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Channel: 裏旋の超絶☆塩レビュー
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【ネタバレ注意】長沢樹『消失グラデーション』の感想。

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本屋で平積みになったり、
なんだか凄いと
評判なのでこの作品を読む。

『消失グラデーション』  
長沢樹(2011年)

消失グラデーション (角川文庫)/KADOKAWA/角川書店

¥734
Amazon.co.jp

第31回横溝正史ミステリ大賞受賞作。
「このミステリーがすごい!」第6位。
「本格ミステリ・ベスト10」第6位。

前評判が高く
期待のハードルが上がる。
しかし読み始めてみると
学生たちの
無駄に思える描写が多くて
なんか読みづらい。

そして、
最後はがっかり・・・
ああ、読むんじゃなかった。
世間の評価はあてにならない。

あらすじ

「僕」こと、
藤野学院高等学校の2年生
椎名康(しいなこう)は、
クラブ棟と倉庫に挟まれた
常緑樹に囲まれた安全地帯
「背徳の死角」で、
今日も女の子と逢引きしていた。

そこにクラスメイトの放送部員
樋口真由(ひぐちまゆ)が現われて
わたしの邪魔をするなと言ってくる。

その理由とは、
最近学校内で発生している
連続窃盗犯ヒカル君
捕まえるために
倉庫に監視カメラを
セットしているのだが、
そこに椎名が女の子と
みだらな行為をしているため、
撮りたくないものを
撮らされて憤慨しているらしい。

ヒカル君とは目撃者の
友達の彼氏に似ていたから
付けられたあだ名で、
背の高い美青年だという。
昨年の秋に女子の制服や
ジャージが盗まれて大騒ぎになり
学校側は監視カメラを設置したが
樋口は公園側のフェンスと
「背徳の死角」と
呼ばれる場所が盲点だと読み、
学校側が動いてくれないので
自分でカメラを仕掛けていた。

藤野学院の男子の制服が
オークションで落札されたので、
樋口はヒカル君が学生になりすまして
再び侵入してくる可能性があると言う。

僕はバスケ部ではレギュラーではなく、
練習試合の映像を撮るカメラ係。
放送部の樋口と一緒に撮影して
樋口がプロ顔負けの編集をする。

2月27日。
女子バスケ部の練習試合はエース
網川緑(あみかわみどり)の活躍で勝利した。
しかしチームワークが悪く、
無言でコートを出ようとする網川を
小学校から同級生だった
柴田佐紀が厳しく注意する。
気まぐれなエース。
試合の後のミーティングにも出ない。

3月2日。
練習試合の映像編集を手伝う僕。
カメラで網川ばかり撮っていたと
文句を言う樋口。
そう僕は網川が好きなのだ。

網川は天才的に上手い。
しかし個人プレーが目立ち
孤立して活かされず、
チームがうまくいっていない。
網川は雑誌の読者モデルも
掛け持ちでやっている人気者で
それが原因の一因かもしれない。

樋口が監視カメラのセットに
行くと言うので付き合う。
樋口はヒカル君が侵入するのは
午後5時から6時の間だと断言する。
この時間がクラブ活動で人が
一番少なく侵入に最適な時間らしい。

カメラを取り替える樋口。
ふとフェンスの向こうに
誰かの視線を感じた。
アドリブで樋口を抱きしめ
恋人のふりをしながら
誰が覗いているか観察すると
ジョージだった。

ジョージとは僕のつけたあだ名で
20代の作業服のあやしい男のこと。
前にも学校の近くでカメラで
盗撮しているのを見たが、
例のヒカル君と違って美青年ではない。
ただのキモ男だ。

カメラを交換した後、
僕は遅れて
男子バスケの練習に参加する。
マッチアップは主将の鳥越裕一だ。
何度もはじき飛ばされ
僕は足をくじき
心配した鳥越が
コートから出るように指示する。

