刑事コロンボ
#7『もう一つの鍵』
[LADY IN WAITING]
(1971年12月15日放送)アメリカ
(1972年12月17日放送)日本
<あらすじ>
ベス・チャドウィック(スーザン・クラーク)は、恋人ピーター・ハミルトン(レスリー・ニールセン)との仲を裂こうとする兄ブライス・チャドウィック(リチャード・アンダーソン)の殺害を計画する。キーホルダーから家の鍵を抜き、深夜ブライスが帰宅してベスの寝室のガラス戸から入ってきたところを射殺、強盗と誤認しての事故と主張するベスの計画は、ブライスがスペアキーで玄関から入ったことで一度は崩れかけるが、彼女は必至で軌道修正し犯行を完了させた。しかし、そこにはもう1つの誤算があった――。
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<スタッフ>
監督 ノーマン・ロイド
脚本 スティーヴン・ボチコ
原案 バーニー・スレイター
制作 エヴァレット・チェンバース
制作総指揮 リチャード・レヴィンソン&ウィリアム・リンク
音楽 ビリー・ゴールデンバーグ
<キャスト>
ピーター・フォーク(コロンボ)ロサンゼルス市警警部
スーザン・クラーク(ベス・チャドウィック)ブライスの妹
リチャード・アンダーソン(ブライス・チャドウィック)宣伝広告社社長
レスリー・ニールセン(ピーター・ハミルトン)チャドウィック広告社法律顧問
ジェシー・ロイス・ランディス(チャドウィック夫人)ベスの母
ジョエル・フルエリン(チャールズ)執事
感想
久しぶりの女性犯人。
シリーズ化されてからは初になる。
なかなか肝が座っていて
ムカつかせてくれる犯人だ。
ベスは兄の会社の重役と付き合っていて
ある日、兄からあいつは野心家で
出世のためにお前を利用しているだけ、
お前は男を見る目がないから
奴に騙されてるんだと言われて喧嘩になり、
人生まで束縛されるのはもう我慢できず
ベスは兄を殺す計画を立てて
殺人をシミュレーションする。
窓から入って来た兄を撃って
鍵をキーホルダーに戻して
警察に強盗だと思って撃ったと話して――
でも実際には
兄はスペアキーを持っていたので
普通に玄関を開けて帰ってきてしまい
勢いで射殺した後に
無理やり計画通りにしようと取り繕うが
そこに恋人まで駆けつけて来て
どんどん計画が崩れていく。
この展開は面白かった。
そう計画通りにはいかないもんだよな。
兄の呪縛から逃れたベスが
自由と権力を手にやりたい放題して
次第に自分の嫌っていた兄そっくりに
恋人を束縛していくようになる……。
血は争えないものです。
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その結果、
恋人の反撃ともいえる新証言で
追いつめられることに……。
因果応報とはこのことか。
最後に下着姿でコロンボと
対峙するのはちょっとエロかった。
作品としては平均点だが
犯行計画が狂う面白さと
秀逸な伏線が3つもあったので
やや評価が上がった。
――気になることがあって
このコロンボシリーズずっとそうだけど
吹き替えと字幕で
ニュアンスを変えすぎていること。
俺は吹き替えの方が好きだけど
字幕の方が正しい内容のことが多い。
(簡潔すぎる欠点もある)
ミステリでは細かいことでも
表現を変えるとつっこみどころに
なったりするので
翻訳は内容を変えないでほしい。
☆☆☆☆☆ 犯人の意外性
★★★☆☆ 犯行トリック
★★★☆☆ 物語の面白さ
★★★★★ 伏線の巧妙さ
★☆☆☆☆ どんでん返し
笑える度 -
ホラー度 -
エッチ度 -
泣ける度 -
評価(10点満点)
8点
※ここからネタバレあります。
1分でわかるネタバレ
○被害者 ---●犯人 -----動機【凶器】
①ブライス・チャドウィック ---●ベス・チャドウィック ---障害の除去【射殺:銃38口径】
<結末>
兄を撃ったのは過失によるもので
無罪の判決を勝ち取ったベス。
束縛していた兄から解放されて
生まれ変わったベスは
洋服も新車も買って髪型も変え、
兄の会社を引き継いで
古いやり方を否定し
自分のやり方に変えてしまう。
ピーターとの婚約も発表するが
勝手に段取りを決めたベスに
ピーターは憤っていた。
ベスを犯人とにらむコロンボは
あの事件現場に犯行直後に駆け付けた
ピーターの記憶力に活路を見出す。
警報装置が鳴って強盗だと思い
銃を撃ったとベスは証言したが
記憶を思い出したピーターの証言で
警報より銃声が先だったことが発覚する。
つまり殺した後で
