あの盲目の老人、再び
大ヒットホラー、5年ぶりの続編!
ひとりの少女をめぐり、再び暗闇での惨劇が始まる――
『ドント・ブリーズ2』
[Don't Breathe 2]
(2021年)アメリカ映画
<あらすじ>
人気のないデトロイト郊外の古びた屋敷に住む、ある盲目の老人(スティーヴン・ラング)。彼はその屋敷で一人の少女フェニックス(マデリン・グレイス)を大切に育て、二人だけで静かに暮らしていた――。その男こそ、8年前、強盗に押し入られた被害者として生きているが、実は強盗団を惨殺した過去をもつ、あの盲目の老人だった……。
ある日、謎の武装集団が老人の屋敷に静かに忍び込む。その目的は少女の拉致だった。老人は暗闇の中、全てを知り尽くした屋敷内で全員の抹殺を試みるも、訓練されていた集団は老人に反撃し屋敷に火を放つ。命からがら炎の中から逃げ出したが、そこに少女の姿はない。目覚める狂気の怒り。老人は己の手で大切に育てた少女を取り戻すため、武装集団の後を追う。
その集団はなぜ少女を狙うのか、少女はいったい何者なのか、老人はなぜ少女に固執するのか。
全ての真実を知ったとき、前作を超える衝撃に息が止まる――。
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<スタッフ>
監督・脚本・制作 ロド・サヤゲス
脚本・制作 フェデ・アルバレス
制作 サム・ライミ
ロバート・タパート
音楽 ロケ・バニョス
撮影 ペドロ・ルーク
編集 ジャン・コヴァック
<キャスト>
スティーヴン・ラング(ノーマン・ノードストローム)盲目の老人
マデリン・グレイス(フェニックス)老人の養女
ブレンダン・セクストン三世(レイラン)武装集団のリーダー
フィオナ・オシャーグネッシー(ジョセフィン)レイランの妻
ステファニー・アルシラ(ヘルナンデス)老人の旧友
アダム・ヤング(ジム・ボブ)武装集団の男
ボビー・スコフィールド(ジャレッド)武装集団の男
ロッチ・ウィリアムズ(デューク)武装集団の男
クリスティアン・サギア(ラウル)武装集団の男
感想
前作の事件から8年後、
盲目の老人は郊外の屋敷に
11歳の少女フェニックスと2人で暮らしていた。
成長するにつれ外の生活に憧れる少女。
定期的に老人のもとを訪れる旧友の女性に
久しぶりに街に連れていってもらうが
その少女を付け狙う男たちがいた。
彼らは屋敷まで車を尾行して近づき
女性を殺害したあとで番犬も始末すると
老人がいない間に屋敷に忍び込む。
娘が危ないと気づいた老人は
謎の武装集団に決死の戦いを挑む――。
強盗に入った若者たちが
家の主である盲目の老人から
逆に狩られる恐怖を描きヒットを記録した
ホラー映画『ドント・ブリーズ』の続編。
前作を監督したフェデ・アルバレスの
共同脚本家ロド・サヤゲスが
本作では監督を務めた。
少女は老人を「パパ」と呼ぶが
前作で実の娘は死亡しているし
シンディが身ごもった子供も死んでいるため
この子がいったいどういう経緯で
老人の元にいるのかがポイント。
そこに少女を連れ去ろうとする
謎の武装集団がやって来るのだが、
この武装集団自体が
全然良いやつに見えない。
まず無関係な女性を殺しているし
犬もおびき出して殺している非道な奴らだ。
そのこともあって前作では老人が
主人公の敵として描かれていたが、
続編では視聴者が
老人の方に感情移入するようになっている。
悪の武装集団に1人で立ち向かう
主人公として描いているのは面白い構図。
中盤で少女が何者なのか、
武装集団の目的も判明するが
この老人主人公の構図が
最後まで変わらないことも良かった。
「だよな!」って思ったもん。
だからラストのアレもスカッとしました。
俺個人の評価は
「意外に面白いな」という感想。
前作ほど
「息を潜めるスリリングさ」が無くなって
そこは賛否分かれそうだけど
洋版「座頭市」みたいな
痛快アクションとして楽しめました。
ちょっとグロいけどね。
盲目ならではの音を利用した殺害方法や
水の波紋からの早撃ちはかっこよかった。
あの終わり方だとおそらく
続編……ありそうです。
★★☆☆☆ 犯人の意外性
★★★☆☆ 犯行トリック
★★★☆☆ 物語の面白さ
★★★☆☆ 伏線の巧妙さ
★★☆☆☆ どんでん返し
笑える度 -
ホラー度 ◎
エッチ度 -
泣ける度 -
評価(10点満点)
7点
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※ここからネタバレあります。
1分でわかるネタバレ
○被害者 ---●犯人 -----動機【凶器】
①ヘルナンデス ---●ジム・ボブ ---口封じ【撲殺:ハンマー】
②デューク ---●老人 ---障害の除去【爆死:ガス爆発】
③ジャレッド ---●老人 ---障害の除去【斬殺:スコップ】
④ジム・ボブ ---●老人 ---障害の除去【撲殺:ハンマー】
⑤⑥⑦武装集団の男達 ---●老人 ---障害の除去【射殺:銃】
⑧ヘニマン医師 ---●レイラン ---偶然の誤射【射殺:銃】
⑨ジョセフィン ---●レイラン ---偶然の誤射【射殺:銃】
⑩レイラン ---●フェニックス ---障害の除去【刺殺:ナタ】
<結末>
フェニックスを連れ去った武装集団は
実の父レイランとその仲間で
8年前に家の地下で違法薬物が爆発し
その時の火事で3歳の娘がいなくなり