部室で休んでいると
チーフマネージャーの
矢野祥子(やのしょうこ)がやってきて
足の手当をしてくれる。
網川は今日も部活を休んでいるらしい。
前主将の三年生・伊達絢子
網川とコンビを組み、
網川を育て上げた。
しかし伊達さんが引退してから
新主将の関戸アケミとは
息が合わず上手くいっていない。

午後5時30分。
樋口が僕について来てと言い、
女子トイレに入っていくと
網川緑がカッターで手首を切っていた!?
保健室ではなく
放送部に網川を連れて行き、
救急箱で応急処置をするが
傷は深く出血もひどい。
いくつもリストカットの痕があり
網川が何度も
自傷行為をしていたことを
僕は初めて知った。

樋口の顔なじみの病院を紹介され
網川の傷を縫合してもらう。
病院の帰りに学校に寄り
網川がスポーツバッグに
荷物をまとめはじめた。
そして僕と話をしたいからと
屋上に上がる網川。

網川はよく屋上で
ここからの景色を見ているらしい。
柵が低いので僕は危ないと狼狽する。
下は暗くてよく見えない。

今日女子バスケ部監督の
坪谷菜穂先生と喧嘩して
それで気がついたら
リストカットしていたのだと言う。
そしてもう
バスケ部に戻らないと言い切る。

体育館に明かりが残っていた。
行ってみると
矢野が練習していて
そこに関戸もやってくる。
僕は網川に言われるまま
コンビを組み
初めてなのに息の合った連携を
関戸の前で見せつける結果に。
自分とはできないのにと悔しがる関戸。
泣いている関戸を見て
僕は悪い事をしたなと反省するが、
網川は構わずバスケを辞めると言って
先に帰ってしまった。

3月3日。
放課後、関戸を泣かせたことで
柴田が僕に絡んで来た。
昨日、網川と一緒だったことで
「緑としたのか」と挑発してくる。
さらに伊達さんにしたことを持ちだされ
僕はブチ切れて手が・・・。

そこに樋口が割って入り、
僕と柴田を引き離す。
鳥越も仲裁に入ってきてくれたが
僕を愛してるとか
余計ややこしくなることを言って
柴田に「ゲイ野郎が」と吐き捨てられる。

午後5時10分。
僕は屋上で本を読んで
時間をつぶしていた。
そこに、
カッターを持った網川がやってくる。
今日は坪谷先生と麻生先生と
面談をしていたはず?
伊達さんも説得に来ていたらしいが
うまくいかなかったのか?

網川がまた
手首を切りたい衝動にかられ、
僕は救急箱を取りに下に降りると、
運悪く伊達さんに遭遇。
網川を捜していたが
どこにいるか答えなかった。

救急箱を放送部に
置き忘れていたことを思い出し、
救急箱を持って
やっと屋上に戻りかけたところで
踊り場の外に何か重い物が
落下したような音を聞いた。

屋上に行くと誰もいない。
まさか----。
あわてて僕は公園側の下を覗く。
下のコンクリートに人間の姿。
網川だ!
急いで階段を降り、
倒れている網川に
呼び掛けるが返事が無い。
早く救急車を・・・
そう思った瞬間、
何者かに後ろから首を絞められる。
人の腕だ。筋肉質な腕。
「ごめん。君が悪いわけじゃないんだ」

気がついた時、
網川は消えていた。
僕は上半身裸で鼻から血が出ていた。
意識が朦朧とする。
誰かが僕の名前を呼んでいる。
樋口と矢野がいた。
救急車のサイレンが聞こえる。
僕は過呼吸になり、
そのまま救急車に乗せられた----。


屋上から転落した生徒の
消失事件を世間は大きく報道する。
網川緑はまだ見つかっていない。
どこに消えたのか?
死んでいるのか?
生きているのか?

僕を襲った人物の正体とは?
ヒカル君なのか?
それとも別の誰かか?

