全米が封印した2020年最大の問題作
『ザ・ハント』
[The Hunt]
(2020年)
アメリカ映画
<あらすじ>
広大な森の中で目覚めたクリスタル・クリーシー(ベティ・ギルピン)ら12人の男女。ここがどこなのか、どうやって来たのかも分からない。あるのは巨大な木箱に納められた一匹の豚と武器の数々。
すると突然銃声が鳴り響き、何者かに狙われる。武器を取り、逃げまどいながら、やがて彼らは気がつく。ネット上にはびこる噂、「人間狩り計画」―セレブが娯楽目的で一般市民を狩る“マナーゲート"が実在することを。
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<スタッフ>
監督 クレイグ・ゾベル
脚本 ニック・キューズ
デイモン・リンデロフ
制作 ジェイソン・ブラム
デイモン・リンデロフ
制作総指揮 クレイグ・ゾベル
ニック・キューズ
スティーヴン・R・モレン
音楽 ネイサン・バー
撮影 ダーレン・ティアナン
編集 ジェーン・リッツォ
<キャスト>
ベティ・ギルピン(クリスタル・メイ・クリーシー)狩りの標的
ヒラリー・スワンク(アシーナ・ストーン)大富豪
アイク・バリンホルツ(スタテン・アイランド)
ウェイン・デュバル(ドン)
イーサン・サプリー(ゲイリー)
エマ・ロバーツ(ヨガ・パンツ)
クリス・ベリー(ターゲット)
スタージル・シンプソン(ヴァニラ・ナイス)
ケイト・ノウリン(ビッグ・レッド)
エイミー・マディガン(ミランダ/マー)
リード・バーニー(ジュリアス/ポップ)
グレン・ハワートン(リチャード)
ジャスティン・ハートリー(トラッカー)
シルヴィア・グレース・クリム(デッド・セクシー)
ウォーカー・バビントン(バンダナ・マン)
ジェイソン・カークパトリック(ランディ)
テリー・ワイブル(リバティ)
メイコン・ブレア(フォークソンヴォイ)
ウスマン・アリー(クライシス・マイク)
J・C・マッケンジー(ポール)
スティーヴ・コールター(ドクター)
感想
キャッチコピーの
「全米が封印した2020年最大の問題作」
これは残酷な描写やその内容から
当時の全米の銃乱射事件もきっかけとなり、
トランプ大統領が
作品名こそ挙げなかったものの
ツイッターで批判するなど物議を醸して
アメリカでは公開が一旦白紙になったことに由来。
日本でも2020年2月から
10月に公開が延期されている。
たまたまCSで放送されていたので
期待しないで見たけど、
冒頭から『GANTZ』と『ハンガーゲーム』
『ホステル』や『プレデターズ』を
混ぜたような印象。
何も知らずに集められた者たちが
何者かに狩られる設定はやっぱり面白い。
グロ好きなのでテンション上がった。
後半は中だるみした感じはあるが
難しいこと考えず
パニックホラー映画と思えば意外に面白い。
主人公かと思っていた女性が
いきなり頭をぶち抜かれて死亡。
こっちが主人公かと思った男性も
地雷で吹っ飛びあっけなく死亡。
あまり主人公っぽくない3人組が残り
やっぱりこいつらも全員死亡。
じゃあ誰が主人公なんだと
思っていたところに1人の女性が現れる。
このベティ・ギルピン演じる
クリスタルがめちゃくちゃ強い!
実は戦争に行った軍隊経験があって
あっさりハンターを返り討ちにすると
その後も容赦なく仕留めていって
敵の罠を見破って無双するのがかっこよい。
しかもおっぱいでかいので
ついつい目がそっちにいってしまった。
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この映画は
近年SNSで問題になっている
ヘイトスピーチが元ネタになっている。
例えばX(Twitter)には
匿名で人を攻撃する奴(アンチ)がいる。
見ず知らずの人でも
他人のミスにつけこんで攻撃したり
粗探しをして言葉の揚げ足を取って
「じゃあ〇〇はどうでもいいんですか」
「〇〇が可哀想。軽蔑しました」など
ストレス発散なのか知らないが
正義感振りかざして叩きまくる行為が見られる。
そういう奴らをまとめて
始末してやりたいと思いませんか?