自身は8年間刑務所で暮らしていた。
火事のあった廃墟を訪れた時、
てっきり死んだと
思っていた娘を見つけたレイランは
娘を取り戻すために
仲間を集めて老人の屋敷に忍び込んだのだ。
しかしその裏に邪悪な企みがあった。
フェニックスの本名はタラ。
本当の母ジョセフィンと再会するが、
ジョセフィンは爆発事故で呼吸器を損傷し
親族の臓器がなければ助からない重篤な状態。
組織はジョセフィンを失うわけにはいかないため
娘の心臓を移植させようと計画していた。
だが手術目前で暗転。
武装集団の飼い犬に
道案内させた老人がホテルに乗り込み
次々とレイラン一味を殺し、
ジョセフィンも流れ弾で死亡。
レイランは両目を潰され戦意喪失。
駆けつけてくる少女に老人は
レイランが言ったことは全部事実だと告げる。
戸惑う少女。
しかしその時
まだ息のあったレイランが老人を刺し、
老人の喉をナイフで切ろうとする。
――が、
後ろからフェニックスがレイランを刺し貫く。
少女は出血多量の老人を助けようとするが
老人はもう救ってもらったと言って力尽きる……。
どんでん返し
まず中盤で
武装集団のリーダーが
フェニックスの実の父親で
老人が少女を連れ去った犯人だと判明。
しかしその親も
娘の心臓が目的だと判明する。
終盤のどんでん返しといえるのは
老人とレイランの戦いで
フェニックスが実の父親ではなく
育ての父親を選んで
レイランを刺し殺したことでしょう。
ただどちらも
予想できた展開なので驚きは少なかった。
伏線解説(★は巧妙なもの)
①【一房の白い髪】
フェニックスは髪の毛に一房
白い髪が混ざっていて
これは死んだ母親似だと
老人は教えている。
- 後に本当の父親レイランが白い髪を見せて、彼が実の父親であることを証明する。レイランとフェニックスが公衆トイレで遭遇したとき、②背景が赤い壁だったのは「血が繋がっている」ことを表現する意図があったらしい。
③【母が歌っていた歌】
フェニックスは
「鳥よ飛べ 飛べ鳥よ」という歌を
朧気に覚えていて、
これはフェニックスが幼い頃
母親が歌っていて記憶に残っていた。
- これも実の母親との繋がりを証明する伏線。3歳の時の火事で母親は死んだとパパに教えられていたが……。
④【臓器売買のニュース】
臓器売買のグループのリーダー
ヘニマン医師を指名手配のニュースで
誘拐が多発していることが伝えられる。
物語中盤でヘニマン医師らしき人物が
レイラン側の人間として登場。
- これは伏線でありミスリードでもある。確かにフェニックスの臓器が狙われているのだが、襲ってきた連中がただの犯罪者集団に見えたほうが中盤のどんでん返しで驚きが増すため。
⑤【ヘルナンデスの車の鈴】
ヘルナンデスの車のバックミラーに
鈴がついている。
- 老人が武装集団のホテルに乗り込む前、この鈴をひとつちぎって持ち、残りの鈴を犬の首輪につけて目印とした。目の見えない老人が正確に相手の位置を知るために、この鈴を敵の口に飲み込ませて位置を特定して倒した。
⑥【ジム・ボブのハンマー】
武装集団のジム・ボブは
ヘルナンデスをハンマーで殺した。
いつもハンマーを持ち歩いていて
老人に最初にダメージを与えている。
- 最終的にそのハンマーを奪われて、銃を取りに歩いたところを老人がハンマーを投げて頭をかち割られる。「これはシャドーの分」と言って殴ったが、シャドーは撃ち殺されたので無関係。当初は「ヘルナンデスの分」だったが、試写後にスタッフから「これは犬の分にするほうがいい」と言われて変更したらしい。
⑦【ラウルの裏切り】
武装集団の1人ラウルは
正しい倫理観を持っており
娘の心臓を犠牲にする
レイランのやり方に納得できない。
「これは間違っている」とつぶやく。
- ラウルが裏切る伏線。ラウルはフェニックスを捕まえた時も手荒なことはしなかったし、まだ犬が中にいるぞとレイランに警告するなど、悪党の中でもマシな奴だった。老人のすご技を見た後、無防備な老人を撃ち殺せたのに殺さなかったが、撃った直後に正確に刀が飛んでくることも予想していただろう。
欠点は……
- 3歳の娘が親の記憶をほぼ失って、赤の他人である老人を信じる設定はやや苦しい。誰しも3歳以前の記憶は覚えていないものだから、絶対ありえないとは言わないが……。
- 水道水でいっぱいになった箱に人を入れて電線を通しても感電死はしません。もっと塩分が必要です。ただし電流が心臓や神経などの重要器官を通過すれば死亡する可能性はあります。
- 襲って来た犬をあえて殺さなかったことが後で役に立つが、そんなうまく敵意を失わせて手懐けたりできるものだろうか。それと犬の飼い主がレイランだとしたら殺されそうになったからといって急に飼い主に噛みつくのもなんだかおかしい。奥さんが飼っていてレイランは犬嫌いならまだ理解しやすいが。
- 老人がいくらタフだといってもどんなに傷ついても死なないし、水の波紋で人の位置を特定するのは超人的すぎて現実味がない。
- 前作は強盗に入られて正当防衛を主張できたが、今回は明らかに犯人である証拠を残しすぎている。
- 今作は『ドント・ブリーズ』というタイトルが回収されない。「息をするな」なのに溺れかけたフェニックスに「息をしろ」と言ったところくらい。
よくある疑問
Q、「夕方までに戻れ」と言って、フェニックスを街に送り出した後「ヘルナンデス」と呟いた意味は?