強盗に見せかけたことが確定した。
夜にベスの家を訪ねたコロンボが
あの夜の状況を再現して見せて
この事実をぶつけると
ベスに銃口を向けられるが、
警官が包囲している
罪を重ねるなと説得してベスは折れた。
窓際に近寄るコロンボ。
だが周りには誰もいない。
この家を警官が囲んでいるというのは
コロンボのハッタリだったのだ。
トリック解説
今回の犯人ベスの使った
「犯行トリック」ですが
なかなか考えられたものです。
まず殺害の前準備として
①執事の休暇の夜を狙う。
(または休暇を与える)
②被害者となる兄
ブライスのキーホルダーから
家の鍵を抜いておく。
③玄関前の電球を
切れた電球に付け替える。
そして夜に帰宅したブライスは
玄関前の電気がつかなくて
鍵も無いことに気づきチャイムを鳴らす。
ベスはそれに出ない。
ブライスは仕方なく中庭を通って
寝室のガラス戸をノックし
ベスに中に入れてくれと頼む。
ベスは彼を中に招き入れた後
射殺して警報装置を鳴らし
カバンでガラスを外から割ると、
強盗と間違ってブライスを撃ったと
警察に電話をかける。
――という計画だったのだが
ここに2つ誤算が重なる。
1つはブライスが
スペアキーを用意していて
玄関から中に入ってしまったこと。
もう1つは前日ブライスが
ベスの恋人ピーターに
妹と別れてくれという手紙を出していて
今すぐ話し合いたいピーターが
急に家に駆け付けて来たこと。
ベスはブライスを撃った後で
計画を修正する。
警報装置を鳴らして
鍵をキーホルダーに戻し
スペアキーを奪う。
ブライスのカバンを窓際に持ってきて
窓から入ったように偽装し
ガラスを外から割った。
そこにチャイムが鳴って驚くが
これがピーターだった。
ピーターに兄を撃ったと話し
寝室に行ったすきに
ブライスの鍵束を玄関の茂みに落とす。
これは鍵を落として
暗くて見つからなかったから
裏に回ったという偽装だ。
一応これで
不幸な事故だったと判断された。
これは「正当防衛トリック」と言って
古畑任三郎では『笑える死体』が
このトリックとほぼ同じ。
コロンボが犯人を
自白させるために仕掛けた
「逆トリック」だが
今回はラストで
ハッタリをかました行動が
それにあたるだろう。
夜にベスの家のガラス戸をノックする。
あの夜の出来事を再現して
ベスの反応を見る作戦だったが
ベスは落ち着いていて
「コロンボさんでしょ」と挑発してくる。
ブライスが玄関から入ったので
計画が狂ったことや
ピーターが警報が鳴る前に
銃声を聞いていたという証言で
ベスを追いつめると
彼女はコロンボに銃口を向けて来た。
この時点でコロンボの勝ち。
それは犯行を認めたことになる。
警察が家の周りを囲んでいるから
逃げられないぞと説得して
観念したベスは銃口を下げたが、
実際はコロンボ1人だった。
なんて無茶なことを……。
犯人がミスをしたり
偶然が重なって犯行が露見する
「発覚トリック」を分析。
①事件の日、
たまたま執事のチャールズが
休暇で家にいなかった。
よくあるパターンだが、犯人側に都合のいいことを利用すると計画的に見えて失敗する。
②夕刊の最終版が
玄関ロビーに置いてあったこと。
ベスはその日
外出はしていないと言った。
配達される夕刊は最終版ではない。しかしロビーにあった夕刊は午後の株式も載っていた最終版だった(字幕では「競馬の結果も載っていた」)。つまり誰かが買って持ちこんだわけだが、死んだ兄だとすると玄関から入ったことになる。それは窓から入ったと言うベスの証言と矛盾している。無意識のうちに新聞を玄関に持って行ったかも……と言い訳したが、カバンは窓のそばにあって(ベスが持ってきたから)、カバンか新聞なら普通なら大事なカバンの方を拾いませんかと追及される。(※伏線解説に追記あり)
③兄が死んでからのベスは
呪縛から解かれたように
急に生き生きとして
会社を変えようとしたり
新車も購入する。
コロンボは被害者が死んで1番得をしたのはベスだとにらむ。しかも新車を買ったタイミングも早いためあやしまれる。
④玄関からベスの部屋の
窓の外へ回るには
中庭を通らなければならず
毎週木曜日に芝の手入れをするので
被害者が中庭を歩いたら
必ず靴の裏に刈ったばかりの芝がつく。
ところが死体の靴には
芝は全然ついていなかった。
窓から入った時にカーペットで落ちたのでは?とベス。だんだん苦しくなってきたぞ。
⑤玄関の高い場所にある植木鉢に
スペアキーを長い間
隠していた痕が残っている。
しかし今スペアキーは無い。
兄はスペアキーを使って
玄関から入ったのでは?