匿名で好き勝手言ってる奴を集めて
ハントゲームの獲物にするというのが
この映画のポイントでしょう。
とくにアメリカには人種差別や
宗教・性別差別などが多いため
SNSに憎悪が溢れているのだろう。
ゲームの主催者であるアシーナは
仲間内のチャットで不満をぶちまけて
自分の持つ領地で
人間狩りをするという冗談を言っていたら
それが漏洩して
本気にする奴らがネットで叩いてきた。
チャットに参加した者は失業し
怒りの収まらない彼女たちが
じゃあ嘘を本当にしてやろうかと
思いついたのがきっかけらしい。
自分を中傷されて
怒りで報復を決意して
大金と人を使って住所を特定し
理不尽なゲームに強制的に参加させる。
ネットでクソコメしてる皆さん、
自分の痕跡を消すことはできませんから
明日は我が身かもしれませんよ――。
★☆☆☆☆ 犯人の意外性
★☆☆☆☆ 犯行トリック
★★★★☆ 物語の面白さ
★★☆☆☆ 伏線の巧妙さ
★★☆☆☆ どんでん返し
笑える度 -
ホラー度 ◎
エッチ度 -
泣ける度 -
評価(10点満点)
7点
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※ここからネタバレあります。
1分でわかるネタバレ
○被害者 ---●犯人 -----動機【凶器】
①ランディ ---●テッドとアシーナ・ストーン ---娯楽【失血死:ペンとピンヒール】
②ヨガ・パンツ ---●不明 ---娯楽【射殺:ライフル】
③不明(二丁マシンガン) ---●不明 ---娯楽【射殺:ライフル】
④トラッカー ---●不明 ---娯楽【爆殺:地雷】
⑤デッド・セクシー ---●なし ---自殺【射殺:地雷で下半身損失→ピストル】
⑥ターゲット ---●リバティ ---娯楽【爆殺:矢→手榴弾】
⑦ビッグ・レッド ---●ジュリアスとミランダ ---娯楽【毒殺:毒入り菓子】
⑧スタテン・アイランド ---●ジュリアス ---娯楽【射殺:ライフル】
⑨不明(刺青男) ---●ジュリアスとミランダ ---娯楽【毒殺:毒ガス】
⑩ジュリアス ---●クリスタル・クリーシー ---正当防衛【射殺:ライフル】
⑪ミランダ ---●クリスタル・クリーシー ---正当防衛【射殺:ライフル】
⑫不明(移民にまぎれた男) ---●ゲイリー ---障害の除去【爆死:手榴弾】
⑬オリバー ---●クリスタル・クリーシー ---障害の除去【轢殺:車】
⑭ゲイリー ---●オリバー ---娯楽【刺殺:ナイフ】
⑮リチャード ---●クリスタル・クリーシー ---障害の除去【斬殺:喉切開による失血死】
⑯オーウェル(豚) ---●不明(テッド、マーティン、ピーターの誰か) ---誤射【射殺:ピストル】
⑰ピーター ---●クリスタル・クリーシー ---障害の除去【射殺:ピストル】
⑱テッド ---●クリスタル・クリーシー ---障害の除去【射殺:ピストル】
⑲マーティン ---●クリスタル・クリーシー ---障害の除去【射殺:ピストル】
⑳リバティ ---●クリスタル・クリーシー ---障害の除去【射殺:ピストル】
㉑ドン ---●クリスタル・クリーシー ---障害の除去【射殺:ピストル】
㉒デール軍曹 ---●クリスタル・クリーシー ---障害の除去【射殺・ピストル】
㉓アシーナ・ストーン ---●クリスタル・クリーシー ---障害の除去【失血死:ミキサーのカッター】
