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Channel: 裏旋の超絶☆塩レビュー
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『屍人荘の殺人』追記

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ゾンビの出るミステリーというと俺は

真っ先にセオドア・ロスコーの

『死の相続』を思い出します。

あれは隠れた傑作。

機会があれば是非読んでもらいたい。

 

さて、

アメブロは文字数が足りません(泣

こちらのブログで書き切れなかったことを

追記していきます。

 

 

 

 

裏旋の推理

この作品の素晴らしいところは

ミステリマニアなら

すべての謎が解けるように

きちんと伏線が張られていること。

 

俺はいつもは推理せずに読んでいます。

結末で驚きたいから。

推理してしまうと当ててしまうことがよくあって

結末で驚けなくなるのが嫌なんです。

でもこの作品は途中から面白くなって

自分で推理してみようかと思い

じゃあどこまで推理できるか

作者と勝負したくなりました。

 

その結果――

「誰が犯人か?」

「どうやって殺したか?」

その他の細かいことも

だいたい当てることができた。

当てたからといってがっかりしたわけではなく

すごく納得感があって

きちんと推理したら必ず正解に辿り着くように

本当に丁寧に作られています。

 

――では、

俺の推理を順を追って解説します。

 

まず犯人が静原だと気づいたのは

第一の殺人現場で状況を理解するために

見取り図をじっくりと見た時です。

この紫湛荘は部屋の向きがところどころ違う。

殺害現場の進藤の305号室は東に向いている。

そこが妙にひっかかったんだ。

306号室のベランダから板でも渡せば

現場の305号室に入れるではないか。

しかし犯行はゾンビの仕業だとしか思えない。

 

現場の状況からゾンビが連れ込まれたか

急に転化したかの二択で

三階だから連れ込むには入口しかなく

これは難しいから転化だろう。

そこで進藤が傷を負った星川を

匿っているような気がした。

(まだ確信では無い)

 

だとしたら

襲われている進藤を犯人は見てるから

その先にある306号室(空室)、

307号室(静原)、

308号室(葉村)の3つの部屋から

犯人は見ていたことになり

静原と葉村?に絞っていたところに

静原が「いただきます」の紙を拾ったので

1番怪しくなってしまった。

 

鍵のかかった部屋に入って

犯人がこっそり鍵を中において見つけて

密室だったように思わせるトリックは昔からあり、

でもまさかこんな古典的な手を使ったら

みんな静原が犯人だと

わかってしまうのでは?と心配になった。

とりあえず保留ながら以降

静原の言動には常に目を光らせていた。

 

でもどうやって星川ゾンビが

ベランダの手すりから落ちたのか?

屋上のゾンビがレミングスみたいに

こっちを見てそのまま落下する場面で

ああやっぱり星川は静原の姿を見て

ベランダから落下したんだと納得。

一応誰かが306号室の窓から

星川ゾンビを手招きして

落とした可能性も考えていた。

 

第二の立浪殺し。

死体を運ぶのに力がいる話で

比留子が「介護」でも使われると言って

あからさまに医学部の静原を差していて

それはどうかとまで思っていた。

比留子ももう静原だとわかっていたんだ。

高木が七宮と静原が同じコンタクト用の

目薬を使っているという話が

すごくわざとらしくて感じてしまった。

ちょっとヒント与えすぎじゃあ……。

 

立浪殺しのエレベーターに

ゾンビを入らせないトリックは

重量制限と銅像が関係していることは

かなりわかりやすいが

イメージ的に想像が難しい。

どんなエレベーターが見ないと判断できず

まあなんとかしたんでしょうという感じ。

 

気になったのがブザーの音で、

どのくらいの音量なのか

作中で1度は鳴らしてほしかった。

音が大きいと

ラウンジに近い重元には

ブザーの音が聞こえると思う。

 

ゾンビにして2回殺したかったというのは

さすがにわかりませんでした。

その動機、

恵の関係者だと思うよね普通。

名前を偽って入学するのは無理だし

異母兄妹みたいな関係だと思っていた。

静原がわざわざ遠くのキャンパスから

映画研究部に入ったり

合宿参加に積極的な伏線から

動機もある程度は読みやすい。

でもこの動機は説得力に欠ける。

死んだ沙知は静原に

復讐を頼んだわけでも無いのに

どうして彼女がそこまで

自分を犠牲にするのか?

あまりにも現実離れしていると思う。

 

静原と葉村がドアガード越しに

顔を見合わせる場面。

実はゾンビの侵攻をどう防ぐか

考えながらドアの開き方もイメージしていた。

それは開き方(押すか引くか)しか

見ていなかったため

ここは勘違いしていて

ドアの開く方向を逆に見てしまった。

だから何も疑問に思わず、

二階と三階が違うところまで読めなかった。

ここは完敗です。

 

管野が電話でアリバイができて

ラジカセが一瞬消えた時に重元もシロ、

名張は屋上にいるしシロ、

高木はカードキー寝ぼけて裏返しで

葉村が確認してるからシロ、

やっぱり静原と葉村の二択になる。

 

ある人物がクズ野郎と言って

「やった」と犯行を行い

「俺」と言ってるミスリード。

これは静原が実は男なのかと思ったが

だったら高木が気づくだろと思うし

声も女性だし惑わされた。

だから葉村しかありえないんだが

でも葉村は一人称で

「新たな犠牲者が出るとは夢にも思わなかった」

とか言ってるし

それが「嘘」だと作品として壊れてしまう。

葉村は犯人ではないが

何かやましいことがあるとは思ったが

時計を奪い返しに行ったのまでは

わかりませんでした。

 