網川は屋上から
自殺をしたのだろうか?
樋口には網川は絶対に自殺してないと
何か確信があるようだが・・・

樋口は
僕を危険な目に
あわせたことを後悔する。
そして絶対にこの事件を
解決すると誓う。


解説

屋上から転落した女生徒を
助けようとした主人公は
何者かに気絶させられ、
気がつくと
倒れていた女生徒の姿が
忽然と消えていた。
厳重な防犯カメラには、
被害者の姿も
大きな荷物が出ていくところも
映っていない。
人間消失の謎に
キュートな学生探偵・
樋口真由が挑む青春ミステリー。

樋口真由“消失”シリーズ第1作。
改題前のタイトルは
「リストカット/グラデーション」

高校バスケ部の
友情と葛藤を描いた青春小説であり、
人間消失を扱ったミステリー。
物語中盤までは
淡々とバスケ部の人間関係が説明され、
やや退屈であるが
終盤は一気に新事実が明かされていく。

探偵役の樋口真由は、
放送部に所属していて
カメラに精通し、
普段は他人を
寄せ付けないオーラを纏う。
その割に信頼を得る術を心得ていて
バスケ部マネージャー矢野祥子から
「マユたん」と呼ばれていたりする。

席が隣同士になった椎名康とは
カメラ趣味で意気投合し、
やがて親しくなるが
樋口は椎名はただの友達で
とくに気は無いらしい。
物語はその椎名の目線で描かれている。

樋口が独自に犯人を見つけようと
監視カメラを仕掛けたことから始まり、
謎の侵入者ヒカル君や
不審人物ジョージや
一癖も二癖もあるバスケ部の関係者が
物語を複雑なものに変えていく。

終盤に畳みかけるように明かされる
二つのどんでん返しの意外性は十分で
これは騙される。
というか真面目な人ほど見破れない。

消失トリックは
それしかないだろうというものだが
よく考えると無理も多い。
カッターナイフの「動き」を使って
トリックのヒントを与えているのが
優れた点だろう。

欠点としては・・・

●特殊設定のやりすぎ。
マイノリティが集まりすぎ。

●聞いたことのない〇〇が出て来る。

●リストカットの心理がわからないので
網川に共感できない。
とくにラスト。

●事件の本題に入るまでが冗長。

●主人公につっかかる奴が多く、
読んでいて不快だった。
主人公も遊びで女に手を出したり、
すぐキレて乱暴したり、
いまいち共感できず。

●トリックはぎりぎりフェア・・・
と言いたいところですが
アンフェア(反則)です。

●最後まで謎が残る。
一番知りたい謎がアイツのこと。

●読み物として
圧倒的に面白くない。

俺の感想は・・・

(せんちゃん)
どれを読もうか迷っている時、
これ面白そう!と手に取ったはいいが
あまりにひどい内容で
がっくり来てる男がいるんですよ~。

(まじめ)
なぁ~にぃいい~?
やっちまったなぁ!!