街に連れて行ってくれた女性が
ヘルナンデスという名前。
彼女は元アメリカ陸軍
レンジャー部隊隊員で
老人とは旧友の仲で現在の唯一の友人。
老人が他人の子供を
育てていることも知っている。
彼女を巻き込んで殺されてしまったことで
自分が周りに不幸をもたらす怪物だと
気づくきっかけになった。
Q、フェニックスが子供達に混ざって遊ぶシーンはなぜ妄想なの?
最初の脚本の段階では
実際に混ざって遊ぶ脚本だったが、
空想だったほうが寂しさを表現できて
効果的だと判断して空想になったようです。
Q、ガレージに車があったけど、老人が運転するの?
あの家は元は違法薬物の
過剰摂取で死んだ男の持ち家で
車もその男の物。
そこに老人が勝手に住みついて改装して
点字で読める本や点字の絵画などを
老人が集めている。
Q、派手に家が燃えたけど全部CGですか?
実際にデトロイト郊外の
家を燃やして撮影している。
建物の外観などはCGを合成し
犬は本物とゴム製ダミーを使い分け
老人が犬に襲われるシーンの後ろ姿は
ダミーの犬の頭をスタッフが動かし、
レイランに噛みつく場面は
実際の訓練士に噛みつかせている。
Q、前作に似たシーンが多いのは意図的?
冒頭の空撮、
家に侵入しようとする3人の後ろ姿、
前作のスポイトが掛かっていたり、
ガラス天井が割れて落下、
間違って愛する人を撃ち殺す、など
似た演出を意図的に入れている。
Q、プールに落ちそうな母の手と手錠で繋がったフェニックスが、手錠ではなく母の腕ごと切り落としたのはなぜ?
監督はへその緒をイメージしたという。
母がどんな人だったのか
物語の最初から深い愛情を持っていたが
実際の母はその期待を裏切った。
母との関係を断ち切るために
手錠ではなく手首を切らせたらしい。
……にしてもグロい。
Q、もう1つのエンディングがあるそうですが、どんなエンディングですか?
特典映像に「もう1つのエンディング」
というのが収録されています。
が、本編とほぼ同じ。
違うのは少女が1人で歩いて行ったのが、
1人生き残った武装集団の男(ラウル)が
コベナント養護院まで車で送り
「god speeds.(頑張れよ)」と言うだけ。
その後の名乗りも「フェニックス」と同じ。
まだまだ続く?
この映画のラスト、
血だらけで倒れた老人の元へ
犬が走り寄ってきて指を舐めると
その場で座り込む。
指が動いたどうかはっきりわからないが
犬が老人を待っているということは
生きているということでしょう。
死んでいたらさっさと他の所へ行くはず。
これはいつでも
続編作れるようにという伏線。
上の感想でも書いたが
今作で老人の見方が変わったのは確か。
とくに犬を殺さなかったのが良かった。
過去に犬に助けられたことがあるらしく
それで他人の犬でも殺せないのだとか。
それに比べて自分の犬も躊躇無く
殺そうとするレイランはクソ野郎だ。
脚本家が言うには今作では
「父親として子供に愛される資格があるか」
というテーマを描きたかったらしい。
老人は怪物のような面もあるが
フェニックスに対する愛情は本物で
実の父親よりも愛情は深い。
一方で実の父親は娘の命より
妻とビジネスの未来の方が大事。
だからこそ最後の一突きに説得力があるし
見ている観客も共感できた。
「1と2を続けて観て
セットで1本と考えたらとても面白い映画」
というレビューを見て同感。
俺も1は胸糞悪いなーと思っていたから
2で評価が上がった。
2から見た人は後で1を見てドン引きするかも。
しかしここから続編に繋げるとして
老人はどこでどうやって
生きていけばいいのか。
またフェニックスと再会するのだろうか。
あるいはフェニックスが主人公なのか。
2人の物語の続きを見てみたい。