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【ネタバレ注意】刑事コロンボ『第5話・ホリスター将軍のコレクション』の伏線解説と感想

 

刑事コロンボ

#5『ホリスター将軍のコレクション』

[DEAD WEIGHT]

(1971年10月27日放送)アメリカ

(1972年9月24日放送)日本

 

 

 

 

<あらすじ>

海兵隊の英雄マーチン・J・ホリスター(エディ・アルバート)は、退役後、軍と取引する建設会社を経営。担当のロジャー・ダットン大佐(ジョン・カー)と組んで不正な利益を得ていた。ある日、特別監査が告知され、怯えるダットンの様子から、彼の口からこそ不正が露顕すると判断したホリスターは彼を射殺。死体を海に沈めてしまう。が、この殺人を海から目撃した女性がいて……。

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<スタッフ>

監督 ジャック・スマイト

脚本 ジョン・T・デュガン

制作 エヴァレット・チェンバース

制作総指揮 リチャード・レヴィンソン&ウィリアム・リンク

ストーリー監修 スティーヴン・ボチコ

音楽 ギル・メレ

撮影 ラッセル・L・メティ

 

<キャスト>

ピーター・フォーク(コロンボ)ロサンゼルス市警警部

エディ・アルバート(マーチン・ホリスター)退役将軍

スザンヌ・プレシェット(ヘレン・スチュワート)事件の目撃者

ジョン・カー(ロジャー・ダットン)海兵隊調達部長

ケイト・レイド(ノーラ・ウォルターズ)ヘレンの母

ティモシー・ケリー(バート)料理人

ロン・カストロ(サンチェス)刑事

 

海兵隊の伝説的英雄

ホリスター将軍との対決。

そのわりに

世間の評価が低いのは

犯人側のトリックも平均

探偵側の罠も無く

ミステリ的な興味が薄いからだろう。

 

今回は死体も

犯行の凶器も見つからないまま

犯行を目撃したという証言だけで

捜査を進めなければならない。

しかも犯人が目撃者を

丸め込もうとしてくるし

目撃者は犯人に恋をして

証言を変えてくるしで

コロンボもこれには困らされた。

 

目撃者が犯人に懐柔されて

どんどん好きになっていくので

見ててムカつくし気持ち悪かった。

親より上のあんな老いぼれ

普通好きにならんやろ……。

お前の中では犯人だぞ。

どうなってんだ。

 

演出で上手いと思ったのが

殺人のシーンで

ホリスターが箱の中の銃を握る

→驚くダットンの顔

→今、誰かが撃たれたわと

目撃者が騒ぐ様子に切り替わる。

凶器の銃がどんな外観なのか

視聴者に全く見せないことで

どの銃が凶器だったのか

誰もわからない。

その銃が箱に入っていたとしても

入っていなくても

誰も動きを追えないから

脚本家としては楽ができる。

 

★★☆☆☆ 犯人の意外性

★★☆☆☆ 犯行トリック

☆☆☆☆ 物語の面白さ

★★★☆☆ 伏線の巧妙さ

☆☆☆☆ どんでん返し

 

笑える度 -

ホラー度 -

エッチ度 -

泣ける度 -

 

評価(10点満点)

 6点

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

------------------------------

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※ここからネタバレあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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1分でわかるネタバレ

 

○被害者 ---●犯人 -----動機【凶器】

ロジャー・ダットン ---●マーチン・J・ホリスター ---口封じ【射殺:コルトSAA45口径】

 

<結末>

ホリスターとデートを重ねるうち

ヘレンは彼の虜になり

目撃した証言は

見間違いだったとまで言い出す。

 

海からダットン大佐の死体が見つかり

ホリスターを問い詰めるコロンボだが

決定的な証拠が無い。

そんな時、

ホリスターが愛用していた

真珠細工のコルトSAA45口径が

今どこに隠されているのかが

逮捕の決め手になると確信する。

 

コロンボはホリスターの展示室に

ヘレンとホリスターを呼び出し

殺人に使った銃を複製と称して

士官学校のメモリアルホールに

堂々と飾っておけば

隠し通せるという

ホリスターのトリックを見破り、

弾道検査で殺人の痕跡が

見つかったことを告げると

ホリスターは抵抗することなく

ヘレンに別れを告げて

逮捕されるのだった。

 

