のライトが点くのを睨んでました。ほらこれですよ、ねえ。(ボタン式電話を見せる)このライトが点くのを待ちました。……それが点かない。それじゃ何しにここへ入られたのか?それがわからなかった。それで好奇心を起こして2人が投票へ出られた留守に、これ幸いとここにやって来て調べてみましたところが――。まずガラス戸に弾痕があり、それから壁の穴が見つかった。あたしはこいつを壁から掘り出したんです。たった今狙撃されたとおっしゃるが、3時間前に掘ったんです」

ヘイワード「……」

ヴィクトリア「……」

コロンボ「あなたを逮捕します」

 

好事家のためのトリックノートトリック分類表

1-A、人間「一人二役トリック」

●替玉、二人一役

【替玉】

警察の警備をかいくぐるため、犯人が被害者に協力してもらって犯人の帽子と服を着させて車で別荘に行くように指示をする。そして、警備を撒いてから別荘に来た被害者を先回りして待ち伏せて撃ち殺す。

 

3-B、不在証明「時間によるアリバイトリック」

●時刻の誤認

○犯行の後に操作

【被害者の時計を進めて壊す】

殺害後、被害者の腕時計を用意してきた華奢な腕時計に付け替え、時刻を進めて叩きつけて腕時計を壊す。その止まった時刻に犯人が大勢の前でアリバイを作る。

 

8-A、発覚「物質的な手掛かりの機智」

●犯人の失敗

【電話が3分以内の場所に無い】

被害者の壊れた腕時計の時刻から3分後に犯人から警察に電話があったが、現場から3分で車を飛ばしても電話を掛ける場所が無かったため、時計の時刻が偽装だとバレる。

 

8-A、発覚「物質的な手掛かりの機智」

●犯人の失敗

【ボタン式電話のライトが光らなかった】

犯人が個人的な電話をかけたいと寝室に入ったので、隣の部屋で見張っていたが、向こうの部屋で電話をかけると連動して光るボタン式電話のライトが光らなかった。つまり電話をかけなかった。それはおかしいと寝室を調べて犯人の偽装工作が発覚する。

 

 

『刑事コロンボ』各話レビューまとめ


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