刑事コロンボ
#6『二枚のドガの絵』
[SUITABLE FOR FRAMING]
(1971年11月17日放送)アメリカ
(1972年10月22日放送)日本
<あらすじ>
ある晩、美術評論家デイル・キングストン(ロス・マーティン)は、絵画蒐集家の叔父ルディ・マシューズ(ロバート・シェーン)を射殺。部屋を荒らし、最も高価なドガのパステル画2枚を盗んで窃盗犯の犯行に偽装すると、画学生トレーシー・オコーナー(ロザンナ・ハフマン)を共犯に使って、画廊のパーティーに出ていたというアリバイを作った。現場に不審な点を発見したコロンボは、デイルの犯行と確信するが……。
<スタッフ>
監督 ハイ・アヴァバック
脚本 ジャクソン・ギリス
製作 リチャード・レヴィンソン&ウィリアム・リンク
ストーリー監修 スティーヴン・ボチコ
音楽 ビリー・ゴールデンバーグ
撮影 ラッセル・L・メティ
編集 バド・スモール
<キャスト>
ピーター・フォーク(コロンボ)ロサンゼルス市警警部
ロス・マーティン(デイル・キングストン)美術評論家
ロザンナ・ハフマン(トレーシー・オコーナー)画学生
キム・ハンター(エドナ・マシューズ)デイルの叔母
ドン・アメチ(フランク・シンプソン)マシューズの弁護士
ロバート・シェーン(ルディ・マシューズ)絵画蒐集家
刑事コロンボシリーズ屈指の名作として
人気投票ベスト3に必ず入ってくるのが
この『二枚のドガの絵』です。
元々、刑事コロンボの
レビューを始めたのも
この作品を見たかったからで、
その準備段階として
第1話から追いかけ
第5話『ホリスター将軍のコレクション』が
あまり評価よくないようなので
すっ飛ばしてこっちへ。
そして念願のこの作品を視聴。
期待通りの内容に大満足です。
しかしこれだけは言いたい。
あの絶妙な手掛かりの発覚方法が
後の『古畑任三郎』でパクられてるじゃん!
※下のネタバレ項目で解説しています。
くそ~三谷幸喜め。
それはさておき
解決の瞬間にドラマが終わる
「鮮やかな幕切れ」が素晴らしかった。
きちんと結末から逆算して
ドラマって作られているんだなぁ。
犯人役のロス・マーティンが
超ふてぶてしくてクソむかついたが
それだけいい役者だってこと。
コロンボが絵の隅に書いてある
作者のサインを見て
「文字が下手すぎる」と言ったり、
アルバムを開いては
昔話を長々と語るおばさんがいたり、
エドナ役の声の関弘子が
ちょっと可愛い感じのしゃべりで良い。
コロンボが裸婦に
照れる様子も面白かった。
☆☆☆☆☆ 犯人の意外性
★★☆☆☆ 犯行トリック
★★★★★ 物語の面白さ
★★★★☆ 伏線の巧妙さ
★★★★☆ どんでん返し
笑える度 △
ホラー度 -
エッチ度 -
泣ける度 -
評価(10点満点)
9点
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※ここからネタバレあります。
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●1分でわかるネタバレ
○被害者 ---●犯人 -----動機【凶器】
①ルディ・マシューズ ---●デイル・キングストン ---親族の遺産【射殺:38口径リボルバー】
②トレーシー・オコーナー ---●デイル・キングストン ---口封じ【撲殺:石】
<結末>
叔父は高額な絵をすべて
元妻のエドナに相続させる
という遺書を残していたので
デイルはほとんど金は入らない。
デイルを犯人とする動機がなくなった。
するとエドナの周りに
犯行の銃や包み紙が見つかって
家の中を捜索すると
盗まれたドガの絵も見つかった。
一転して怪しまれるエドナに
コロンボはデイルこそが犯人で
遺産を横取りするためにエドナに
罪を着せようとしていると看破する。
証拠を出せとつっかかるデイルに
コロンボはドガの絵から検出された
自分の指紋が証拠だと言う。
この指紋がついた可能性があるのは
デイルが帰宅した時に持っていた
頑なに見せるのを断った水彩画を
無理矢理に触った時しかない。
あの水彩画が盗まれた絵であるなら
デイルが犯人でしかないからだ。
これは罠だ!