<結末>
人狩りゲームのアジトに乗り込んだ
クリスタルとドンは
そこで主催者アシーナの情報を聞き、
クリスタルはハンターたちを全滅させ
裏切りそうになったドンも撃ち殺した。
アシーナの屋敷に単身乗り込んだ
クリスタルはそこでアシーナから
ネットで誹謗中傷をした奴らを集めて
皆殺しにするゲームだったと聞くが
クリスタルはその書き込みをしたのは
自分ではなく同姓同名の別人だと答える。
間違えて最強の女兵士を選択してしまったのだ。
死闘の末にアシーナを倒したクリスタル。
そこに1匹の兎を見つけ
自分が勝者側(兎)だと確信する。
アシーナの用意した食事を平らげ
アシーナのドレスに着替えて
外のプライベートジェットに乗り
満足そうに勝利の美酒に酔いしれた。
どんでん返し
狩る側が勝つか
狩られる側が勝つか
結果――狩られる側が勝つのだが、
どんでん返しとしては
とくに意外性はない。
クリスタルの正体が
ネットに書き込んだ人物ではなく
同姓同名のめっちゃ強い別人を
連れてきてしまったというのが
最大の誤算だった。
伏線解説(★は巧妙なもの)
本作の1番の伏線は
物語序盤から1人だけ
冷静沈着な女がいること。
ハンターたちを出し抜く強さを持った
クリスタル・クリーシーだ。
彼女は目覚めた後、
①池に浮かべた葉に
静電気付きピンを乗せて
方角を知ろうとしたり
②ガソリンスタンドに来た時も
異様に落ち着いていた。
- すぐ近くで人が狩りで殺されているのに、こんな場所で営業できていることが不自然。
アシーナを殺した後、
兎の姿を見たクリスタルは
そのままキッチンのホットサンドを食べ、
ドレスに着替えて
アシーナのプライベートジェットで
シャンパンを飲む。
これは中盤でドンに聞かせた
③「兎と亀の競争」の話のあとで
兎が亀の家族を皆殺しにして
亀たちの夕食を食べた後日談に伏線があった。
- この「兎と亀の競争」は、兎と亀が競争することになったが兎が余裕すぎて途中で居眠りをしたらその間に亀が先にゴールしてしまうという有名な話。のろくても地道に努力すれば勝てるという教訓になっている。が、この映画のクリスタルが母から聞いた後日談では、笑いものにされた兎が怒って亀の家族を皆殺しにしたという作り話が加えてある。強い者が最後は勝つという教訓。
貨物列車の中で移民役をした男に
④ゲイリーが銃を向けて
「白状しないとチ〇コ吹っ飛ばすぞ」
と脅したがその時は撃てず、
あとで男の持っていた手榴弾を
男のズボンに入れて爆死させたのも
そのまんまだけど一応伏線回収。
作中にJ・オーウェルの『動物農場』や
スノーボールの見立てが出てくるが
内容を知らないため
どういう意味だったのかわからず……。
欠点や疑問など
- 主人公がなぜこんなに冷静で強いのか、もっと深掘りしてほしかった。
- 髪の毛で擦って磁気を帯びた針は針先が北を向くためコンパスの代わりになる。とはいえ、それで正確に方角がわかるかどうかは眉唾物。
- 唐突なコメディ要素が微妙。「当たるところだった」と言って喜んだ直後に当たって死んだり、心臓を貫かれたり下半身が切れた女性が普通に話をしていたり、急にガスマスク付けていたり、男の目の前で堂々と女主人公が小便をしたり、年代物のワインを投げたらそれは駄目とナイスキャッチしたり、ガラスはもう嫌と言ってドアを開けるのを待ったり……。
- アメリカ大使館の役員を演じるために車を借りたりできるのだろうか?