男は黙って、

「広辞苑」

男は黙って

「広辞苑」

(せんちゃん)
豆知識ばかり増えるよ~。


などとネタやってる場合ではない。

これは失敗だった。
俺の選択ミスだ。

前評判が高いから期待したのに、
なにこのトリックは!?
がっかりしました。
ありえなさすぎる。

これが大賞ねぇ。
横溝正史の名が泣くぞ。
この内容なら
メフィスト賞の方が合うと思う。

確かに騙されましたよ。
しかし再読して伏線を丁寧に拾っても
「うわ~やられた!」と思うほど
凄い伏線はなかった。
だから腑に落ちない感じが強い。

肝心の消失トリックも
それをする必然性を感じない。
主人公が上半身裸だったのも
トリックのためのトリックで
無理やり感が半端ない。

キャラ的に良かったのは
男子バスケ部主将の
鳥越が面白かった。
こういうバカキャラは和む。

樋口真由もわりと好き。
俺のイメージは
広瀬すずだったな。


結構合ってると思う。
マヨビーム掛けられたい。

そして
物語のキーパーソンの
網川緑はSKE48の松井珠理奈。


昔から大人びたルックスで
孤高なエースのイメージがダブる。

とまあキャスティングは
結構ハマっていただけに
終盤のオチで「おいおい」と
なってしまったことは言うまでも無い。

今から読もうかなと思う人に忠告。
読むのは時間の無駄です

★★☆☆☆ 犯人の意外性
★★★☆☆ 犯行トリック
★★☆☆☆ 物語の面白さ
★★☆☆☆ 伏線の巧妙さ
★★★★☆ どんでん返し

笑える度 △
ホラー度 -
エッチ度 〇
泣ける度 -
 
総合評価
 6.5点





---------------------------











※ここからネタバレあります。
未読の方はお帰りください。
 












-------------------------------



※ネタバレを見てはいけないと
書いてあるのに
ここを見てしまう「未読のあなた」
あなたは
犯人に最初に殺されるタイプです。
十分に後悔してください。


ネタバレ解説

〇被害者 ---●犯人 ---動機【凶器】
網川緑 ---●伊達絢子 ---事故(救出目的)【バレーボール】

結末
網川は屋上で
リストカットしようとしていたら
それを隣の校舎B棟から見ていた
伊達が気づき、
持っていたバレーボールを投げて
自殺を止めようとした。
それが網川にあたってしまい
屋上から転落。

落ちた網川だったが
生きていて、
その場に居合わせた「ヒカル君」に
協力を頼み、
気絶した椎名と制服を交換し、
ヒカルが屋上のカバンを回収した後、
網川は堂々と正門から出た。

網川は
「女性から男性になる病気」に悩み
バスケ部を辞め、
人生ごと消えてしまう。

叙述トリックについて。  

この作品は叙述トリックによる
どんでん返しが仕掛けてあります。

まずP.380で
バスケットボールを投げた犯人の
伊達さんに椎名康が詰め寄る場面。
あの時、
屋上にいたのは網川だが、
伊達さんには
椎名に見えたのではないか?と。
それは椎名も高身長で
スカートを履いた「女」だったから。

“網川は伊達さんに背を向けた状態だった。僕と網川は身長も体型もほぼ同じ。
そしてあの時、僕は網川と同じ学校指定のクリーム色のセーターを着て、同じブラウスを着て、同じスカートを穿いていた。”(P.380)


一瞬、椎名が何を言ってるのか
わからなくなった人も多いだろう。
つまり、椎名康は女性だったという
性別誤認のトリックが仕掛けてある。
「男」だと思わせて「女」だった。

そして、
P.389で今度は
樋口真由が「男」だとわかる会話が出て
読者はお前もかよ!と唖然とする。
「女」だと思わせて「男」だった。

このトリックの上手いところは、
椎名が男にしか見えないこと
樋口が女にしか見えないこと
お互いの性別誤認を
支え合っているという関係性だ。

なにせ二人がいる場面で
「彼氏彼女の関係?」と聞かれたり(P.46) 
体育は男女別になる(P.49)とか
向かい合って話している制服姿の男女(P.242)など
やたらと「男女のペア」を
強調して書かれている。

そのため
椎名が男性だとすると
樋口が女性と確定して
容易に思いこませることが
できるという点にある。

もちろん
2人の言動もミスリードだらけ。

椎名康---(女性)
男言葉を使い、一人称「僕」
男子バスケ部の練習に参加する。
男子バスケ部部室に入る。
咲羅と逢引きしてキスする。
坪谷から誘惑されてキスされる。
網川に対して恋愛感情を持っている。
伊達さんを押し倒し、
ベッドシーツに赤い染みを作らせた。(P.122)


どう見ても男です。
とくに⑦は破瓜の血だとしか思えない。
まぎらわしいにもほどがある。

樋口真由---(男性)
女言葉を使い、一人称「わたし」 
女子用のクリーム色のセーターを着ている。(P.11) 
矢野に「マユたん」と可愛いあだ名で呼ばれる。 
スカートを履いて「似合う」と絶賛される。(P.314) 

どう見ても女です。
これを見破るほうが無理がある。

見破れないのか?と言われると
一応手掛かりはあります。
伏線を分析してみる。

まずは2人を客観的に見ている
ヒカル君の視点から。
“制服姿の男女---藤崎と呼ばれた少女は着衣が乱れ、困惑した様子で金網を背にしている。そして、男子生徒と対峙するように、不機嫌そうな女子生徒。張りつめた空気。現場を押さえた側と、押さえられた側の修羅場といったところか。”(P.24)