今さっき指紋をつけたんだ!と
デイルは抵抗するが
コロンボはポケットから手を出して見せる。
この家に入った時から
コロンボはポケットに手を入れていて
今初めて手を出した。
その手には……
しっかり手袋がはまっていた。
●トリック解説
デイルの「犯行トリック」は
共犯者を使った
「時間の誤認」トリックです。
デイルは叔父マシューズを射殺。
死体の体温が下がらないよう
電気毛布をかけて
強盗が入ったように室内を荒らし
絵を何点か額縁から出し
高価なドガのパステル画2枚だけ
包装紙に包む。
ベランダの裏口の鍵を
外からこじ開けた偽装をする。
そこに共犯者のトレーシーが来て
デイルはアリバイ作りのために
画家の個展に行く。
そこで時間を尋ねて
11時5分前であることを印象づける。
マシューズ家の前を
1時間ごとに巡回する警備員がいて
彼が近づく前に電気毛布を片付ける。
11時頃にトレーシーが空に発砲し、
銃声を聞いて警備員が家に入ると
マシューズの死体があり
ベランダの方で逃げていく足音が聞こえた。
トレーシーは銃とドガの絵を持って
しばらく身を潜める。
この殺人の動機は叔父の遺産で
叔父が遺言を書き換えたことにより
遺産のほとんどを
元妻のエドナが相続するため
エドナが殺したように偽装して
遺産を横取りしようとした。
ちなみに開始55秒で
いきなり殺人が発生する。
これは全作品で1番早いタイムらしい。
第2のトレーシー殺しは
密会して絵を受け取った後で撲殺し
車ごと海に落として
事故に見せかけるというもの。
秘密を知る共犯者の口を封じている。
探偵が犯人を追い詰める
「逆トリック」だが、
逮捕の決め手になったのは
【絵についた指紋】
それはデイルの指紋ではなく
コロンボの指紋だった。
盗まれたドガの絵が発見され
指紋を検出すると
そこにコロンボの指紋がついていた。
当然ながらコロンボは
犯行以前も以後も
実物を見たこともないし
1度もこの絵には触っていない。
しかしどこかで触っていなければ
そんなことはありえない。
そこで思い出す。
ただ1度だけ
謎の「水彩画」を触った記憶を。
デイルが帰宅した際に
鑑定を頼まれたという
水彩画を持っていた。
その絵は手提げ袋に入っていたが
コロンボは見せてほしいと
強引に袋の中に手を入れている。
それがもしも盗まれた絵なら
指紋の謎も解けるし
その時この絵を持っていたデイルは
言い逃れができなくなる。
エドナの周りで銃や包装紙が発見され
真犯人が仕掛けてきている
と思ったコロンボは
「盗まれた絵が出るまで動かずに待ちますよ」
そう言ってデイルに
絵が出てこないと
決定的な証拠にならないと思わせる。
それを聞いたデイルは
エドナの家の捜索を
しきりにやらせようとしてきた。
とすれば絵を警察に見つけさせて
エドナを逮捕させるつもりだろう。
最終段階だ。
あらかじめ手袋をして
ポケットに手を隠して
エドナの家へ向かうコロンボ。
案の定、盗まれた絵が見つかり
エドナが疑われるが
コロンボは冷静に指紋を検出させる。
デイルはエドナが犯人だ
すぐ逮捕だとわめくが意に介さない。
読みは当たり盗まれた絵から
コロンボの指紋が出て来たので
デイルが犯人だと証拠を突きつける。
その指紋はあんたが今つけただろと
なおもデイルは抵抗するが
ここでポケットから手を出して
手袋をしていたことを見せ
ぐうの音も出ない
「鮮やかな結末」で終わる。
そのための布石で
コロンボはずっと手袋をして
不自然にポケットに手を
入れていなければならない。
コロンボ警部を知っているなら
いつもうっとおしいくらい
現場でも葉巻をふかしているので
おかしいなと思った人もいるかも。
そのギャップこそ伏線だった。
あそこに行けば
自分の指紋のついた絵が
見つかるだろうから
それでデイルを追い詰めようと
最初から計算していたとは
まったくもって恐ろしい男だ。
で、実はこの
「予想外の時についた指紋」が
事件解決の決め手になるものが
ドラマ『古畑任三郎』の
『黒岩博士の恐怖』で
ほぼそのままパクられてます。
(以下ネタバレあり。文字を反転すればわかります)
「そう「ゆでたまご」です。
死体に握らせたゆでたまごに
翌日発見された被害者の指紋があり
じゃああの時の死体が被害者だった
……っていう解決でした」
古畑任三郎は
今更レビューも解説も
必要ないくらい有名なので
自分ではやりません。
※田村正和さんの訃報は驚きました。謹んでご冥福をお祈りします。
次は犯人がミスをしたり
偶然が重なって犯行が露見する
「発覚トリック」を見てみよう。
①バーンバウムの絵を
盗ろうとした強盗が
結局持ち帰ったのは
高価な2枚のドガのパステル画。
被害者を撃ち殺し、
焦っている心理状態なのに
急に目が肥えたのはなぜか?