- ゲイリーの死体がその大使館員の車のトランクに入っていたが、タイミング的にいつ殺したのか不明。車から降りてクリスタルたちに挨拶したシーン以前に殺していないとゲイリーを入れる時間は無いはずだ。そもそも用心深いゲイリーを外に連れ出してどうやって殺したのか?無理があるように思う。
- アシーナのプライベートジェットの人たちが主人が殺されても冷静すぎる。警察に言えないことをやっていた事情があるにしても雇い主を殺されてるのに何とも思わないのだろうか。
名場面・名台詞
狩猟場に向かう
プライベートジェットの中で
目を覚ましてしまったランディ。
アシーナはピンヒールで
ランディの左目を突き刺して引き抜き
みんなに忠告して去って行く。
アシーナ「情けは必要無いわ。戦争は戦争よ」
ガソリンスタンドで煙草を買って
「ここは何州?」と聞くクリスタル。
ミランダは
「壮大なアーカンソー州よ」と答えたが
お釣りの金額が少なすぎることに気づく……
クリスタル「アーカンソーの煙草は6ドルなんだよ。しくじったなこのクソババア!」
アメリカ大使館員だと思っていた男も
ハンター側の手先だとわかって
ドンが見破ったクリスタルに質問する。
ドン「なんで嘘だとわかった?」
クリスタル「みんな嘘つきでしょ」
アシーナが冗談で言った
人狩りの噂を広めたことに
怒って声を荒げる。
アシーナ「どんな人たちなの……どんな……人たちが……私が人間狩りをしているなんて信じるの?私の荘園で……どんな人たちなのよぉ!!」
ついにゲームの主催者アシーナの元に
辿り着いたクリスタル。
なにか聞きたそうなクリスタルに
アシーナが逆に質問する。
アシーナ「私は誰?」
クリスタル「は?」
アシーナ「私は、誰だか、言って」
クリスタル「あなたが、誰かなんて知らない。でもイカれてるのはわかる」
アシーナ「イカれてると自分でも思ってる。でも自覚してたら、イカれてない。私はただ、すごく怒ってるだけ」
クリスタルに敗れたアシーナ。
死の間際に質問。
アシーナ「私も1つ質問していい?……あなたは『JUSTICE FOR ALL』?ねえ、答えて。2人とも死ぬのよ。だから教えて。人違いしてないわよね?」
クリスタル「いいえ。人違いよ」
アシーナ「――なあんだ……」
ドンは味方か?クリスタルは別人か?
この物語のよくわからない部分が2つ。
①ドンは味方だったのか?敵だったのか?
②クリスタルは人違いだったのか?本人なのか?
まず①から言うと
ドンは「味方だった」で確定。
ゲームの狩られる側の人数を数えたらわかる。
主催者側の会議で
コンサルタント(デール軍曹)から
初回は人数を12人にしろと言われているため
この12人を当てはめていく。
①クリスタル(女主人公、1人だけ生き残る)
②ランディ(ジェットの中で失血死)
③ヨガ・パンツ(金髪の可愛い子、エマ・ロバーツはジュリア・ロバーツの姪っ子)
④不明(二丁マシンガンで勇ましく突っ込んで無駄死に)
⑤トラッカー(地雷で吹っ飛んだ)
⑥デッド・セクシー(上半身だけになって銃で自殺)
⑦ターゲット(箱を開けた男、矢で倒れて手榴弾で爆死)
⑧ビッグ・レッド(毒入り菓子を食べて死亡)
⑨スタテン・アイランド(ガソリンスタンドで射殺)
⑩不明(刺青男、毒ガスで死亡)
⑪ゲイリー(ドローンを撃った男、頭にナイフ刺された)
移民に紛れた男は
主催者側の会議に出ているからハンター。
そうなると狩られる側が1人足りない。
そもそもドンが敵なら
自分のアジトに案内して
次々と味方が殺されているのに
クリスタルを背後から撃たないのはおかしい。
アシーナの無線は撹乱するためだったことが
後に判明するし
ドンは味方で確定。
クリスタルが容赦ないから
恐怖で銃を構えてしまい
あのようなことになってしまった。
次の疑問②
クリスタルは人違いか?
これは「どちらともとれる」
本人は「人違い」だと主張する。
同じ地区に同姓同名の別人がいて
よく間違って手紙が届くそうだ。
自分とその人はミドルネームの
メイのスペルが違うんだという。
アシーナが最期に質問した際も
「人違い」だと答えているし
素直に考えたら「人違い」でよさそう。
ただし物語の中に気になる台詞がある。
アメリカ大使館員の嘘を見破った時に
どうしてわかったか聞かれたクリスタルは
「みんな嘘つきでしょ」と答えた。
これは自分も嘘つきの1人だと
言いたいのかもしれない。
普段大人しそうな人でも
ネットではやたら攻撃的になる。
エマ・ロバーツのような可愛いお嬢さんも
汚い書き込みをしているわけで、
クリスタルも
『JUSTICE FOR ALL』として
正義を盾にして
言いたい放題書き込んでいる可能性は高い。
容赦なく撃ち殺す姿からしても
正当だと何でも許されると思っていそう。
だから素直に受け取れば「人違い」
深読みすれば「本人」
俺は……
嘘つきの伏線を回収してほしいので
「本人」派に1票としておきます。
好事家のためのトリックノート(トリック分類表)
準備中です