 →ここでいう
 男子生徒は椎名ではなく
 樋口のことで、
 女子生徒は樋口ではなく
 椎名のことで・・・
 う~ん、ややこしい。

 このあと「どうしてここが?」と
 続いているので
 直前の会話は樋口の言った
 「邪魔しに来たんだけど」になる。
 
 この時、
 樋口は「物憂げに言った」とあり、
 「不機嫌そうな様子」ではないので、
 不機嫌そうな女子生徒は
 椎名のほうである
 という論理が成り立つ。

では別々の伏線を分析しよう。

椎名康
男子バスケ部部室にいると
「こっちにいたんだ」と言われる。(P.54)
 

 →女子バスケ部部室じゃなくて
 男子の方にいたんだ、という意味。

男子バスケ部主将・鳥越に惚れられ
猛烈にアピールされる。
 

 →一瞬そっち系の趣味かと思わせ、
 すごく自然な恋愛感情でした。

「個人の趣味」のダブルミーニング。 
“「男は無理ってはっきり言ったとき、泣きそうな顔してたけど」
鳥越をぶん殴らなかった自制心に、僕は自分の成長を感じた。
まあ個人の趣味とか性癖にとやかくは言わないけどさ」”(P.56) 

 →話の流れから鳥越との関係を
 男同士のBLな関係に重ねてしまうが、
 女性の椎名が
 男嫌いでレズビアンなことを
 心配した矢野の台詞でもある。

 一つの言葉が二つの意味に取れる。
 いわゆるダブルミーニングである。
 ミスリードも兼ねている。

 ちなみに作中で「ビアン」と
 書いてあるが、
 実際のレズビアンの方は
 「レズ」と呼ばれるのを嫌う。
 「ビアン」と自分たちで言うらしい。
 作者はよくご存じで。

 男性同士の「ホモ」は差別用語なので
 これを使うのは無知なアニヲタくらい。
 実際には「ゲイ」が一般的。
 (「有吉ジャポン」でやってた)

事件後、上半身裸の椎名に
ブレザーを掛けてくれる。
 

 →やけに見えないように配慮しているが
 椎名が女性だから当然。

姉の美耶が過保護で、
上半身裸だったことを妙に気にする。
 

 →もちろん女の子であるため。

⑥カッターナイフの「動き」が
2つのトリックの手掛かり。
事件前日に椎名がポケットに入れた
カッターナイフが
網川の制服と一緒に出て来る。
 

 →本人は気づいていなかったが
 椎名が持っていたカッターは、
 事件の時に網川が
 スカートを交換したために
 網川と一緒に校舎の外に出た。
 そのスカートがヒカルから
 ジョージに渡って警察に発見された。

 これは椎名と網川が
 服の交換をした「消失トリック」と
 女性であるという「叙述トリック」を
 同時に看破できるヒントになっている。
 この「カッターナイフの伏線」だけはいい。

樋口真由
「変な趣味してるけど」と告白。(P.45)
 →物語序盤の何気ない一言。
 女装趣味で同性愛者のこと。
 全く記憶に残らない。

女子トイレに入ったのを
椎名が見て呆気にとられる。(P.65)

 →これは椎名が男だから
 女子トイレに入りにくいと
 思わせて逆のパターン。

女子トイレに
男がいることを心配する椎名。
 

“水音が響く中、カッターを腰のポケットに突っ込み、不安を覚える---誰か入って来ないだろうか。女子トイレに男がいる状況を、樋口ならうまく説明できるだろうか---何を考えている、網川が大変なときに・・・。”(P.67)

 →椎名は自分のことを
 心配しているのではなく
 樋口のことを心配しているのは
 もうおわかりですね。

柴田の「ゲイ野郎が」は樋口にも当てはまる。 
 →状況から椎名と鳥越の関係を
 揶揄したものに思われがちだが、
 直前に樋口が仲裁に入っている。
 怒りで汚い言葉を出してきた柴田が
 椎名に言った台詞だが、
 どちらかというと
 「野郎」と表現していることから
 樋口の方に当てはまる。
 