→偽装工作が過ぎたという良い例。まあこれはバレていいブラフ。
②犯人が警報装置を切って
ベランダのドアを外からこじ開けた。
→デイルはプロの手口だなと言うが、コロンボにプロなら窓から安全に入りますと一蹴される。警報が切ってあった=知り合いを家に入れたことになるので、最初からエドナに罪を着せるつもりだったのだろう。
③見回りの警備員が聞いたのは
逃げていくハイヒールの足音だった。
→つまり犯人は女性。しかしコロンボは少なくとも1人は女だったと推理している。絵を盗むのが目的なら女1人では絵が多すぎるし、警報を切って中からドアを開けた人物も絡んでいるからだ。これも犯人デイルには想定内。というか、トレーシーにここまで危険な役をやらせてあの結末はひどい。
④画廊に来たデイルが
時計が狂ったから合わせたいと言い、
サムに時間を聞いて時計を確認した。
時刻は11時5分前だった。
→このいかにも時間を意識させるように仕向けたデイルの行動は怪しい。さらに聞き込むと駐車係の男にも時計が狂ったと言って時刻を確認させていて2ドルも金を渡している。2回も時計が狂ったはやりすぎだろう。
⑤デイルに電話してきたトレーシー。
今は電話するなとデイルは窘める。
そこにコロンボがやってきたので
デイルが電話を切ったら
「なんで途中で電話を切るんです?」
「ひょっとして犯人が絵のことを?」
→コロンボ鋭すぎ、と思う人もいるだろうが、これは少し前からデイルを見張っていた動きだ。そもそもコロンボはデイルに目をつけていて、絵の身代金とか口実をつけてデイルの電話を録音・盗聴できるようにして、共犯者と連絡をとらせまいと動いている。さらにアパートを捜索されてキレたところにつけこまれ、鍵まで渡すはめになった。完全に手玉に取られてます。
⑥デイルが駐車係に
トップコートのカフスボタンが
見つからないと言って
車のトランクを探させた。
ちなみにトランクの中は
とくに物が入っていなかった。
→これも印象づけだが怪しい動きになってる。トランクの中が空なのを見せたのは、絵を盗んでないよという保険だろうか。
⑦コロンボの見せた馬の絵を
「子供部屋の壁紙」と
けなしたデイルに、
ではなぜ昨日は
この絵を描いた画家(サム)の
個展に行ったのか尋ねる。
→絵を描いた人物が誰か教えずにコロンボが罠を仕掛けている。アリバイ作りのために行った個展なのでデイルはサム自身にもその絵にも興味無かった。デイルは一瞬「しまった」ような表情をしたが、「私の仕事はこの手の画家を叩くことで金になる」と返した。く、苦しいよそれは。
⑧自宅の日程表から
デイルが過去にトレーシーの
美術学校に講義に行ったことがわかり
個人的なつながりを疑われる。
→家の鍵を渡すからいろいろ痛いところを探られる。
⑨先月マシューズが弁護士を呼び
遺言状を書き換えた。
内容はエドナに高価な絵を
すべて相続させるという。
→急に遺言内容が変わった時は、誰が得をし、誰が損をするのかが重要。この場合、それまで全財産を相続するはずだったデイルがないがしろにされているので、先月2人の間に何かがあったとみるのが普通。
⑩最大のミスは
帰宅した時にコロンボに
袋の中に手を突っ込まれて
ドガの絵に指紋がついたことだ。
→上の発覚トリックに書いたとおり。
●伏線まとめ(★はとくに巧妙なもの)
★①【鮮やかな結末】
デイルの出演するテレビ番組が
終わった後も切り替わらず
ずっと笑顔でいないといけないため、
放送後にデイルが
ディレクターに注文を出す。
「終わったらすぐ画面を切り替えてくれ。僕は役者でもアナウンサーでもないんだ。長いことアップで放って置かれちゃ間が持たないんだよ」