そのスペアキーはベスが隠していたもので、最近別のところに移したと語る。女性が持つには重そうな植木鉢なのに?見えなくても指を入れて差し込むことくらいはできるかも。ベスは背は高いので一応可能。
⑥玄関前の電球が切れていたにしては
ほこりも虫もついていなかった。
2か月も使って
誰も触っていないはずなのに。
ベスは使用人が掃除したんじゃないかというが、切れた電球を切れたと知らずに掃除する可能性よりも、意図的に切れた電球につけかえた可能性が高い。つまり計画的――。
⑦決定的な証言。
現場に駆け付けたピーターは
銃声を聞いた後で
警報が鳴るのを聞いた。
警報が鳴って銃を撃ったなら強盗と間違えたで通じるが、撃った後で警報を鳴らしたのは故意に殺した証拠で、もはや言い逃れできない。
伏線解説(★は巧妙なもの)
★①【急に電話してくるピーター】
「急に君の声が聞きたくなって」
と恋人のピーターが
電話をかけてくる。
「驚かすのね」と
嬉しそうに返すベス。
- これはピーターが急に行動を起こすという伏線であり、人を驚かせるのが好きという示唆もある。今夜は会えないから明日にしてほしいとベスが釘をさしたのに、手紙を読んでいてもたってもいられなくなって、犯行直後に家に駆け付けて来る行動力に繋がっている。しかも肝心な時にベスにとっては嬉しくないものとして回収されるのも上手い。
★②【「mistake」繰り返し】
ベスのシミュレーションにおける
殺人計画の終わりに刑事が
「mistake」を繰り返す演出が入る。
- 吹き替えだと「あなたに罪はありませんよ。少しも、少しも、少しも……」と繰り返されているが、英語だと「それが間違いでした。間違い(mistake)、間違い、間違い……」と聞こえ、「mistake」を連呼している。非常に暗示的で、兄を殺すのが間違いだと言われているかのようだ。その声が俺にはピーター・フォーク(つまりコロンボ)っぽく聞こえたんだけど、吹き替えは別人が当てていた……。
↓
この「mistake」が
綺麗にラストで回収される。
ピーターの新証言で
警報が鳴るよりも先に
銃声を聞いたことが発覚。
あれは計画的だったと
コロンボに追いつめられたベスが
「彼の思い違いよ……」
(「he is mistake」と返した。
- まさかその「mistake」を自分で言うことになるとはね……。本当にこの回は伏線回収が上手いので、吹き替えよりも英語の音声で見直してほしい。
★③【玄関ロビーの夕刊】
帰宅したブライスが
玄関前の電気が点かず
暗い中で鍵を探している場面で
しっかり新聞が映っている。
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- 視聴者はベスの計画を知っているので、自然と鍵の方に注目する。しかし、わざわざ手元をアップにしてまで見せたい物は「新聞(夕刊)」の方だ。おそらくほとんどの人はコロンボが指摘するまで、ブライスが新聞を持っていたことすら気づかなかったはず。秀逸なミスディレクションです。
↓
殺人が起きて
現場に登場したコロンボが
いきなり新聞に興味を示しているのが
またすごい嗅覚。
そしてベスにこう質問する。
「今日は外出されましたか?」