 この直後に
 何を思ったのか鳥越が出てきて
 愛を語るからミスリードになる。

樋口はブレザーを着ている。(P.137) 
 →ブレザーは男女着用かもしれない。
 しかし女子がクリーム色の
 セーターを着ている時期に
 あえてブレザーなのは
 疑ってみてもいい。

制服のネクタイを抜き取る。(P.308) 
 →ネクタイは男女着用かもしれない。
 しかしこういう男性的な物は
 疑ってみてもいい。

網川の病気を興味を持って調べた。 
“「たぶん男性仮性半陰陽。アンドロゲン不応症かもしれない」
知らない単語が羅列された。
「説明する。わたしも、自分の性について色々疑問を持っていたから。昔、少し調べたことがあって」”(P.362)
 
 →「わたしも」と言ってるのがポイント。
 樋口は「性同一性障害」である。

俺は樋口真由を
広瀬すずちゃんでイメージしたけど、
彼女は可愛いけど
少し男っぽい顔立ちなので
このキャスティングは
結構イケてるなと思った。




特殊設定の人物が多すぎる。  

この作品の欠点として
マイノリティな特殊設定の人が
多すぎることを挙げた。

椎名康 「男女」「レズビアン」
樋口真由 「性同一性障害」
網川緑 「アンドロゲン不応症」「自傷癖」
矢野祥子 「暴走女」
鳥越裕一 「ゲイ疑惑」
坪谷菜穂 「生徒つまみ喰い」
柴田佐紀 「やたら敵対心」
田丸瑞希 「やたら反抗的」
藤崎咲羅 「レズビアン」
伊達絢子 「魔性の女」
ヒカル君 「スーパー犯罪者」
柊健太 「ただのキモ男」

おまけで入れてるのもあるが、
どいつもこいつも
特殊設定すぎて
なんじゃそりゃって言いたくなる。

それと
誰が男で誰が女なのかわからん!と
読んでてモヤモヤしっ放し。
とくに田丸は男だとばかり
思っていたよ。

アンフェアだと思う理由。  

俺はこの作品を傑作だとは思いません。
それは読者に対して
あまりにもアンフェアだから。

その理由を挙げていきます。
叙述トリックについて

①伊達さんに暴力をふるって
「赤い染み」がついたとあるが、
女性がどうやってソレをやったのか?
破瓜でないなら
鼻血しか考えられないが
伊達さんの対応が
鼻血だらだらのようには見えない。

②女子が男子に混じって
練習することはない。
遊びで始めたとか言い訳が苦しい。

③一人称「僕」の女性は意外に少ない。
小学生ならあるが、
高校生で「僕」は周りから
イジメの対象になる。
(椎名がイジメられた原因は身長)

④男子バスケ部部室に
遠慮なく入りすぎている。
いくらマネージャーといえど、
エチケットはある。

⑤登場人物表に「男子バスケ部員」とある。
たしかに男子バスケのマネージャーなので
男子バスケ部員扱いなのだろうが、
矢野祥子が
男子バスケ部チーフマネージャーと
きちんと記載してあるので
マネージャーと付け加えるべき。

確かに嘘は書いてないし
全ての情報を提示する必要はないが
「登場人物表で引っ掛けるのは、
子供騙しの程度の遊び」だと
認識してもらいたい。
ミステリ作家は
そんな部分で勝負するな!
 


⑥最大のアンフェアポイントが、
椎名康という名前。
これが女性の名前に思えますか?

「コウ」と言えば柴咲コウを連想するが
あの人は芸名で
かわかみじゅんこの漫画
『ゴールデン・デリシャス・
 アップル・シャーベット』の
登場人物「柴崎 紅」に由来している。

コウを付けたとしても
漢字の「康」という字は使いません。
「香」「幸」「光」「江」など
他にたくさんあります。

「康」とつけたら
「おーい、やすし~」と
馬鹿にされませんか?
されるでしょ?