- まさかこんな些細なやりとりが「鮮やかな結末」への伏線とは誰が気づくんだよ。お望み通りにラストはあなたが“終わった”ので、すぐ切り替わりました。よかったね。
②【コロンボの指紋】
帰宅したデイルを
家の中で待っていたコロンボ。
鑑定を依頼されたという
水彩画を見せてほしくて
コロンボは袋に手を入れるが
デイルに断られる。
- 逮捕の決め手になったコロンボの指紋はこの時についた。これが盗まれた絵ならもうデイルは言い逃れ出来ない。ちなみに俺は絵の入った袋の動きがずっと気になっていたので、コロンボがわざと指紋をつけたことに気がついてしまった。さらに『古畑任三郎』の方を先に見ていたので、この時の指紋が証拠に使われそうだという予感も当たっていた。
③【絵が出てこないと動かない】
逆トリックでデイルをハメるため
エドナを逮捕するには
決定的な証拠が必要だと
コロンボがこう言う。
「盗まれた絵が出てくるまでは動かないことにしますよ。その代わり事件の解決は長引くかもしれないがやむを得ないでしょう」
- こう言われると早くエドナを逮捕させたいデイルは動かざるを得ない。
④【遠景のコロンボ】
これもエンディングのための伏線。
コロンボが手袋をしている手を
視聴者に見られてはいけない。
なので車から降りたコロンボを
わざと遠景で見せて
手を確認できないようにしている。
- どうしても車から降りたらドアを閉めなくてはいけない。というか入口のところから見せればいいのに。まあそれだけフェアな演出である。伏線というものは「なぜその行動をしたのか、その言葉だったのか」初見では気づかなかったものが2回目には意味がわかるのが面白い。2回目にこの遠景を見たら、どうしてこの演出にしたのかみんな気づきましたよね?
⑤【ポケットから手を出さないコロンボ】
屋敷に入ってからもコロンボは
ポケットから手を出しません。
今回で言えば
弁護士のライターを借りたり
絵のそばで葉巻を吸って
注意されるくらいに
プカプカ吸っていた男が。
- 上にも書いたようにこの違和感が視聴者への手掛かり。
●欠点や疑問など
- 最初の発砲の音、部屋を荒らす音、トレーシーが鳴らしたチャイムは付近の住民には聞こえなかったのだろうか?
- 気の弱く行動力の無いエドナを犯人にしようとするのはさすがに無理があるのでは?
吹替えだと「うちのカミさんが」だけ後で追加編集しているのが違和感。
電気毛布のことはまったく触れず。叔父の倒れた場所がコンセント付近だったからコードが届いたが、遠かったら死体を引きずったのだろうか?
1時間おきに来る警備員って……その仕事、辛すぎない?
逮捕の決め手のコロンボの指紋がついた場面だが、ちょっと違和感もある。デイルが刑事の出入りを許している自宅に、堂々と紙袋に入れて持って帰ったら「それは何ですか?」と聞かれるのは当然なわけで、一時的にせよ隠す場所にも困るはず。しかも包装紙を外してむき出しにしている意味がわからない。
絵をエドナの車に忍び込ませ、自宅に運んだ後で飲み物をこぼして、その間に絵を家のタンスに隠すのはリスクが高い。車に鍵がかかっていたり、刑事が尾行しているかもしれないし、買い物の箱をすぐそばに置いていたり、あるいは先に警察が待っていたりしたら計画が破綻すると思う。
コロンボとデイルを家に残してショッピングに出たエドナ。デイルはその後でコロンボが帰るのを見送り、弁護士にエドナの家を捜索するように頼み、エドナがショッピングの駐車場に車を停めたのをデイルが先回りして車の中から見ている……って、時間軸どうなってるの?何で先回りできるの?エドナ何カ所か買い物に回ったの?ん!??