 

トリック解説

 

今回の犯人ホリスターの使った

「犯行トリック」だが

特別優れたものはなかった。

 

被害者を殺して

隠し部屋に死体を隠し

夜中に船で死体を海に捨てただけ。

しいて言えば

凶器の隠し方が変わっていて、

殺人に使った銃を

堂々と展示品の中に隠す

というトリックを使っている。

 

それから

目撃者を懐柔して

ヨットで海に出るくらい仲良くなり、

目撃したのは目の錯覚で

証言を取り消すように仕向けた。

本編の中ではヘレンとの間に

恋愛感情があったようにも見えたので

保身だけのためじゃなさそう。

 

ホリスターのやっていたことは

武器調達の数字を誤魔化して

不正に金を癒着していたこと。

特別監査が入ってバレそうな状況で

共犯のダットンは

スイスに高飛びしようとしたが

彼は秘密を漏らすタイプだと

ホリスターは警戒して口を封じた。

しかし遅かれ早かれ

不正はバレる可能性高いし

殺人の罪も追加されるだけなので

得策とは言いがたいと思うが

「不正も殺人もバレるわけがない」と

高をくくっていたのが敗因だろう。

「私は退却は好かん」と

断固として国外逃亡しようとしなかった。

 

コロンボが犯人を罠にはめる

「逆トリック」は無かった。

ただしコロンボはヘレンに対して

ホリスターがどういう人物なのか

教える手段として、

呼び出して展示物を見せ

わざと逮捕の瞬間を見せることで

気持ちの区切りをつけさせている。

後述の「ヘレンが1度信じたことを

簡単には曲げない性格」だからこそ

そこをケアしないといけなかったんですね。

 

 

犯人がミスをしたり

偶然が重なって犯罪が明るみに出る

「発覚トリック」を見てみよう。

 

①殺人のあった夜、

深夜に船を出して海に出て

早朝戻ってくる。

→戻ってきたところに釣りをしているコロンボがいてホリスターは驚くが、最初から船の動きはマークされている(昨夜コロンボは「明日は早朝から釣りにいかなきゃいけない」と言っていた)。一刻も早く死体を始末したいのだろうが軽率だった。

 

②ホリスターと一緒に

食事して帰って来たヘレンに

コロンボは目撃者の名前も住所も

教えていないのに

どうしてヘレンのことが

わかったのか疑問を持つ。

→ヘレンは目撃者への興味で調べたんでしょ?と言うが、仮に目撃者を調べてそれがヘレン・スチュワートという女性だとわかった後、わざわざ家にまでやってくるだろうか?そんなことをする必要がどこにあるのか?顔を見られたかもしれないから実際に会って覚えているかどうか確認したのなら、それはすでに犯行を認めているわけで……ここを掘り下げればもっと詰めれたはず。

 

③ホリスターの部下のダットン大佐が

スイス行きの飛行機を予約しながら

事件の日から行方不明になっている。

→しかも車が盗まれていたので事故にあった可能性が高い。海兵隊、制服、となれば撃たれたもう1人の人物がダットンだと推測するのは容易。

 

④殺人に使った真珠細工のコルトは

ホリスターの思い入れのある銃で

たとえ犯行の痕跡が残っていたとしても

決して海に捨てたりしないはず。

複製と言われている展示品の銃こそ

殺人に使った凶器の銃であった。

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→意外な凶器の隠し方トリック。思い入れのある物は誰しも簡単には捨てられない。だったら今もどこかに銃はある。コロンボの狙い通り、展示品の銃が凶器に使われた銃だった。

 

⑤上にも書いたが

ホリスターの1番の敗因は

「敵前で撤退するなど

私の望むところではない!」と

断固として退かない性格。

→これが最後に自分の首を締めた。「先制攻撃がモットー」と言うように、早めに動いて家や仕事場に押しかけて目撃者も抱き込んだのだが……。

 

 

●伏線まとめ(★はとくに巧妙なもの)

 

【冒頭のボートと後ろ姿】

開始1秒のところに

いきなり伏線があって

殺人の目撃者ヘレンの

後ろ姿が映っている。

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  • このシーンは別に隠されたものではないので伏線というより前振り。ただ多くの視聴者はヘレンがここまでがっつり始まる前から見ていたとは思わないだろうというのでピックした。