静原が口数が少なく

ほとんど証言をしないから

消去法で決めつけてしまったが

もっと犯人がボロを出して

決定的なミスがあると良かったかも

というのは贅沢な要求でしょうか。

 

欠点や疑問など

  • フーダニットが弱く、どんでん返しがないことがもったいない。

  • 明智の退場が早すぎて推理対決もなく盛り上がりに欠ける。葉村が明智の死をほとんど悲しんでいないように見えるのも残念。いいキャラだったのに惜しい。

  • 葉村の一人称「俺」がキャラに合っていない。

  • 某レビューで文体がラノベだと酷評されている。軽い部分は否めない。

  • ゾンビが出て来てがっかりと言う人が多い。最初からゾンビ要素があることを明かすべきだと思う。それとやはり文字ではゾンビの恐怖は伝わらない。

  • 剣崎比留子のキャラが苦手。「ちゅーしてあげる」「はわっ」「膝枕してあげるから」とか作者の欲望丸出しで気持ち悪い。

  • 犯人・静原の動機に説得力が無さ過ぎる。葉村が静原をかばう理由も謎。

  • 比留子が葉村を助手にしたい理由も弱い。葉村しかいない理由がほしい。

  • 犯人・静原の印象が薄すぎる。しゃべらない人狼が勝つようなもの。

  • 静原が償いのため「お金でも体でも」と言うが、それをしたら結局「男は体目当て」と軽蔑するだけで、葉村のいうような救いの展開にはならない。

  • 立浪殺しの時、睡眠薬入りコーヒーを飲んでいない葉村と重元がいるのに犯行に及び、まだ七宮を殺していないのに4時間も転化を待つのはリスクがありすぎる。

  • 空気感染、飛沫感染がゼロだとわからないのに、防御も徹底しないでゾンビを気軽に倒しすぎている。目に入ったり手についたら口に入るのも時間の問題。とくに立浪殺しは眼鏡でも返り血が目に入る危険が高い。それと、そんなうまいこと槍で眼窩から脳を貫けてたまるか。

  • 人間がゾンビになった途端、生きている人間の肉を噛みちぎったり服まで破るのはやりすぎ。ロメロのゾンビは確かに容易く肉を裂く感じだったがあれは映画の恐怖演出なので子供じゃないんだし真に受けないでほしい。

  • 葉村が腕時計をこっそり取り戻す件。夜にこっそり行く必要が全く無い。みんなに「二階に戻れなくなる前に腕時計を取り返したいです」と断れば済む話。自分の腕時計なんだから。

  • もっと早い段階でヘリが来ない、なぜか電波が繋がらないというご都合主義。

  • 重元が警察に連行される件はいらない。拾った手帳であることは書かれた言語で重元ではないとわかるし、警察に繋がりのある比留子が廃ホテルにあったことを証言すればいいだけ。

  • 七宮が今年も立浪を連れて来なかったらどうしたのか?立浪も前回で懲りたはずなのになぜ参加したの?

  • 静原もコーヒーは飲んでいないがそれを言わないのは反則。飲むふりをしていたのだろうが、コーヒーが減っていないことは誰かに見られたらわかる。

  • 立浪を起こさずに引きずることは不可能。殴って気絶させたとか適当すぎる。さらに小柄な静原が40キロの銅像を引きずってエレベーターに運ぶ。5体も。文字にすると「出来そう」だが、問題はその後「腕が筋肉疲労で動かなくなってしまいます」

 

 

好事家のためのトリックノート(トリック分類表

1-B、人間「意外な犯人トリック」

●ゾンビが犯人

【密室内でゾンビに転化】

密室内に一緒にいた傷を負った人物がゾンビに転化して被害者を噛み殺す。

 

4-A、凶器・毒物「凶器トリック」

●その他の奇抜な凶器

【ゾンビ】

積載量オーバーギリギリのエレベーターに縛った被害者を乗せて、ゾンビのいる一階に降ろし、被害者がゾンビに噛み殺された後で二階に引き上げる。

 

4-B、凶器・毒物「毒殺トリック」

●嚥下毒

○毒以外を飲ませる殺人

【ゾンビの血】

殺したい相手の使用している目薬と同じ物に、ゾンビの血を混ぜて、被害者の目薬とすり替えておく。目からゾンビウイルスを吸収する。

 

6-B、動機「動機トリック」

●意外な動機、異常な動機

【2回殺し】

ゾンビに殺させた後、わざわざ死体を回収してゾンビになって動き出したところをまた殴り殺す。その理由は被害者を2回殺したかったから。

 

8-A、発覚「物質的な手掛りの機智」

●偶然、超自然的なものによる発覚

【ラジカセの音が一瞬止まる】

犯人が被害者の部屋のカードキーを自分の部屋のカードキーとすり替えた際に、電気が消えてコンセントに繋いで鳴らしていたラジカセの音楽が一瞬途切れた。その時刻から犯人が特定される。

 

9-A、その他「特殊トリック」

●偶然の犯罪

【殺人を目撃】

ゾンビが密室内で人を襲うのを目撃して、「ごちそうさま」という人間のメッセージを残し、その犯行を自分の犯行計画の1つのように思わせる。

 

9-B、その他「叙述トリック」

●場所の誤認

【三階→二階】

語り手がドアガードの隙間から廊下を覗くと隣の部屋の人物と目が合ったという描写があるが、部屋の構造上、三階だとドアの開閉方向が逆のため目を合わせることができない。実は自分たちの部屋ではなく二階で目が合っており、その2人とも隠し事をしていた。

 

 

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