盗んだドガの絵が2枚であった必要がない。2枚だからっていう何か理由が欲しかった。
●名台詞
犯行現場から逃げていく足音を
ハイヒールの足音と
特定したコロンボに
デイルが尋ねる。
デイル「あの、待ってください。犯人は女なんですか?」
コロンボ「1人はね」
デイル「1人は?」
コロンボ「あれだけたくさんの絵を狙ったんだ。多分1人ってことはないでしょう。それに警報ベルが鳴らなかったこと、こいつがどう考えても合点がいかない。何者かが中からドアを開けたと考えるほかない」
デイル「わからないな、どうも……」
コロンボ「そりゃそうでしょう。あたしだってわからないんだから」
コロンボがテレビ局にやってきて
本番終わりのデイルを質問すると
確かなアリバイがあった。
コロンボ「あんた不思議な人ですな。どんな質問をしても役所のお偉方みたいに適切な答えがはね返って来る。普通はなかなかこうはいかないもんです。アリバイ調べでもね、たいていの人は何時に何してたかなんて正確に覚えちゃいません。それが普通です。あの画家さんも言ってました。時間の観念があまりないって。マシューズ夫人なんか夕べ何時に寝たのかも覚えてないんですよ」
デイル「それは酔っ払っていたからじゃないのか?」
コロンボ「ところがあんたに関しちゃ何時に何してたかハッキリわかってる。普通はここまで証言がそろうことはないんですよ」
叔父の遺言状が読み上げられ
高価な財産はエドナに渡り
デイルはほとんどもらえないと知った。
自分を疑っていたコロンボに
デイルが文句を言う。
デイル「とぼけても駄目だ。あんたのハラは見え透いている。ずばり言ってやろうじゃないか、あんたの推理はこうだよ。この私が遺産目当てで人を雇って非道にも叔父を殺させた。金に困ってる絵描きの卵を雇ってだ」
コロンボ「そいつは誤解ですよ、あたしは決して」
デイル「皮肉なことに僕には完璧なアリバイがあるということがわかったが、1度そう決め込んだ君には諦めがつかない」
コロンボ「いい加減にしてくださいよ。あたしゃ何も……」
デイル「いくら頭のお堅い役人でも今度こそわかってもらえただろうと思っていたんだけどね。叔父を殺して何になるっていうんだ。君にも耳がついてるんだろう?叔父の遺言は聞き取れたはずだな。事実上の相続人は私じゃない。エドナだ。(中略)これで飲み込めたろ。しつこく付きまとうのはよしてもらいたいな。はた迷惑な真似はやめて、真犯人を捕まえたらどうだ?それがお前らの役目だろ!」
コロンボはデイルが叔父さんを殺害して
エドナに罪を着せようとしたと推理。
証拠は?とデイルが反論する。
デイル「聞かせてもらおう。この絵も僕が持ち込んだんだって?証明できるか!?」
コロンボ「どうだい?(鑑識が「OK」と言う)できるよ。指紋でな」
デイル「いやいやそうは問屋がおろすもんか。指紋なんて役に立たんぞ。僕の指紋はどの作品にでも付いているはずだ。忘れたのか警部?展覧会から戻って来た時、包みを開いたのはこの僕だぞ。どの絵も僕の指紋だらけさ」
コロンボ「いやぁ君の指紋じゃないんだよ」
デイル「……え?」
コロンボ「こないだあたしが君のアパートに行った時、どっかから絵を持って帰って来たろう?知り合いから鑑定を頼まれた水彩画だとか言って。見せてもらおうとしたら慌てて引っ込めたけど、あたしゃあの時、触ったんだよ」
デイル「……さ、触った?」
コロンボ「事実、この絵にはあたしの指紋がある。盗んだのがもしこの人(エドナ)だとすれば、あたしの指紋がつく機会は1度もなかったはずだ」
うろたえるデイル。
デイル「これは何かの罠だ。汚い手はやめてくれ!あ、あんた、たった今こいつに触って指紋を付けたんだよ。そうとも!みんな見ていただろ?僕が気がつかないうちにそっと触ったんだよ。そうに決まってる!汚いぞ!」
●好事家のためのトリックノート
3-B、時間によるアリバイトリック
●時刻の誤認・犯行の後に操作
【共犯者が現場で発砲する】
被害者を殺した後、電気毛布で体温を下げないようにして共犯者を代わりに現場に残し、自分はアリバイを作りに画家の個展に行く。1時間後に共犯者が警備員に聞かせるように発砲して逃げる。
8-A、物理的手掛かりの機智
●偶然、超自然的なものによる発覚
【「水彩画」についたコロンボの指紋】
犯人が盗んだ絵を持って帰宅した時に「水彩画」と言って誤魔化したが、コロンボが見せてくださいと強引に袋に手を入れてその時に指紋がついた。あとで盗まれた絵からコロンボの指紋が出たため、あの時の「水彩画」は盗まれた絵だと判明する。
8-B、心理的手掛かりの機智
【アリバイが正確すぎる】
昨夜は何時にどこでなにをしていたか正確に答えるのは逆に違和感。普通の人間はアリバイを作ることを意識していないので、何時になにをしていたかすぐには答えられない。
8-C、犯人自白・告発トリック
●逮捕直前の自白強要
【決定的な証拠がないと動かない】
第三者に濡れ衣を着せたい犯人に、これ以上は「盗まれた絵が出ないと動かない」と思わせて、決定的な証拠の絵を動かすように仕向ける。