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- 新聞が夕刊の最終版だったことで、ピーターでもベスでもないなら、執事のいない今夜はブライスしかこの夕刊を買うことができない。夕刊が玄関ロビーにあったということは、ブライスが玄関から入ったことを意味する。
- コロンボに、カバンと新聞なら普通なら大事なカバンの方を拾いませんかと追及されたが、なぜ“カバンだけ”動かしたのかというと、カバンで窓を割ることが最初から計画の中にあったからです。だからカバンを拾うことには意識が集中していた。しかし一緒にあった夕刊は最初の計画の中に無かったものなので、意識することができなかった。ここの心理的な手掛かりの出し方も上手いと思う。
④【ベスの乱暴な性格】
家に帰って来た母親に
平手打ちされて、
口答えするベスに母が言う。
「あなた兄さんを殺したのよ?いつか間違いを起こすんじゃないかと心配していたわ。あなたときたら女のくせにやることが乱暴だし、考えが足りないんだから」
「信じてママ、あたしの責任じゃないのよ」
- 事件直後は動揺していた(芝居をしていた)ベスだが、寝て起きたら「あれは事故」と割り切って平然としている。的確に分析している母親は昔から娘をよく見ている。このベスの性格が原因で、愛想を尽かした恋人の口から決定的な証言を引き出させることに成功し、追いつめられて乱暴に銃口をコロンボに向けて伏線が回収された。
⑤【ピーターの記憶力】
法廷で再開したコロンボを
ピーターは相手が刑事だと覚えていた。
「ああ刑事さんか」
「覚えておいでで」
「記憶はいいほうでね」
- 事件現場に最速で駆け付けたピーターの記憶が役に立つという示唆。コロンボはベスを逮捕するために証拠が必要だが、ピーターにとっては愛する人を追いつめてしまう記憶でもある。彼の気持ちを動かすことが後々重要になってくる。
- ちなみにコロンボは「あたしなんか今聞いたことも覚えてなくて」とおどけてみせるが、その後のドライブスルーで「トレーは持っていかないでくださいね」と言われたにも関わらず、そのまま忘れて持っていこうとしてしまった。こっちは最速で面白く伏線を回収している。
欠点や疑問など
- キーホルダーから家の鍵を抜いたら、普通に気づくと思うし、家を出る時に鍵をかけるからその時にも気づく。ベスが家にいる時は鍵をかけない習慣があったのかも。
- 警報装置が鳴りだして近所の住人が起きだしてすぐ来ないような環境(金持ちだから敷地が広く近隣住民から離れている)なら、警報鳴らす必要なくない?銃声が警報の前か後かの矛盾をやりたいのはわかるけど。
- 16分頃のBGMが怪獣が鳴くような音でビビる。
- 死体を寝室の入り口から窓際に引きずった痕を警察が見落とすとは思えない。カーペットを調べたらわかる。
- 「刑事コロンボ 完全捜査ブック」では、「よく考えればピーターが来ることを知らない彼女にはあそこまで急ぐ必要はない」とあるが、警報が気持ちを焦らせるし万が一でも誰か来た場合を考えたら急ぎたくなる犯罪心理があると思う。
- 最後あっさり自白した印象。
- 銃で兄を殺した犯人を1対1で追い込むのはいいが、最後コロンボ1人だったのは危険。銃口を向けられることを予想していたなら目撃者が必要。最悪撃たれる可能性もある。ところで母親はあの夜は家にいなかったのだろうか?母と話がしたいと言っていたから、そこで決裂して母は家を出てしまったとかそういうことか?