【火のつかない暖炉】

ホリスターの家でコロンボが

最初に目についたのが暖炉

しかし実際には火はつけず

ヒーターを使っていること。

  • この暖炉の件いる?とも思ったが、よく考えると暖炉の複製であり、銃の複製に重ねているのかもしれない。「(暖炉は)ただの飾りだよ」とホリスターは言うが、展示品の銃はただの飾りじゃなかったわけで。

【ヘレンの1度信じたことを曲げない性格】

ヘレンは自分の信じたことを

簡単には曲げない。

そして早とちりしやすい性格。

①母に警察に言うのか聞かれて

すぐ警察に電話したり、

②コロンボの説明にも納得せず

2人の男がいて

バスローブの方が撃ったと証言し

酔っていたかと聞かれて怒りだした。

③旦那が浮気して離婚したが

ヘレンの母親が言うには

浮気されたと信じ込んで

夫を攻撃して離婚されたらしい。

  • そういう人物だからこそ、1度ホリスターを信じてしまうとすぐ騙されて盲目になってしまう。さらに言うと、ホリスターと食事をして帰った時の会話で、コロンボに「目撃者の名前も住所も教えてないのにどうしてあなたのことがわかったのか」と疑問を投げかけられ、「告発人への興味よ」と返すと、コロンボが「それ以外にもありそうだ」と言ったので「あんまりだわ、私に魅力が無いと言いたいのね!」と怒りだしている。この思い込みの激しさ。ここでヘレンの気持ちが一気にホリスター側に傾いてしまった。
  • ここ吹替えだとヘレンは「敵情を探るのは慣れてるんでしょ?」コロンボ「でもそれだけじゃなさそうだ」ヘレン「あら、私のこと疑ってるの?こっちから『あなたを訴え出たのは私よ』なんて名乗り出たと思ってるんですか!」と怒っている。どちらもヘレンが早とちりして怒っているが和訳としては吹替えが正しい。

【真珠細工のコルト45口径】

逮捕の決め手になった愛用の銃。

寄贈品の箱に無かったので

コロンボがホリスターに質問すると

野戦病院にいたころ盗まれて

本物はもう無いが

「複製を作らせた」から

メモリアルホールに

複製が展示してあるらしい。

  • 最後の逮捕に繋がる重要な伏線。のわりにパッとしないのは、展示室も銃も最後しか出てこないから。序盤で1度でも展示室を出してほしかった。

 

●欠点や疑問など

  • 現場に殺人の痕跡を残さないのは無理。45口径の銃弾、血痕など。
  • ホリスターが訓練用の銃を握った時に手が震えていた。ブランクが長くてまともに狙いがつけれるのか?
  • ダットンの車の始末の仕方が雑。夜にダットンの車に乗って街に乗り捨てて祝賀会へ出席し、帰りは後輩の車で送ってもらっていた。実は殺人の夜まで家の前に車が停めてあったが、警察もコロンボも気にしていなかった。ナンバーもメモしていなかった。って、それは運まかせ。
  • 貸しボート屋のおっさん顧客情報漏らしすぎ。
  • 真珠細工のコルトの複製を作らせたと言うが、裏を取られたら嘘がバレそう。
  • 凶器の銃をいつどのタイミングで陳列室に飾ったのかはっきりしていない。寄贈品の箱には入れず、死体と一緒に隠しておき、死体を海に捨てた前後だろうとは思うが。
  • 発覚トリックの少なさをみてわかるように、コロンボの捜査にいつもの追い詰めていくキレがない。しかも終盤でヨットに乗ったときに1対1でホリスターと勝負するかと思いきや、「あなたを守りにきたんです」「あなたを早く逮捕しろと上司がわめくんです」と自分が疑っているのに上司のせいにして弱腰。これはかっこ悪い。
  • これ言っちゃあれだけど、ホリスターがひたすらキモい。口説き方、傲慢な態度、あのキスシーンは生理的に無理……。

 

 

●名台詞

 

ホリスターの家を捜索した後、

コロンボが去り際に

思い出したように言う。

コロンボ「あ、そうだ。もう1つ忘れてました」

ホリスター「なんだね?」

コロンボ「ヨットですが……」

ホリスター「どうかしたのか?」

コロンボ「お話伺ってる間に調べさせたんです。やましいところがない以上、閣下にはどうせお許しをいただけるもんと思って」

ホリスター「わしは常に先制攻撃を唱えてきた。君のやり方はそれに適ってるといえる。まあ済んだことだし、大目にみておこう」

 