樋口真由も同じ。
「真由」という名前を
男の子につけますか?
いくら性同一性だとしても
生まれた時は男性で、
将来立派な男になることを願って
男らしい名前をつけますよ普通は。

絶対に「真由」なんてつけません!!!

そんなことをすれば
「女みたいな名前だ」と
カミーユ状態になって
ゼータガンダムに乗って・・・
ではなく、
子供が可哀そうじゃないですか!

つまり俺が
一番言いたいのは
名前がありえないから
アンフェアだと言いたいのです。

・・・まてよ。
「真由」ではなく
「まさよし」なのか?
いや、本編では
そんな読み方は一度も出なかった。

「康」は・・
やっぱり「こう」だろうな。
と思って調べたら
意外な結果に。
「やすし」の他に
「しず」「みち」「けい」とも読むらしい。

うむむ・・・
しかし作中では「コウ」だったし、
俺が深読みして墓穴掘ってるだけだ。

最近ではDQNネームというか
キラキラネームが多くて
こんな名前にしなくても
男女兼用の名前や
読めない名前で十分誤魔化せたのに、
こういうことをしちゃアカン。

ボールを当てるトリックについて

①自分の教室にマイボールを持っている。
それは都合よすぎる。
関戸と練習なら
先輩後輩の立場で考えると
関戸がボールを持ってくるのが当然。

②ボールを投げた理由は
リストカットを止めようとしたからだが、
それは無理がありすぎ。
声を掛けた方が早い。
伊達さんの性格的に、というが
あの状況でボールを投げると
どうなるかバカでもわかるだろ。

③そもそも目的は
網川の自殺を止めることなので
網川にボールを当てる必要が無い。
足元にバウンドするように
投げて気付かせればいいだけ。

消失トリックについて

①屋上から落下して生きてると思えない。
クラブ棟が3階でその上の屋上では
まあ普通に考えて「歩けない」
生きてても「歩けない」
もう一度言います「歩けない」

②「病院に運ばれること」を
問題にしているが、
網川が意識を取り戻した時点では
救急車が来たわけでも
大騒ぎになったわけでもない。
そもそも無事ならば
そのまま帰ればいい。

消えたいなら
他人に迷惑かけないで消えろや。
大事件にする必要性が
まぁっっったく無い!

③侵入者のヒカル君に
突然助けを求めるのは「ありえない」
朦朧としてても「ありえない」
死にたくても「ありえない」

だって今まで一回も
会話したことない不審者ですよ。
何で助けを求めるの?
てか網川の思考がおかしすぎるだろ。
頭打っておかしくなったのかな。

④そのヒカル君の正体は
誰かの変装で
あっと驚く仕掛けなのかと思ったら
そのまんまやないかい。
しかも万能すぎるスーパーマン。

この人物が
消失トリックの鍵を握っているのに
少ししか出て来ないため、
どんな人物かわからない。
網川に協力するかどうかも
読者には判断できない。
情報不足=読者が推理できない=アンフェア。

⑤時間的に無理がある。
網川が落下したのが
音を聞いた午後5時27分。
椎名が駆けつけて
網川を発見してヒカルに
絞め落とされたのが30分としよう。
次にヒカルが目撃されたのが
クラブ棟3階廊下で
部室を荒らし終わった直後。
これが午後5時45分。

その間15分しかない。
網川が起きて
助けてと説明。よしわかったとヒカル。
まず応急手当をしよう。
そして服を取り替えよう、
血もつけなきゃ。
なに?バッグがどこかの部室に、
ボールが屋上にあるって?
ボクがさがしてこよう。
男子バスケ部、女子バスケ部
他に2つの部屋を捜したが無いぞ?
おや廊下の向こうに人がいる。

って15分じゃ無理だろっ!!

とまあ
納得いかない部分を挙げてみましたが
これでアンフェアだというのが
証明されたと思う。

ミステリーとしてではなく、
学生の青春ドラマを見ている感じで
楽しめば良かったのかもしれないな。


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