- ネットでも議論されている一事不再理の問題。同じ犯罪で1度無罪判決を受けたものは新しく証拠が出ても罪に問われなくなるというもの。俺も最初は変だと思ったが、裁判が1週間以内で行われるわけないし、1度で判決が出ているので簡易的なものだったということ?かな。前述の「完全捜査ブック」では「査問会」と書いてあるし。
名場面・名台詞
事件の翌日、
ベスの家を訪ねたコロンボが
今日はどのような要件か聞かれて答える。
コロンボ「刑事なんてのは因果な商売でしてねぇ、つまらないことが頭にこびりついて離れないんですなぁ」
ベス「何でもお聞きになって」
コロンボ「実は、新聞のことなんです」
ベス「新聞?」
コロンボ「いや、えー、ほら、ゆうべあたしがロビーで見つけた夕刊のことなんですがね。あなた昨日1日外出しなかったっておっしゃいましたなぁ」
ベス「その通りですわ」
コロンボ「そこがわかんないんだなぁ。するとあの夕刊はどっから来たんでしょう?」
ベス「お宅じゃ新聞取ってらっしゃらないの?」
コロンボ「取ってます。毎日届けてくれるし便利ですからね」
ベス「ならおわかりでしょ?」
コロンボ「とんでもない、それじゃ説明がつかんのですよ。いいですか?夕刊にもいくつか版があるんですけどあれは最終版なんです。午後の株式までちゃんと載ってましたからね」
ベス「どうかしたんですか、それが」
コロンボ「配達するのは最終版じゃない。誰が買って来たんでしょう?」
ベス「……そうね。兄じゃないのかしら?」
コロンボ「兄さんはあなたの寝室から入った。玄関からじゃないでしょう。そして、撃たれてガラス窓のそばに倒れた。新聞紙に足が生えてロビーまで歩いて行ったんですかね?」
チャドウィック夫人「刑事さん。あなたこの子を疑ってらっしゃるの?」
ベス「いいのよ、ママ。夢中だったから覚えがないけど、落ちてた新聞をあたしが拾ってロビーまで持って出たのかもしれませんわ」
コロンボ「そうも考えてみたんだけど、1つ疑問が残るんですよ。カバンはそのまま戸のそばにありましたね?どうして新聞だけこっち持って来たのかなぁ?」
ベス「見えなかったからよ」
コロンボ「見えなかった?近くにあったのに?」
コロンボがピーターを昼食に誘い
ハンバーガーを食べながら
ピーターに質問する。
ピーターにどうしてそんなに
人を疑うのか聞かれると……。
コロンボ「これはその、一種の病気でね。つまり個人的な趣味っていうか、ほつれた糸をすっきりさせないとどうも寝覚めが悪いもんで」
玄関の植木鉢に
スペアキーの痕が残っている。
そのスペアキーは私が移動させたと
言い張るベスに食い下がるコロンボ。
ベス「わからない人ね。私が(スペアキーを)しまったって言ったでしょ?私は1つも嘘なんかついてないわ。あなたの奥様がどんな名探偵か知らないけど、これ以上つきまとわないでいただきたいわ!」
コロンボ「……」
バーで飲んでいるコロンボに
今度はピーターが声をかける。
どうしてまだベスを疑って
つけ狙うのか質問した。
コロンボ「つけ狙う?あたしが?つけ狙ってなんかいませんよ。誤解です。あたしはなぞ解きを楽しんでるだけでね」
ピーター「ハハッ。警部、気に入ったよ。あんた面白い人だ。少しへそ曲がりだが」
コロンボ「へそ曲がり?」
ピーター「法廷で無罪と裁定されたのに、あんたはまだ嗅ぎまわっている。いくらとぼけても駄目さ。ここへ来たのも私と会うためだろう?白状したまえ。あんたはベスが犯人で邪魔な兄貴を計画的に消したと疑っているんだろう?」
コロンボ「いやぁ、疑ってるどころか……信じてます」
好事家のためのトリックノート
8-A、物理的手掛かりの機智
●偶然・超自然的なものによる発覚
【現場にやって来た第三者の記憶】
犯行直後にやって来た第三者が、銃声の後に警報が鳴ったことを覚えていて、警報が鳴って撃ったと言う犯人の主張が崩れる。
8-B、心理的手掛かりの機智
●――
【玄関ロビーの夕刊】
被害者は寝室のガラス戸から入って死亡した。カバンが寝室にあったが、被害者が買って帰った夕刊の最終版が玄関ロビーにあった。どちらか動かすなら普通はカバンの方で新聞は気にも留めない。ということは被害者は玄関から入っていたことになる。
9-A、その他、
●正当防衛トリック
【強盗に偽装】
被害者のキーホルダーから玄関のカギを抜き取り、被害者が寝室のガラス戸から入ったところを待ち構えて撃ち殺し、警報装置が鳴ったから強盗だと思ったと主張する。