目撃者のヘレンが

急に態度を変えたことに

コロンボが頭を悩ます。

コロンボ「女ってわからないなぁ。あんた確かに見たって言ってたでしょうが。ところが将軍にごちそうになった途端に今までと打って変わった態度だ……」

 

ホリスターの虜になったヘレンは

目撃証言は勘違いだと語る。

ヘレン「光のせいだったんですよ、あれは。つまり目の錯覚で」

コロンボ「最初の話と大違い……」

ヘレン「ですからあれは取り消します。勘違いは誰にでもあるでしょ?」

コロンボ「あの……どっかで2人だけで会ってもらえませんか?」

ヘレン「どこで会っても答えは同じだわ。あれは私の勘違いだったの。もうたくさん私に付きまとわないで」

ホリスター「忠告したろ。餌か釣り場を変えんかぎり何もかからんと」

 

ヘレンとホリスターを呼び出し

メモリアルホールの展示物の銃が

決定的な証拠だと説明するコロンボ。

ホリスター「警部、これはいったいどういう魂胆だね?」

コロンボ「そうくると思った。ズバリ申し上げましょう。問題はここにある複製の銃ですよ」

ホリスター「どういうことだ?」

コロンボ「一応この陳列物を見たからヘレンさんにもわかると思いますが、あんたはかつて身の回りにあった物はおろそかにしない人だった。戦利品はもちろん、軍服からライターまで異常と言えるほど大切にしてる。ところが真珠を散りばめた愛用の拳銃だけは病院で失くしたという。そんなことありうるだろうか?あれは名将ホリスターの伝説になくてはならんもんだ。そうでしょう将軍?」

ホリスター「……」

ヘレン「警部さん、どういうことなんですかそれ?」

コロンボ「あたしがもし将軍の立場だったら、命の次に大事にするでしょうね。失くしたりしないように目の届くところに置き、絶えず磨いたり、油を差したり、弾もこめておくでしょう。だからダットン大佐のような人間が来て秘密を漏らすと脅かされれば、当然その銃にものを言わせ……」

ヘレン「そんなのただの言いがかりとしか思えないわ。その拳銃は今どこにあるの?」

コロンボ「それが最後の疑問だった。絶好の隠し場所があった。誰の目にも容易に触れるところ。綺麗に飾ったケースの中だ。つまりはこの陳列室の中だ」

ホリスター「……」

コロンボ「普通の人間なら犯行後急いで凶器を隠す。あんた(ヘレン)でもあたしでも。誰でもそうするだろう。死体に弾が入ってる以上、弾道検査をされればすべての秘密が明るみに出てしまうからだ。しかしあの拳銃はあまりにも貴重だった。永久に処分するというようなことは思いもよらなかった。あなたにとっては名誉のシンボルであり、過ぎし日の栄光を最も雄弁に物語ってくれる物だからだ。それにあなたは自分の名声に酔っているから、あれは複製だと誰もが信じて疑わないと誤算した。複製なんか初めから無かったんだ。そうでしょう?」

 

信じていたホリスターに騙されて

ショックを受けるヘレンに、

コロンボは姪のマリリンが

離婚したけど立ち直って

今では子供が6人いると励ます。

ヘレン「警部さん、あなたにそんな大きい姪御さんがいるなんておかしいわ。嘘なんでしょ?」

コロンボ「あたしゃ嘘をつくのは大っ嫌いな男でねぇ」

ヘレン「じゃ本当?」

コロンボ「嘘を扱うのが刑事の商売でね……」

 

●好事家のためのトリックノート

 

4-A、凶器トリック

●凶器の隠し方・隠し場所

【展示品】

犯行に使用した銃を、自身の記念品を展示しているメモリアルホールのガラスケース内に複製と称して飾る。

 

8-B、発覚トリック

●心理的手掛かりの機智

【愛用品を大事にとっておく性格】

とっさに愛用の銃で射殺した犯人が、たとえ犯行の痕跡が残っていたとしても愛用の銃を捨てることができず、銃の在処をつきとめられて逮捕される。

 

 

『刑事コロンボ』各話レビューまとめ


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